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僕らは一度、森林街へ戻り作戦を練ることにした。
アゲルは何も言わず、またも何かを口に頬張っている。
「アゲル〜、何か神探しのいい手はないの?」
「む〜〜〜」
アゲルはチーズのようなものを口から伸ばす。
頬を赤らませながら美味しそうに吸い上げる。
「ヒーラは探せないですからね」
「探せない……? 自然の国の神は探せないのか……?」
「はい。風の神ヒーラが唯一神バベルより授かった加護は “疾風” 。200年姿が見られないとしたら、200年間移動し続けているんです」
「200年間、移動し続けている……?」
「まあそれは僕は知っていたんですけどね。ただ、それが何故なのかは分からないです」
そして、またもチーズ入りのパンを口に頬張った。
「あ、あの……」
僕が項垂れている側から、小さな声が聞こえた。
声の先には、赤髪の小さな女の子が立っていた。
「えっと……僕に用……?」
「ヤマト!」
すると、少女は僕の名前を大きく叫んだ。
「えぇ!? なんで僕の名前知ってんの!?」
「よち!」
(よち……? 未来予知か……!?)
アゲルをふと見遣るが、興味無しと言った具合に頬張ったチーズをはふはふさせている。
「僕は確かにヤマトだけど、君は?」
「私、カナン!」
「ぼ、僕に何か用があるの……?」
「んぇ……わかんない……」
少し困り顔で、僕の裾を掴んでくるカナン。
困った。神探しの前に母親探しじゃないか……。
そんな中、アゲルはひょこっと机の下に顔を出し、カナンに問いかけた。
「カナンちゃんはどんな魔法が使えるの?」
確かに言われてみれば、未来予知なんて言われてどんな魔法か気にならない方がおかしい。
グッジョブアゲル。
と思いつつ言葉にはしなかった。
僕らはカナンを連れ、再び荒野地帯へと戻った。
カナン曰く、街中だと危ないそうだ。
「それじゃあ、あの岩に放つから見ててね!」
なんだかんだ、初めてちゃんと見る魔法。
僕はゴクリと唾を飲み込む。
しかし、カナンは弓矢を取り出した。
「弓……?」
「行くよー!」
カナンは躊躇なく矢を引く。
そして、小さな体を飛車げ、矢を放った。
先端は炎に包まれていた。
「炎魔法ってことか……?」
しかし、カナンの矢は命中率がなく、岩の真下に落ちてしまった。
小さな少女だし、こんなものだろうと思っていたが、
ドォン!!
徐に、矢は爆破し、岩を粉々に粉砕してしまった。
「ば……爆破……!?」
「うーん。どうやら、カナンちゃんの魔法は、炎魔法だけど、次いで爆発までしちゃう高火力の魔法攻撃みたいだね。僕は未来予知ってのが見たかったんだけどなぁ」
そう言うと、アゲルは掌を合わせた。
「何してるんだ……?」
「ボサッとしてたら殺されちゃいますよ」
そう溢すと、岩の隙間から武器を持った男たちが複数人現れた。
「お前たち……何故俺たちがこの岩陰に潜伏していることが分かった……?」
そして、警戒しながら男たちは僕らを囲っていく。
カナンの破壊した大きな岩には、たまたま謎の武人たちが潜伏していたのだ。
「ま、まずいじゃないか! アゲル!」
「だから言ったし」
そう言うと、アゲルは煌々とした剣を創り出した。
「そ、その剣で戦ってくれるのか……!」
僕が期待の目を向けると、アゲルは目を尖らせる。
「僕は非戦闘員です。ヤマト、実戦です」
そう言うと、アゲルは光の剣を差し出した。
「風魔法と合わせればこの数の敵なんざわけないですよ。これからの旅の為にも強くなってください」
そう言うと、僕に剣を持たせて退いた。
「おじさんたち! 悪い大人!」
「カナン!!」
カナンは弓を持って既に臨戦態勢に入っていた。
やるしかない……。
カナンは再び矢を射ると、武人たちを複数人吹き飛ばした。
僕は要らないんじゃないかと思う程の威力があるが、流石に数が多すぎる。
「カナン! 下がれ!」
カナンの爆破のお陰で、武人たちは警戒して急には襲い掛かってはこない様子を見せていた。
僕が戦うしかないんだ……!
「オラァ!!」
“風魔法 フラッシュ”
僕は地面に向け、風魔法を放ち、推進力に身を任せて武人の一人に剣を構えて突っ込んだ。
「コイツ……! は、早え!」
男は速度に困惑した様子を見せるが、剣を構えた。
大丈夫だ……。この風の勢いがあれば、剣を当てるだけで敵を吹き飛ばせるはずだ。
失敗しても、前みたいに風魔法で吹き飛ばせばいい。
そこまで計算し、僕は突っ込んだのだ。
しかし、
「あれ……!?」
剣は敵の剣を透き通り、敵もそれに動じて転倒していなければ敵の剣の餌食になるところだった。
「な、なんだその剣は……」
敵も困惑しているようだが、困惑しているのは僕だ。
「アゲル! どう言うことだよ!」
って……言ってる場合じゃない。
敵の剣が目の前に覆い被さる。
失敗時の策も用意しておいて正解だった。
「風魔法 フラッシュ!」
僕は敵に手を向け、風魔法を放ち、敵を吹き飛ばした。
そして僕も素早く風魔法に乗り撤退した。
「お、おいアゲル! どうなってんだこの剣は!」
「その剣は僕が光魔法で創り出した光剣です。持ち主の意志によってその強さが変わります。冷静に考えてください。光と言うのは普通は触れないですよね」
そう言うと、アゲルは不敵に笑った。
コイツ……肝心な時にいつもふざけやがって……。
いやでも、流石のアゲルだって、僕を犬死にさせたい訳はないし、何か理由があるはずだ……。
そして、この世界に来てからの言葉を巡らせる。
(本来は武器に魔法を乗せなきゃ魔法は放てない)
(別に相手を殺すことだけが勝利条件ではない)
(この数なんざワケない……?)
(風魔法と合わせれば……)
分かった気がする……。
普通はこの人数、一人一人と戦っていたら、この数なんざ、なんて言葉は出てこない。
「剣に風魔法を付与……!」
ヒュオオ……と、光剣に風が巻き起こる。
普通は触れられない光に、風を具現化させる……!
光剣には、大きな暴風が吹き荒れる。
「やっぱ、優しいんですね」
そう言うと、アゲルはカナンを抱えて上空へ避難した。
「名前思い付かないけど、喰らえ!!」
僕は自らを回転させ、暴風を周囲に発生させた。
そして、周りの敵を一気に吹き飛ばし気絶させることができた。
「あ、ヤバい。アゲルたちのこと忘れてた……!」
「大丈夫ですよー。夢中になってましたからね、カナンちゃんと上空に避難してました」
そう言うと、ふわふわ落ちながら空を指差した。
「空飛ぶの気持ちいい〜!」
カナンもはしゃいでいるし、空を飛ぶ魔法はあまり珍しくないのだろうか……。