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莉音
18
✦ ─────── ✦
いるまくんに彼女ができてから。
少し経った。
最初は。
ただ驚いただけだった。
でも。
時間が経つほど実感する。
いるまくんには好きな人がいて。
大切な人がいて。
自分はそこにはいない。
当たり前のことなのに。
胸が痛かった。
◌ ───── ◌
昼休み。
講義が終わり。
いつものように五人で食堂へ向かおうとした時だった。
💗「いるまー!」
明るい声が響く。
振り返ると。
そこには彼女がいた。
長い髪。
可愛らしい笑顔。
誰が見ても目を引くような女の子。
💜「おう」
💗「会いに来ちゃった」
そう言って自然にいるまの腕へ抱きつく。
周囲から小さな歓声が上がった。
「仲良いなー」
「お似合いじゃん」
そんな声まで聞こえてくる。
🩵「……」
こさめは黙って見ていた。
💗「今日お昼一緒食べよ?」
💜「いいけど」
💗「やった!」
嬉しそうに笑う彼女。
それを見ているいるまも。
少し楽しそうだった。
胸が痛む。
でも。
痛いなんて顔はできない。
🩵「楽しんで〜」
にこっと笑う。
💗「ありがとう!」
💜「じゃあまた後でな」
🩵「うん」
二人は並んで歩いていく。
その後ろ姿を見送りながら。
こさめは小さく息を吐いた。
❤️「……こさ」
🩵「ん?」
❤️「飯行くぞ」
🩵「あ、うん」
何も聞かない。
奈津も。
蘭も。
聞かない。
聞かなくても分かるから。
◌
食堂。
🩷「今日はオムライスにしよ」
❤️「俺カツ丼」
🩵「じゃあこさもオムライス」
適当に会話する。
笑う。
返事もする。
だけど。
どこか上の空だった。
視線が勝手に探してしまう。
少し離れた席。
そこにいるまがいた。
彼女と向かい合って座っている。
💗「ねぇねぇ」
💜「ん?」
💗「今度ここ行きたい!」
スマホを見せる彼女。
💜「へぇ」
💗「一緒に行こ?」
💜「いいよ」
楽しそうだった。
本当に。
楽しそうだった。
🩵(よかったね)
そう思う。
彼女は可愛いし。
明るいし。
きっといい子だ。
いるまに似合う。
だから。
応援しなきゃいけない。
幼馴染なんだから。
友達なんだから。
🩵(そうだよね)
自分に言い聞かせる。
何度も。
何度も。
だけど。
胸の痛みだけは消えなかった。
◌
❤️「こさ」
🩵「ん?」
❤️「食え」
気付けば手が止まっていた。
❤️「冷めるぞ」
🩵「あはは」
🩵「ごめん」
🩷「無理しなくていいのに」
🩵「してないよ」
🩷「嘘」
即答だった。
思わず笑ってしまう。
🩵「そんな分かりやすい?」
❤️「分かる」
🩷「めちゃくちゃ」
🩵「うそだぁ」
笑う。
でも。
奈津も蘭も笑わなかった。
その視線が優しくて。
少しだけ泣きそうになる。
🩵「大丈夫だよ」
❤️「……」
🩷「……」
🩵「本当に」
言い聞かせるように。
そう呟いた。
◌ ───── ◌
放課後。
教室を出る。
💜「じゃあ俺今日先帰るわ」
❤️「彼女?」
💜「まぁ」
🩷「仲良しだねぇ」
💜「うるせぇ」
照れたように笑う。
そんな様子を見て。
こさめは胸が苦しくなった。
💗「いるまー!」
また彼女が来る。
💜「おう」
💗「帰ろ!」
自然に手を繋ぐ。
その光景に。
一瞬だけ視線を逸らした。
💜「じゃあな」
🩵「うん」
短いやり取り。
それだけ。
それだけなのに。
まるで置いていかれるような気がした。
◌
家の近くまで帰る道。
今日は一人だった。
小さい頃から何度も歩いた道。
いつも隣にはいるまがいた。
転んだ時も。
泣いた時も。
嬉しかった時も。
気付けば隣にいた。
だから。
これから先も。
ずっとそうだと思っていた。
🩵(馬鹿だなぁ)
恋人になれるなんて思っていない。
叶うとも思っていない。
それでも。
どこかで期待していたのかもしれない。
🩵(諦めなきゃ)
分かっている。
分かっているのに。
好きだった。
◌ ───── ◌
その夜。
💗『今日はありがとう!』
彼女からのメッセージが届く。
💜『こちらこそ』
短く返信する。
嫌いじゃない。
一緒にいて楽しい。
可愛いとも思う。
だけど。
💜(好きってなんだろ)
昔から分からなかった。
付き合っても。
別れても。
大きく何かが変わることはない。
💜(普通は違うのか?)
そんなことを考える。
そして。
不意に昼間を思い出した。
🩵「楽しんで〜」
笑っていた。
いつも通りに。
明るく。
優しく。
だけど。
なぜか。
少しだけ。
寂しそうに見えた。
💜(……気のせいか)
そう思った。
だけど。
その笑顔が妙に頭から離れなかった。
✦
まだ気付いていない。
その笑顔の意味も。
隠された想いも。
そして。
失った時に初めて知ることになる感情も。
✦
コメント
1件
第10話、読み終えました。 いるまくんに彼女ができてからのこさめちゃんの心情描写が、本当に丁寧で胸に迫るものがありました。食堂で「無理しなくていいのに」と言う蘭ちゃんに「してないよ」と笑い返す場面、あのやりとりの温度が切なくて。何も聞かずにそばにいてくれる奈津と蘭の優しさが、逆にこさめちゃんの寂しさを浮き彫りにしている気がしました。 最後のいるまくんの「気のせいか」という気付かなさも含めて、読後感がじんわりと余韻に残るお話でした。続きが気になります…!