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彼のお兄さん達は、ここからは自分達にまかせてくれとの一点張りで、私を家に帰した
本当に彼らは私が愛した男性を見殺しにして、大人しく家でじっと待っている女に見えるのだろうか?
私は格闘家の柚彦君の婚約者、私に残された最後の切り札は私自身だ
俊哉の狙いはお金と、自分を惨めな思いにさせた私と柚彦君を痛めつけること・・・
パニックを起こしている暇はない
邪悪な人でなしが、私の柚彦君を苦しめている、なんとしてでも阻止してやる
そして償いをさせてやる
私は鋭く尖った調理用の果物ナイフの切れやすさを調べ、しっかり折りたたんだ
武器がこれしかないのが悔しかった、私に機関銃でもぶっ放せる力があればいいのに
今朝から何も手入れをしていない鳥の巣の様になっている髪を丁寧にとかし、ジェルをつけてまとめ上げ、ポニーテールにした
一本のおくれ毛も残さなかった
そして部屋に置いてあった柚彦君のウインドウブレーカーを羽織り、ナイフをポケットにしまった
かすかに残る彼の匂いに包まれると、途端に恋しさが募る
彼はお粗末な俊哉みたいな男とは全く違う
本当の力と見せかけの力の差、柚彦君は本物なのだ
勇敢で逞しいその彼が身動きが取れず、俊哉の捕らわれの身になっている、いったい今頃どんな目にあわされているのか・・・
ダメよ、手放しで泣いている場合じゃない、ポケットに入れたナイフをギュっと握りしめる、これでも足りなければ素手でぶちのめしてやる
最後にポポを抱きしめ、もしも自分が帰らなかった時のためのポポの世話の指示をメモに残す
きっと弘美さんが見つけれくれるだろう
鍵をかけて、車のイグニッションキーを回しかけた時に、車のヘッドライトに照らされ、私は目を細めた
目の前にトヨタのSUV車が止まっていた、運転席にはブラック、そして助手席には麗奈さんがいた
ブラックが言う
「おそいじゃない!待ってたのよ」
「ブラック・・・・ 」
驚いている私を見て彼はにやりと笑って言った
「ユズを助けに行くんでしょ!さぁ!乗って! 」