帰り道、一人寂しく歩くのに慣れてしまったのは何時からだったけ。
そんなふうな日々を私は過ごしていた。
そんなある日、私達の住む国、ドイツ第三帝国が敗戦した。
「兄さん、大丈夫なの?」
石畳の冷え切った部屋に、五月にしては冷たく寂しい風が入って行った。そんな部屋を覗いて、兄さんとナチスが居るのを確認して兄さんに問い掛ける。
「独か?」
「俺達は多分、いや、絶対と言っても良いレベルで、ソビエトの所で捕虜になるのだろう」
兄さんは落ち着いた声で、私の方も見ずに藁の布団に寝転びながらただ天井を見つめながらそう言った。
「そんな!」
兄さんの落ち着きようにも、話の内容にもあまりにも驚いて、大きな声がでた。
「独、落ち着いて聞け」
私が驚いてるのを優しく沈めた。
「ついさっき、俺の能力で万能薬を十個作った。何かあったら必ず使え」
「しんどいのに、ありがとう」
鉄格子の所に置いてあった瓶を受け取って感謝の言葉をなんとか紡いだ。
「独、 お前はこれから一人で自分の主を育てるんだ。大変だろうが、頑張ってくれ」
「そこにクソビエト(ソビエト)とクソリカ(アメリカ)が入って来るだろう。自分の主を守れ。どうしたら良いか独だけで分からなくなったら、日本国に居る初めのドールの愛華を探すんだ。大阪か、東京の方に居るはずだ」
「リーダーだからな。信頼できる。頼って頼りまくってしまえ」
フニャと笑って兄さんはそう言う。
「わかったよ」
「それと、これからは、女ではなく、男として生きろ。名前は、津逸とでも名乗ったら良い。これは、一人の兄としてのお願いだ。この御時世、女と言うだけで苦労することが多いだろう。独には何時も笑っていて欲しいからな」
その時の兄さん、改めて、兄貴の声は、これまでの威厳に満ち溢れた声ではなく、昔、二人で見に行った空を埋め尽くすほどの大きな満月と星々を前にした時の優しい声色だった。
私は、ううん、俺は、嬉しさと、悲しさと、寂しさと、とまぁたくさんの感情が込み上げてきて泣きそうになったけど、涙をグッと堪え、兄貴とお揃いのギザ歯を見せ付けるようにしてニッと笑て見せる。
「わた、、、俺は笑って生きるよ。だから、兄貴、安心してくれよな」
「あぁ。さあ、津逸。行け、此処は、もう駄目 になる。早く、行け!」
「又な!」
兄貴の力強い声に背中を押されるようにして俺は走り出した。頬を伝う生温い目から出る水を服の裾で拭って走りって住処に帰った。
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