そうだ。真衣香は自分が恥ずかしかった。
何もそれだけが全てではない。真衣香にもそれはわかっている。
けれど、いつまでも垢抜けない自分。
優里の隣に並んだら一目瞭然。
身長や、顔立ち服装の問題ではない。
纏う雰囲気が姉と妹なんだ。
年齢が、上がれば上がるほど経験がないことがマイナスになるし、言い出せない。
優里以外の友人たちだって、学生の頃にほとんどが経験をし例外なく色気を増し綺麗になっていった。
「立花?あんま焦らすなよ〜。俺も酒入ってるし結構余裕ないよ?」
「あ、あの」
(何か、何か、言い訳……)
「お前も誘ってきといて、タチ悪いね。嫌いじゃないけど」
「つ、坪井くん!」
「んー、なに?」
繋いでた手を離されて、両腕を首に絡められ鼻先をくっつけられた。
息がかかるほどの接近に冷めてきてたはずの顔が、また熱を持つ。
(言い訳、言い訳、どうしよう思いつかない)
繁華街から少し逸れたホテル前とはいえ、人は行き交う。
目の前の、当たり前のようにホテルに入ろうとする坪井。
本来当たり前のように対応できなきゃおかしいだろう、24歳女。
「ご、ごめん坪井くん」
「ん?」
「私、したことない……」
「んん?」
「え、えっちなことしたことない」
パニックになった真衣香は何も取り繕うことなく、つい、本当についポロっと。
心の声をそのまま、外の空気に漂わせてしまった。
ひと呼吸、いや、ふた呼吸?
間があいて、沈黙。
真衣香と坪井はラブホテルを前に無言で見つめ合った。
その沈黙を破ったのは坪井だった。
「…………へ、マジで?」