テラーノベル
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光だした床の矢印に従って進んで行くと、透明なガラスのサークルに囲まれた魔法陣が2人を出迎えた。
「誰もいねーじゃんよッ」
身分を証明する物を何一つ持っていないミューは、貧相な胸を撫で下ろした。
「おいっ貧相は余計だろ」
「ん? 何か言ったですか? 」
ノンが目を丸くする。
「イヤっあたしの被害妄想的なってヤツ」
「どんなヤツなのですっ? 悪いヤツ? 」
「そこは流そーよ」
ミューは疑り深くマジマジとサークルを覗き込み、コンコンと透明なガラスを叩いた。
「取り敢えずこの中に入れって事よねッ? きっと」
「だと思うのですっ。前は受付にアンドロイドが居たのですっ。ちょっと、えっちぃヤツだったので、多分クビになったと思うのですっ」
小さい耳がピョコピョコ動く。
「ふーん。どの程度えっちぃのか興味あったけどッ まぁいいか」
ミューはガラス面に貼られた説明書と思しきものを読む。
「なになに? 男も女もオカマも下着姿にて入れ? オカマは余計だろ」
「お釜ってなんなのですかっ? 」
「あぁ食堂の厨房に有るでっけぇ釜の事だよッ 」
「お釜も歩くのですかっ? 」
「うん、そりゃあ夜だろうが昼だろうが何処でも出歩くわよッ。厚化粧でね」
「厚化粧? 」
「もうこの下りいらなくね? さっさと入って街中に行くわよッ」
「ラジャー 」
ノンがパパパッと下着姿になると、何の警戒も無くサークル内へと飛び込む。するとサークルが光を放ち、ゆっくりと回転しながら、身体を細い光のラインがスキャンする。
種族名=猫人種《クロット》。性別=雌。職業=整備士。体液型=UA型。身長=128㎝。体重=非公開。胸囲=ムフフ。発情期=間も無く。去勢=未去勢。寄生虫=無し。宇宙ウィルス=ワクチン接種済み。美人度数=B。可愛い度数=A。若さ指数=A。マニア受け指数=BBB。総合=超G級冒険者にて登録。
『入場歓迎致シマス。良イ出会イヲ』
「出会い系かよッ。何だよコレ完全に趣味じゃねーか、こんなんが入場検査かよッ。時代が時代なら完全にアウトだろ」
「交代なのですっ」
ノンがサークルを出ようと試みると、大きな双丘がガラスの出入口に引っ掛かる。ぐぬぬと強引に身体を押し出すと、たわわなお胸が卑猥に変形していく。ハラハラと見守るミューに対し、苦しそうなノンは助けを求めた。
「ひっ、引っ張って欲しいのですっ」
「どこをだよッ? 」
「かかか、身体をぉ…… 」
「デカめろん伝説過ぎんだよッ、何ですんなり入れたのに、出る時になったら引っ掛かるのさ」
「中で成長したのですっ」
「な訳あるかいッ」
グググとノンの腰を引っ張ると、さらにお胸が変形し、ぱつんぱつんのブラがズレ始める。
「あぁ飛び出ちゃうのですっ」
「どっちが? てかッ どこがだよ? ぽろりしちまえ畜生め! 」
ノンの身体が飛び出したと同時に反動のついたメロンも飛び出す。ドゴンとミューの顔面をメロンが薙ぎ払うと、パイ打ちを食らったミューが吹っ飛んだ。
「グハァ―― いててててッ」
ミューの頭には星が巡る。
「大丈夫ですか? 」
「巨乳に殺されるかと思った」
「本望なのですっ」
「じゃかぁしぃわいッ」
出入口に突っかかるノンに対し、兎の着ぐるみを男前に脱ぎ去ると、何ら問題無くサークル内にミューが入る。そう、当然下着などは着けてはおらず、ポンのままで解析が始まる。
種族名=月下人《ムーミン》。性別=オカマ(おとこの娘?)職業=残念女神? 体液型=適合無し。身長=142㎝。体重=軽い。胸囲=マイナス。発情期=年中。去勢=未去勢。寄生虫=無し。宇宙ウィルス=ワクチン未接種。美人度数=C。可愛い度数=B。若さ指数=D。マニア受け指数=AAA。露出狂度数=SSS。総合=超A級残念冒険者にて登録。
『残念ダカラ残念ダケド入場ヲ許可シテヤル。つるぺたマニア達トノ出会イニ幸アレ』
「なんだソレッ、怒る気にもならねぇッ。何か最近のアンドロイドと云い、機械系のやつらバグってねぇか? G級とかA級とか、なんかムカつくんだけどアタシの勘違い? 」
「若さ指数がDランクって、おねいちゃんゎ幾つなんですか? 」
「知らんよッ。そこよりオカマの方を気にしてくれッ」
「メガミってなんなのですっ? 」
「ん~…… 細かい事気にしないでいいからッ、ぶっ壊れてるのよきっと。さぁ、さっさと行くわよッ」
「ラジャー 」
☆☆☆
詰所の様な建物の扉を抜けると、長いトンネル状の階段が二人を迎えた。登ってゆく程に光が差し込み、壁一面が継ぎ接ぎだらけの剛鉄製で有る事に気付く。それは統一性の物では無く、あらゆる船達の廃装甲を流用した物に見えた。中には弾痕の様な穴が空いた物も使われている。
「ふぅ~ん。宇宙機の廃材を使ってるのねッ 」
大きな剛鉄製の扉の前に辿り着くと、またしてもレーザーが二人をスキャンする。
『Gカップ冒――― ゲフンゲフン…… 超G級冒険者カクニンシマシタ』
「お前!今、カップって言いやがったな? やっぱりデカさで登録しやがったな、こんちくしょーめッ 」
『ツヅキマシテ……。貧ニュ――― ゲフンゲフン…… 超A級残念冒険者カクニンシテヤリマシタ』
「マジで街ごと吹っ飛ばしてやろうかしら……」