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※ワンク
病気(認知症)に関する表現を含みます
また、このお話は二次創作であり、
ご本人様とは 一切関係ございません
苦手な方は自衛をお願いいたします🙇🏻♀️
Episode.1
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紫 : side
朝、目が覚めた。
いつも通りの部屋。
いつも通りの天井。
――のはずだった。
紫「……あれ」
机の上に置いてある教科書を見て、
俺はほんの少しだけ、手を止めた。
これ、昨日やったページだっけ。
分からない。
いや、そんなはずない。
昨日、ちゃんと勉強したはずなのに。
胸の奥が、ざわついた。
「……疲れてんのかな」
小さく呟いて、息を吐く。
そういえば、テスト前で
昨日は遅くまで起きていたんだっけ。
――だからかな…
そう思えば、少しだけ安心できた。
気のせいだと、無理やり飲み込む。
この時の違和感をそのままにしなければ
良かったと今では思う。
その時は、そんなこと考えもしなかったけど。
俺は教科書を閉じて、立ち上がる。
制服に袖を通しながら、スマホを手に取った。
時間を確認しようとして――
画面に映った文字に、ふと目が止まる。
『7月〇日英語の小テスト』
ロック画面のメモに、自分で打ち込んだはずの言葉。
「……あれ、これ」
昨日、書いたんだっけ。
それとも、もっと前だったか。
一瞬だけ、指が止まる。
けれどすぐに、首を横に振った。
「いや、さすがに忘れるわけないだろ」
小さく笑って、ポケットにスマホをしまう。
そのまま部屋を出ようとして――
ドアノブに手をかけたところで、また足が止まった。
……何か、違和感がある。
けど、それが何なのかが分からない。
考えようとすると、さっきと同じように、
胸の奥がざわついた。
「……もういいか」
考えるのをやめて、ドアを開ける。
いつもと同じ朝。
いつもと同じ廊下。
――何も変わっていない、はずだった。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
「おはよ、いるま」
後ろから声をかけられて、振り向く。
そこにいたのは――なつだった。
紫「あ……なつ、おはよ」
少しだけ、間が空いた。
6,062
10
名前を呼ぶまでに、
ほんの一拍、遅れた気がした。
でも、なつは気にした様子もなく、
いつも通り笑っていた。
赫「今日さ、英語の小テストあるじゃん?」
紫「あー……うん、そうだね」
さっきスマホで見たメモを思い出して、曖昧に頷く。
赫「勉強した?」
紫「…してきたよ」
言葉だけが、先に出ていった気がした。
なつは「さすが」とでも言いたげに笑って、
俺の隣を歩き出した。
その横顔を見ながら、ふと思う。
――こうやって並んで歩くの、
当たり前のはずなのに。
どうしてか、その記憶だけがぼやけている。
すぐに思い出せるはずのことなのに、
頭の中に、うまく浮かんでこない
赫「……いるま?」
紫「え?」
赫「なんか、ぼーっとしてない?」
心配そうに覗き込まれて、慌てて目を逸らす。
紫「いや、ちょっと寝不足でさ」
赫「あー、テスト前だしな」
納得したように笑うその顔に、
なぜか少しだけ、ほっとした。
――この感覚。
ずっと気付かないふりをしてきたもの。
隣にいると、落ち着く。
それがどういう意味かなんて、
本当はもう分かっているはずなのに。
なのに、どこかその輪郭だけが、曖昧なままでいる。
赫「じゃあさ、放課後ちょっと残って勉強せん?」
紫「え」
予想外の言葉に、思わず声が漏れる。
赫「ほら、今回ちょっと難しいって先生言ってたし」
紫「……あー、いいね」
一瞬迷ってから、そう答える。
本当は少しだけ不安だった。
さっきから続く、あの違和感が、
頭のどこかに引っかかっている。
でも――
赫「よしっ、じゃあ決まりな!」
嬉しそうに笑うなつを見ていると、
そんなこと、どうでもよくなる気がした。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
教室に入ると、クラスメイトたちの声が一気に広がる。
いつもの風景。
見慣れたはずの場所。
なのに――
紫「……あれ」
自分の席に向かおうとして、足が止まった。
前に座っている男子が、振り返る。
モブ「お、いるま!今日遅いね、どしたん??」
気さくに話しかけてくる、その顔。
見覚えは、ある。
ある、はずなのに。
――名前が、出てこない。
紫「……っ」
一瞬、呼吸が止まる。
そんなはず、ないのに。
毎日顔を合わせてるのに。
モブ「ん?おーい、いるま?」
不思議そうに首をかしげるそいつに、
慌てて笑顔を作る。
紫「いや、なんでもない」
ごまかすようにそう言って、席に座る。
心臓が、うるさい。
さっきよりもはっきりと、分かってしまった。
――やっぱり、どこかおかしい。
to be continued
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第1話、 読んで頂きありがとうございました✨️
また次回も読んでいただけると嬉しいです!🙇🏻♀️