ホテルの一室。
VUITTONのジャケットもシャツも脱ぎ捨てられ、はだけたバスローブに身を包んだ 深澤辰哉は、大きなベッドに腰を下ろしていた。
パパの肩にもたれ、片手でワイングラスをくるくる回しながら、もう片方の手でラブブのマスコットをいじっていた。
「ねぇ、この子超かわいい!嬉しい!俺のバッグにも似合ってるでしょ?」
甘えるように首を傾げて笑う。
パパは「辰哉が喜ぶなら何だって買ってやる」と機嫌よく応じる。
ふっかはその言葉に満足げに目を細め、唇を尖らせてさらに寄りかかる。
「ふふ、わかってるじゃん。…ねぇ、次はさ、時計欲しいなぁ。シンプルだけどキラキラなやつ。俺の白い手首に絶対似合うから」
半分冗談、半分本気。
彼の声色は甘え混じりで、言葉の後には小さな笑いをつけ足す。
パパが優しく頭を撫でてくると、ふっかは子どもみたいに目を細めて、その手に頭を預ける。
大人の遊びを覚えて、ブランド物に包まれた姿のまま、 素直で可愛い“男の子”を演じて――いや、自然に見せて。
深澤辰哉はその瞬間、
パパにとって最高の「ご褒美」になっていた。
翌朝カーテンの隙間から差し込む光は、妙に白々しかった。深澤はベッドの端で、まだ体に残るアルコールの熱をぼんやりと感じていた。
サイドテーブルにはメモと現金。
シャワールームを開けた瞬間、加齢臭がほんのりと漂った気がする。
鏡を覗くと、むくんだ目元にうっすら生え始めた髭。
昨日の夜ショーウィンドウに映していた“キラキラ”した自分、パパの前での“可愛い辰哉”とは、まるで別人が映っていた。
高級な服と美味しい食事に美味しいお酒。夜の始まりはキラキラして満たされる。
でも朝はいつも、冷静になる。
さらに今朝はおしりも腰も痛くて余計に虚しさが増す。
「あーあ。 おねだりしてこーなるなら、そろそろ潮時かなー。時計貰ったらフェイドアウトしようかなー、、だる。」
誰とも無しにつぶやいて、再度ベッドにダイブすると乾いた笑いがこぼれる。
スマホの通知を開けば、何人かのパパからのお誘いと、事務所からの事務連絡、その中には友人からの久しぶりの連絡もあったが、そこに返事を打つ気力はなく、ただ画面を伏せて立ち上がる。
――キラキラしていたのは夜だけ。
深澤辰哉は、そんな朝をもう何度繰り返したんだろう 。
コメント
4件
最後どこに行き着くのか楽しみで仕方ない!!めちゃめちゃ面白いです!!
おもしろーい!楽しみに読んでます😊