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【あらすじ】
俺がオーナーに『紫』の意味を尋ねたその瞬間、思いもよらず『第二面接』が始まってしまった。
ーー
オーナーが訊いた。
「『紫』の意味が知りたいかい?」
度肝を抜かれた。いや、驚いたのはその問いそのものではない。むしろ、訊かれるだろうと予想していたことが、まさにその通りに起こったからだ。
さて、どうする。答えは一つしかない。知りたいに決まっている。だからこそ、俺は今、この203号室にいるのだ。
オーナーの笑顔がこちらを待っている。温厚そうな表情のはずなのに、どこか不気味で、心をざわつかせるものに見えて仕方がなかった。
早くこの場を終わらせたい。『紫』の意味を知りたい。ならば、答えはひとつ。「はい」と言うしかないだろう。
俺は決心を固め、口を開きかけたその瞬間――
オーナーが淡々と言った。
「ああ、言い忘れていたけどね。もし君が『はい』と答えたなら──君はもう、平凡な日常を送れなくなる」
にこやかな顔のまま告げられたその言葉は、冗談なのか本気なのか、まったく読めなかった。
再び、突きつけられる二択。
胸がざわつき、呼吸が浅くなる。
それでも、俺の答えは変わらなかった。
この時の俺は狂気的な場の空気に飲まれていた所為か、 正常性バイアスがおかしくなっていたのかもしれない。
「……はい」
短く、一言。自分の声が震えているのを、はっきりと感じた。
続く