テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
🌷言葉を閉ざすティア
「ティアいつも楽しいお話をしてくれてありがとう、でもあなたには幻聴が聞こえるのよね?あなたにしか聞こえない声がなんて言っているのかわたしに話してくれない?あなたの精神疾患を治療するのにとても大切な情報なの」
ミリアがそう言ったとたんティアの心は凍りついた。
ずっと耳をふさぐように行動で逃げてきたのだから言えるわけがなかった。
「ティア?」
急にティアは黙ってしまった。
行動しながらも人間を保ち続けるのは大変なことだった。
何度も行動をやめようと思った。
だけどここまでやめられずに来てしまった。
ティアはうつむいて黙っていた。
「嫌なことを聞いてごめんなさい、だけど幻聴の内容がわからないとあなたが何にそんなに傷ついているのかわからなくて、もう行動でごまかすのはやめて、あなたの見境のない行動は自分も他人も傷つけているわ、あなたの幻聴とわたしが話をしてみるから教えて?」
ミリアがどんなに聞いてもティアは黙っていた。
長い沈黙。
「ごめんなさい、今日はここまでにするわ」
ミリアがそう言ったのでティアは逃げるように診察室をあとにした。「……失礼致します」
ミリアはティアが行動によって幻聴を紛らわすとどんな状態になるか知っていた。
暴れている時のティアは別人のようだった。
だから今はどのような状態になっても驚かない。
しかしティアがどうしてそんな状態になるのかを知らない人にはティアは言葉が理解できないと思われてしまう。
そうまでしてなぜティアは言葉を閉ざすのだろうか?
児童精神科医である夫から聞いた話によると子供の頃のティアは絵を描いたり、箱庭で動物園を作ったり、楽しそうだったという。
児童精神科での遊戯療法。
ティアの行動が荒れたのは、大人になってからだった。
(一体何があったと言うの?)
ミリアは悩む。
ERINEKO
87
3,930
コメント
1件
第7話、読み終えました。ミリア医師の「あなたの幻聴とわたしが話をしてみる」という言葉、すごく真摯で心に響きました。でも、ティアがどうしても口を開けない——あの沈黙の重さが胸に迫ります。行動でなんとかやりすごしてきたのに、言葉を求められると立ち止まってしまう。子供の頃は楽しそうだったというのに、大人になってからの何が彼女をこうさせたのか……続きがすごく気になります。ERINEKOさんの描く心の機微、繊細で惹き込まれました。