From.司
鮎の塩焼きを食べ終わったあと、俺たちは山菜を採りに行った。
「類、山菜の見分けってつくか?」
「ああ。食べられるか、とか種類程度なら分かるよ。」
さすが類。博識だ。
「それは頼もしいな!」
なぜか胸が騒いだ。何だ?嫌な予感がする。
「司くん!ほら、おいでよ!山菜がこんなにあるよ!」
行きたくない。行ってはいけない。そんな気がした。
_____________________
From.類
司くん、また具合が悪そうだ。なにかあったのだろうか。
司くんはいつも無理をする。1人で抱え込み、爆発する。そういうタイプだ。
僕は、そんな司くんがいつも心配だった。
「具合でも悪いのかい?テントを建てて休もうか?」
「……ああ、すまないがそうしてほしい。」
「僕は大丈夫だけど、司くんは大丈夫かい?」
「ああ、少し頭が痛くてな…胸がザワつくんだ。」
それはとても心配だ。どうしたのだろうか。
僕はテントを建てながら、司くんの様子を伺った。本当に気分が悪そうだ。2泊3日なんてせず、すぐにでも帰るべきかもしれない。
「せっかく来たんだ。俺のことは気にせず、楽しんでくれ。」
君と一緒じゃなきゃ、楽しめないよ。君はそうやって、僕をすぐ置いていく。
今日だって、やっと帰ってきてくれたのに。僕は寂しかったよ。ずっと独りで、君が来て見つけてくれるのを待っていたんだ。
_____________________
From.司
頭が痛い。類はどこへ行った?
俺は類を愛している。心の底からだ。ずっと一緒にいたい。永遠に。
俺はテントの外へ出て、辺りを見渡す。
類は見当たらないな……それどころか、人1人すら見当たらない。
「ここは…どこだ?」
不安が募る。孤独感、焦燥感。
まただ。またこの頭痛。
_____________________
From.司
類だ!類がいる!横たわっている…?具合が悪いのか?
「類っ!!」
「全く、どこへ行っていたんだ?心配したんだぞ!」
いつの間にか、頭痛は消え去っていた。
「具合は大分良くなったんだ!そうだ、花火を持ってきていたんだ!2人でやろう!」
俺は類を抱き寄せた。
「2人一緒なら、温かいな…」
そう言って俺は、目を閉じた。
_____________________
From.類
司くん、まだかなぁ……
隠したって無駄なのに。僕はもう、全部知ってるよ。
司くんが来たら問い詰めるつもりだ。
「類ー!探したぞ!」
僕も探していた。君にこれを聞くために。
「ねぇ、司くん。」
_____________________
From.司
類はそう言った。怯えているのだろうか、中々可愛らしい顔をする。
「……ああ、俺が殺した。」
「どうして……どうしてそんな事をしたんだい?」
「…お前を、愛していたからだ。」
「愛していた……?なら、なんで、」
類は今にも泣き出しそうな顔で、言った。
そんな顔をしないでほしい。俺は、お前といたかっただけなんだ。
_____________________
From.司
しまった。うたた寝していた。花火はもう、とっくに消えていた。
「…だいぶ冷えてきたな、寒くないか?類。」
類にそう問いかけ、俺は毛布をかけ直す。
「おかしいなぁ、真夏なのになぁ。なんで、こんなに寒いんだろうなぁ。」
類は答えない。眠ってしまったのか?
俺も眠くなってきた。瞼が重い。
「おやすみ、類。」
そう言って俺は、美しい白骨死体の額にキスをした。
_____________________
From.彰人
「あの人たちが死んで、もう5年か。」
「ああ、先輩方には…申し訳ない事をしたな。」
冬弥はそう言って、少し落ち込んだ様子を見せた。
「別に、お前のせいじゃねぇだろ。」
「だが、俺たちがキャンプを勧めなかったら、司先輩たちは……」
先輩が山で死んで、もう5年経つ。
どうやら、神代先輩がキャンプの最中に、崖から落ちたらしい。
更に不可解なのが、なぜか司先輩がその死体をテントまで運び、生活していたそうだ。
なんであんな事したんだ?
神代先輩の落下は事故らしいが、本当に事故なのか?司先輩がおかしくなったのも、何か理由があるんじゃないだろうか。
死体に話しかける狂った司先輩を想像して、俺は身震いした。
恐ろしい。なにがそんなに先輩を歪ませたのか。
冬弥は責任を感じているみたいだ。そりゃ、自分が慕ってた先輩が亡くなって、落ち込まないわけないよな。
_____________________
From.冬弥
やはり、噂は本当だったらしい。
あの山にはカップルで行ってはいけないと。強く愛し合っているカップルほど、魔物に取り憑かれると。
正直、信じてなかった。が、結果が全てだ。
そう、俺は全て知っていた。知っていたんだ。なのに、どうして俺はあの山を勧めたのか。
俺は一体、なにがしたかったのか。
あの2人が羨ましかった?あの2人が憎かった?どれも違う。俺はただ……
また2人でキャンプがしたかった。それだけだ。
_____________________
君が殺したこの夏 END
コメント
16件
あーーーもう好き!!!!!!!!!最高!!!!!!!! 考察が捗るぜ☆
ひえぇ……