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頸を噛む──ただそれだけの行為なのに、蓮の身体はどうしても本能の形を取ってしまう。気づけば真都の肩を軽く押し、ゆっくりとうつ伏せの形にさせ、自分はその背に覆いかぶさる。
《真都・……〔くすりと笑い〕蓮くん、またこの体勢》
《蓮・……ごめん、怖くしたいわけじゃないんだ……》
《真都・怖くないよ。……むしろ、落ち着く》
うつ伏せにされると、首筋が無防備に晒される。
その位置に蓮が息をかけ、ゆっくりと噛み跡を刻む──甘噛みとも、確かめ合う儀式とも言える強さで。
押し倒す形は所謂マウンティング。
番を守るための本能がそうさせていると分かっていても、蓮は少しだけ「支配欲」に近い熱を感じる。
《蓮・……ん、これで……また俺のって分かる》
低く囁き、最後に舌で跡をなぞる。
真都は静かに息をつきながら笑った。
《真都・……蓮くんが俺のαでよかった》
《真都・ッ、蓮くん?》
不意に低く息が詰まる声。
頸を噛まれたまま、背後から腰がぐっと押し付けられた感触に、真都の肩がわずかに跳ねた。
蓮は離れない。
頸筋に歯を立てたまま、熱くなった息をそこで繰り返す。
意識しているわけじゃない──ただ、本能がそうさせる。
《蓮・……ごめ、マイ……こうなるの……》
噛み跡を刻む力を少し緩めながらも、腰はじわりと押し付けたまま。
《真都・……〔小さく笑って〕……蓮くん、獣みたい》
その声は驚きよりも、どこか嬉しそうだった。
《真都・、、、》
短く詰まった息。
Ωでありながらも、まだ“受け入れる側”の経験はない真都にとって、このうつ伏せに押さえ込まれる体勢は、ほんの少しだけ胸をざわつかせる。
蓮はその微かな緊張を感じ取って、噛んでいた頸からゆっくりと唇を離した。
手のひらで背中を撫で、落ち着かせるように低く囁く。
《蓮・……ごめんな?怖がらせたくてしてるんじゃないんだ。……ただ、噛む時だけはこうなっちゃう》
真都はしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いて、背中越しに小さく笑った。
《真都・……蓮くんが相手なら……大丈夫》
蓮の胸に、きゅっと甘いものが落ちた。
《蓮・大丈夫、無理矢理なんてしないから、マイ》
蓮はそっと手を離し、真都の体をこちらに向けさせる。
大きな体を優しく包み込むように正面から抱きしめ直し、そのまま唇を重ねた。
キスは柔らかく、頸を噛まれたときの緊張を少しずつ溶かすように、時間をかけて深まっていく。
蓮の手が背中をゆっくり撫で、呼吸を合わせるたびに「安心していい」というメッセージが伝わってくる。
《真都・……蓮くん……》
吐息混じりの声は、もう怯えではなく、甘える響きに変わっていた。