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坪井が何かを言いかけたのか。
耳元に少し息がかかった。
その声を、聞く前に真衣香は応えた。
「つ、つきあいたい!」
「え?」
「あ、ご、ごめん大きな声で……」
驚いた顔を見せられた真衣香が思わず謝ると、
「あ、いや。断られると思ってたしビビった」
と。まじまじと真衣香を見つめながら、坪井は言った。
「そっかー、えー、マジかぁ」
「あ、あの……坪井くん?どうしたの」
見つめられた後、次はニコニコというか満面の笑みで、ニマニマというか。
そんな表情を真衣香に見せた。
「んーん、何でもない!まあ、とりあえずもうちょい飲もうよ。明日休みじゃん」
「え!?あ、うん」
そう言って、腰を撫でるようにして触れた坪井の手。
真衣香の頭の中は、あらゆる思いが駆け巡っていた。
(あ、あれ?つきあうって、こんな会話の流れで始まるの?)
(手、手が、なんかくすぐったいけどこれは黙ってればいいの?それが大人の女の態度!?)
(てか、相変わらず距離が近いよ、近すぎるけど坪井くん!!)
わからないことが多過ぎて、だけど素直に場慣れしてないことを暴露するのも24歳女の謎のプライドが許さない。
坪井の甘くて爽やかなにおいを間近に感じて、腰に触れる手から体温も感じて。
真衣香は思考が追いつかず、どこを見ればいいのかもわからず。
ただひたすらにグラスを持つ手に力を込めてカシスオレンジを飲み続けた。