コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「それでは、お茶も入ったことですし、一休みしましょうか」
テーブルに向かい合わせで座ると、「お茶菓子をどうぞ」と、華さんが栗たっぷりの栗蒸しようかんを切り分けて出してくれた。
「陽介様にも、この後に持って行かれてくださいね」
「はい」と答えて、お湯呑みを手にした。
同じようにお湯呑みを手に、お茶を一口啜った華さんが、
「……陽介様は、いい方でしょう?」
と、口を開いた。
自分もお茶を飲んで、「ええ」と、頷いて返す。
「私は、かつて奥様がいらっしゃった時から、こちらに住み込みでお仕えをしているのですが、奥様が亡くなられて、私も御宅を出た方がいいだろうかと思っていたんです。
ご夫婦でお住まいでしたら、住み込みのお手伝いがいても問題はなかったかもしれませんが、お一人のお住まいに私のようなものがいては、陽介様も新たな出会いなどがしにくいのではないかと思いまして。
ですが、おいとまを申し出た私に、いつまでもここにいてほしいと言ってくださって。華さんは、もう家族のようなものだからと……それが嬉しくて、とても」
華さんが目尻に薄く涙を滲ませる。
「蓮水さんは、本当にいい方ですよね。私も、出会えてよかったと心から思えています」
彼の人柄が感じられるあたたかなエピソードに、にこりと笑って応えると、
「ええ、陽介様と出会われたのがあなたでよかったと、私も心より思っていますから」
と、華さんが潤んだ目を細めて、穏やかな微笑みを浮かべた。