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立秋 芽々(りしゅう めめ)
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『想いは言葉にしないと伝わらないのよ』
先日、彼氏と別れた私に、おばあちゃんはそう言った。
春の風が縁側を抜けていく。
沈んでいた胸の奥に、ひんやりとしたすきま風が入り込んだ。
おばあちゃんは、あられがたくさんついたおせんべいを丁寧に割り、
一欠けらをそっと私の手のひらに乗せた。
『強がったって、嘘をついたってね。
本当の気持ちは、相手には届かないものなのよ』
その声は、まるで昔の自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
おばあちゃんはゆっくりと立ち上がり、居間へ向かう。
その背中を追いかけるように、ふいに大きな声が響いた。
『こら!じいさん!そのアイスはあんたのじゃないよ!』
「やってもうた!みーちゃんのだったか!」
おじいちゃんの慌てた声に、思わず笑ってしまう。
二人のやり取りは、何十年経っても変わらないらしい。
その背中を見ていたら、胸の奥がじんわり熱くなった。
「……私も、おばあちゃんたちみたいに幸せになれる?」
ぽたり、と涙が落ちる。
大粒の宝石みたいなそれが、床の木目に静かに染み込んだ。
おばあちゃんは微笑みながら戻ってきて、しわの刻まれた温かい手で、そっと私の頬を包んだ。
『なれるよ。誰だって、素直になれば幸せになれるもんだよ』
その言葉は、春の風よりも優しかった。
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