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篠原愛紀
#独占欲
振り返る間もなく、背中から抱きしめられる。モコモコウェアの柔らかな感触。けれど、その奥にある彼女の体温は熱く、耳元に吹きかかる吐息が、僕の思考をチリチリと焼き焦がしていく。
「独身最後の夜に、私とのイチャイチャタイムを削って、男同士の焼肉を優先した反省、ちゃんとしてもらわないと♡」
彼女は潤んだ瞳で僕を射抜くように見つめた。
「陽一さん。……これ、覚えてます? 私の誕生日にくれた、お気に入り」
白石さんは、小さく息を吐くと、鎖骨あたりまで閉じていたルームウェアのジッパーの金具に指をかけた。
金属が擦れる微かな音が静寂な部屋に響き、ファスナーが胸元へと滑り降りる。
それと同時に、左右の生地がゆっくりとはだけ、内側の肌と、深い谷間が惜しげもな晒された。
「っ……!?」
視界に飛び込んできたのは、眩しいほどに白い素肌。 ルームウェアの下に何も纏っていない。
(……え? うそだろ? 下着、着てな……っ!?)
「……待ちくたびれて、先に脱いじゃいました♡」
玄関の灯りに照らされた彼女の剥き出しの肌が、僕の脳内の安全装置をショートさせていく。
「おしおきです♡ ……今すぐここで、ぜんぶ脱いでください。5分遅刻だから『5回』で許してあげます♡」
(……ええー!! 5分を5回に変換するその計算式、どうなってるんだ!? 5分=300秒だから、300回って言われないだけマシなのか!? というか、明日結婚式だぞ! 僕のHPを全部持っていく気か!?)
理性が「明日のために寝ろ」と警報を鳴らすが、彼女の指先が僕のシャツの隙間に滑り込み、ボタンを一つ、また一つと外していく。
そして――彼女の柔らかな素肌が、僕の胸板に直接、押し当てられた。
逃げる隙すら与えず、彼女の唇が僕の理性の残骸を塞いだ。
焼肉の匂いも、独身最後の感傷も、すべてが彼女の色で上書きされていく。こうして深く、溺れるような、甘い処刑が始まったのだ。