テラーノベル
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萌木さんの代わりの大部分をやっていて、グリーンライトの副社長である久慈さんが、リモート打ち合わせをしたい、とのことで応じている。
萌木さんは恰幅のいい人だけど、この人は痩せ型の糸目で、ぶっちゃけ見た目うさん臭いんだよね……でも仕事のやり取りをしてみるとすごく気配りやさんだから、見た目で損してるんだろうな……。
最近の仕事はどうか聞かれて、俺は「あんまり時間に収められてませんけど、それなりにやれてます」と答えた。
「あの量を週20時間でやれる人はいないですよー!」
「まあ、20時間は無理ですね」
俺は苦笑した。ていうかさっきから、最近の仕事は大丈夫か、きつくないかどうかしか聞かれてないな、打ち合わせにしては内容が薄いような。
変に思っていると、久慈さんが身を乗り出した。
「あの、和泉さんってこれからもフリーランスでいたい感じです?」
え、もしかしてこれは。
「ええと、そりゃ安定したほうがもちろんいいですけど、グリーンライト外の切れない仕事もあるしって感じで……」
グリーンライト外の仕事かなり整理してるけど、それでも富貴さんのところの仕事と狭山さんのところの仕事は絶対切れないしな。富貴さんの仕事は金額的に、狭山さんのところの仕事は心情的に。
久慈さんは笑った。
「うち副業OKですよ、だからうちの正社員なりません?」
マジで!?
「そ、そういうことならぜひ、お願いしたいですが……」
え、これを切り出すための打ち合わせだったの!?
「よかった、萌木さんのことなくても人増やしたかったんですよね、給料は今の時給換算をフルタイムでやるのとそんな変わらない額ですけど、賞与が夏冬1ヶ月分ずつつきます。タイミング的に和泉さんに出せるのは今年の冬からですけど……あと、残業代ももちろんつく」
「あ、ありがとうございます」
残業代保証されるの、マジで嬉しいな。前職では部長がいると「タイムカード切ってから残業しろ!」とか怒鳴るから、半分も残業代もらえなかったけど。
「いやー、フリーランスの人、いろいろあってフリーランスでいたい人も多いから、和泉さんには声かけたかったけど声かけづらかったんですよねえ」
久慈さんは嬉しそうに両手をすり合わせた。
「え、そうだったんですか」
「和泉さん、萌木さんのピンチヒッターに、すぐいいですよって入ってくれたし、春からずっとよくやってくれるから、もしかしたら声かけたら正社員なってくれるかもって、やっと思って」
「いやあ、安定が一番なタイプですよ、私は」
俺は頭をかいた。前職で盛大に体を壊して、コロナ禍も手伝って家でできる仕事を探してたどり着いたのがWebライターだ。だからフリーランスでできる仕事を探すしかなかったんだけど、そりゃ正社員なれるならなりたい。
久慈さんは「ところで」と言った。
「よかったら、切れない仕事の内訳お聞きしてもいいですか?」
「ああ、化粧品のLPの仕事と、ライトノベルの制作協力の仕事です」
俺は富貴さんのところの仕事と狭山さんのところの仕事を詳しく説明した。富貴さんの事業を過去手伝っていたことや、狭山さんとは個人的に親しくしていることについても。
「まあ、どっちもそれなりに時間取りますが、頑張るしかないですね」
そう言うと、久慈さんは首を傾げて考え込んだ。
「んー……化粧品のLPだったら、うちで契約結んで必ず和泉さんにやってもらう、の形でうちの仕事に組み込むの可能ですけど、そしたら和泉さんは富貴社長との関係切らずにすむし、副業で時間圧迫しないし、うちの案件増えて嬉しいんですけど、どうですか?」
「え、ぜひお願いしたいです」
俺は身を乗り出した。正社員になるにあたって、唯一の心配が仕事量が増えすぎることだったので、フルタイム勤務+副業のうち副業の半分がフルタイムに吸収されるのはありがたい。
その後は雇用契約書や富貴さんとの契約について細かいところを詰め、打ち合わせは終わった。
リモート画面を切ってから、じわじわ嬉しさがこみ上げてきた。やった、俺8月から正社員だ!
千歳は買い物に行っていたので、千歳が帰ってきてから俺はことのあらましを説明した。
「というわけで、俺、経済的に安定します」
『そりゃよかったけど、正式に雇われるならもっと仕事増えるんじゃないか?』
喜んでもらえると思ったんだけど、千歳は心配顔だ。まあ、ブラック企業で俺が体壊した結果を散々見てきたわけだしね……。
「まあ増えるだろうけど、俺の仕事量に気を使ってくれて、減らす提案してくれる相手がいるから、きつかったら早めに相談すればなんとかなると思う」
『無理すんなよ?』
「無理はしない、というかできないよ」
俺は苦笑した。千歳のおかげで健康は回復したが、もともとあんま体力ないもんな……。
俺としては、夜、千歳とソファでくっついてゆっくりする時間は死守したい。今は朝8時から仕事してるけど、これを8時前にするところから頑張るか。俺は千歳と仲良く穏やかに暮らせる今の暮らしが本当に幸せで、それがこれまでより安定するなら、万々歳だもんな。
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コメント
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えー、ついに正社員!😭✨ 久慈さんの「声かけたかったけど声かけづらかった」、ひた隠しにしてくれてたんだなって思うとじわじわ嬉しい…。安定したいけど切れない仕事も大事にする和泉さんの誠実さも好きだし、千歳が「無理すんなよ?」って心配してくれるのも尊い。二人の穏やかな暮らしが守られるなら万々歳だね、ほっこりした〜!🎀