テラーノベル
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星まつの時にあげたかったやつです。
文字数が短編じゃないです。
急展開です。
朝菊です。
ちょっとの極東もあります。(腐なし)
急展開です。
展開に時差があります。
史実ありです。
急展開です。
緩く読んでいただければ幸いです。
ずっと見ていた。
ずっと憧れていた。
ずっと、貴方の言う相棒という肩書きに相応しい国になれるようにと努めてきた。
でも、貴方と肩を並べれるようになったと思う夜は一度も無かった。
それは今も、これからも。
「あぁ、そういえば明後日でしたね。イギリスさん家での世界会議。」
『…と?』
「はて。」
『…忘れてた。なんて言わせねぇぞ。』
「ふふ、言うわけないじゃないですか。もう手土産まで用意したんあるんですよ?」
受話器越しから何回目かのキョドった彼の声が聞こえた。口元が緩み、既に丸で印をしてあるカレンダーが目の端に写る。
8月30日。急遽決まったイギリスでの世界会議。主に世界会議が行われるのはアメリカのワシントンが主要だが、今月は他の会議で使われるらしく空きがないということで、その場のノリと勢いのままイギリスで会議を行うことになった。思い返してみれば、同盟時代以降イギリス国に足を運ぶ機会は一度も無かった。もともとインドアな性格の自分だから、海外には誘われない限り行こうともしないし、向こうの方から日本に来たいと連絡が入りもてなすのが恒例化しつつあったからだろう。 無茶振りに気の毒ではあったが、久しぶりの現地には胸が躍るまま、話を続けた。
「サプライズなら俺も用意してあるぞ。ディナーはビーフシチューだ。お前昔好きだったろ?」
「……えぇ。楽しみにしていますね。」
『あぁ。日本のもな。』
受話器を切れば、待っていたと言わんばかりに飼い犬のポチがかわいく一鳴きする。それに応えるようにポチを抱え居間の座布団に腰を下ろす途中、嫌な光景が目に入った。
そこには、今にも物が溢れ出てくるような押し入れの様子だった。片付けようとは前々から思っていたものの、この光景が目に入ってしまうとどうもやる気が失せてしまう。この前もアメリカさんから押し入れが爆発しそうで怖い。と注意を受けたというのに、はや100年。ずっとこの状態だ。 顎に手を当て、うーんと悩んだ末。そういえば丁度アニメも漫画も観るものがなくなり暇になったということに気づき、流石に掃除するかと深い溜息をついた。
今だに重たい足を引きずりながらタンスから掃除用に買ったエプロンと白色の三角巾取り出し身につける。ハタキは横に置き、物が落ちないように少しずつ押し入れを開けた。落ちてきそうな物を開ける途中で取り出してはを繰り返していると、あっという間に自分の周りには物が散乱した。やっとの思いで全開した押し入れを眺め、額についた汗を拭う。自分のやる気と戦いながらも、とりあえず絶対にいらない物からゴミ袋に入れていこうと押し入れの中を覗くと、奥の方に1枚のメッセージカードが見えた。
薄暗いため文字は見えないが、どうやら日本語で書かれている。興味本位でそれに手を伸ばし、埃かぶったメッセージカードを払った。
「……これ、」
少し文字が掠れているが、すぐに自分の書体だと気付いた。しかも結構な月日が経ったもの。最初はなんでこんなものがあるのだろうと思っていたものの、手紙の内容を読めばすぐに理解できた。
イギリスさんへ。
書き出しを見た瞬間に察した。確かに、このメッセージカードは日英同盟失効日の後日に私が書いたものだった。
「なんで今になって、こんなもの…。」
彼と交わしたメッセージカードは過去に燃やした。なのに、なぜこのカードは燃やさなかったのだろう。目は通したものの、途中で読むのを辞めてしまった。嫌な記憶を思い出しかねないと思ったから。溜息ついでにメッセージカードをゴミ袋に入れようとした時、パッと辺りが白い光で包まれた。突然目に入った発光に、光源も分からないままぎゅっと目を瞑る。
数秒後、目を開けて入った光景は懐かしい薔薇の園庭だった。
「……え、?なっ…私…家に居たはずじゃ…。」
辺りを見渡す。だけどそこはまるっきりと言っていいほどイギリスさん家の薔薇の園庭で。しかも目の前のテーブルにかかっているテーブルクロスは昔使っていたはずのボタニカル柄に変わっている。足に違和感を覚え下に視線を移すと、そこには紺色着物姿ではなく黒の軍服が目いっぱいに写った。
私が今着ている服装は昔捨てたはずなのに…。意味が分からない事態に硬直していると、ガーデンの奥から見知った人物が顔を出した。
「イ、イギリスさん…。」
彼の服装もまた、正装ではなく軍服だった。私の表情があまりにも分かりやすかったのか、彼は首をかしげる。
「? どうしたんだ?そんな驚いた顔して」
おかしそうに苦笑いした彼は、持ってきたティーカップとポットをテーブルクロスの上に置いた。手慣れた手つきでティーカップに紅茶が注がれる。液体の落ちる柔らかい音と、温かい靄のような湯気がテーブルの上を漂った。ついだ末、目の前に置かれた紅茶の面に自分の酷い顔が反射したが、そんな事はどうでも良かった。
「あの、…さっきまで私、家で押し入れの掃除をしてたんですが、いつの間にかここに…。」
しどろもどろな態度に彼は目を丸くし、また苦笑いを浮かべた。
「俺がいない間に頭でも打ったのか?演技にしちゃぁ上出来じゃねぇか。流石俺の相棒だな」
そのセリフで全てを察した。いや、薄々気付いてはいたが、非現実的な話だと目を背けていた。だが、彼が私の事を相棒だと呼んだ今、それは確信へと変わった。
私は、昔へタイムスリップしたのだと。
しかもよりによって厄介な時代に、意識だけという形で。彼が私のことを相棒と呼んだということは、まだ日英同盟が破棄されていない時期だろう。今の彼は、昔の私しか知らないからあんなに驚いた表情をしたのだ。
「…すいません。少々取り乱してしまいました。」
「ところで、今日って何日でしたっけ?」
「ん?31日だが。」
「…月は、」
「え、7月。」
その日付を聞いた瞬間、ハッとした。
神様はいない。なんていう人の意見が身にしみて感じたような、そんな感じがした。もし実在したとしても、いるのはずいぶんと悪趣味な神様らしい。
「どうしたお前、本当に頭でもぶつけちまったのか?」
彼が心配そうに顔を覗く。
「…いえ、心配なさらず、」
「…17日の予定言ってみろ。」
「え、」
「本当に頭ぶつけてないか確認。」
確かに、31日はお茶会ついでに一緒にアメリカへ行こう、と誘われた出航前の日付だった。それはもちろん、ワシントン会議への出席に繋がる。
「……アメリカさん家で会議…ですよね。」
「お、正解。焦ったぞ、お前が日にちどころか月も聞いてくるもんだから。」
「…すいません。」
ソーサーと一緒に、花が描かれたティーカップを手にかける。そのカップは紛れもなく彼と一緒に買ったもので、この日のこの時間にいた元の私は大層喜んでいたと思う。一口、また一口と紅茶を流し込み、今と変わらない味に鼻がツンと熱くなった。
「出航は明日でしたよね。寝床はどうすれば。」
「俺の屋敷に客室があるんだ。お前が持ってきた荷物もそこに運んだし、好きなように使ってくれ。」
「…えぇ。ありがとうございます。」
紅茶を口に運ぶ彼の顔がぐにゃりと歪んだ。
8月1日
潮風が頬を撫でた。甲板には大勢の英国人が荷造りやら内部の点検に取りかかっている。意味もなくそれを見上げていると、横から自分を呼ぶ声が聞こえ、声の鳴る方へ振り返った。
「よぉ日本。昨日はよく眠れたか?」
「はい。おかげさまで。」
「荷物はそれだけでいいのか?」
「えぇ。会議に行くだけですし。」
実際のところ、同盟破棄当時の思い出は濃いものではなかった。極力思い出さないようにしていたのもあったが、
「ほら、もうすぐ出航だ。俺の国の船だからな。アメリカなんかあっという間に着いちまうぞ。」
「…えぇ。今行きますよ。」
貴方の泣き顔を思い出したくなかったから。というのも、あったのだと思う。
皮肉屋のくせに泣き虫で露骨な人なんだというのは、1年も経たない内に知った。酒を交わして愚痴に酔いしれた日もあった。イギリスさんは泣き上戸だということも身にしみて知っている。泣いている彼を慰めた日は何十回ともあったはずなのに、慣れていたはじなのに、あの時涙を流した彼に私は、何も言えなかった。
私は彼の泣き顔に弱い。
「イギリスさん。」
「ん?」
「少しだけ、外でお話しませんか。」
予定通り船は出航した。 海水が船体を打ち寄せ、波の遠音を響かせながら飽和していく。目に映るのは清々しい空と海、小さくなった島国のイギリス国。解放感あふれるその景色を彼らは甲板から眺めていた。
「で、話たいことって?」
腕を甲板に乗せながら、彼は私の顔を覗いた。それに微笑み返し、深呼吸を1つしたら、口を開く。
「私、嬉しかったんです。イギリスさんがこんな孤島の島国の私と同盟を組みたいと言ってくださって。」
「…あぁ。俺も」
「ずっと、不安でした。私は貴方の同盟国に相応しい国なのかと。」
「私がここまで来れたのはイギリスさんのおかげです。改めてお礼を言わせてください。ありがとうございます。イギリスさん。」
彼の表情は見ていて飽きない。目丸くしたと思ったら、すぐに顔をそらして嬉しそうに頬を赤らめる。 どうせあと17日の関係だ。言い残した事があるなんて悩む日々はもう懲り困りだ。
「ま、まぁ、俺は七つの海を股にかけた大英帝国様だからな!相棒に良くするのは当たり前だろ?」
———————
「サプライズなら俺も用意してあるぞ。ディナーはビーフシチューだ。お前昔好きだったろ?」
———————
「…。」
今も昔も、ずっとイギリスさんが見ているのは昔の私だけ。今の私なんて、きっと眼中にもない。
「えぇ。頼もしいです。」
なら今だけは、彼の目に留まっててほしい。
現在の私がどうなっているのか、この時代の私はどうなっているのか。元の世界に、私は無事戻れるのか。そんなことを考えながら頬を撫でる潮風が鬱陶しく感じる初旬。
私はもう一度、あの夏を経験する。
——!
———はん!
「日本はん!!」
「……ん…ぇ…お、大阪さん、?」
目が覚めて見た光景は、大阪さんが私を心配そうに見つめ、体を支えてられているものだった。周りには自分の私物が散乱しているし、さっきまであったはずの眠気やら目の潤いやらの疲労もない。
「そうや!日本さんこないなとこで寝とるもんだからビックリしてん、ほら!片付けは自分がやっとくんで、はよ行ったってください!飛行機に間に合いまへんよ!」
「ひ、飛行機…?」
「? 今日はイギリスさん家で世界会議やる日やろ?はよ着替えたってや!これ手土産! 」
彼は意味の分からない単語を発するなり、私の服を脱がし、手際よくスーツを着せ紙袋と必需品を持たせた。そう思ったら、すぐさま自分を外に放り出し、急かすように扉を勢いよく閉めた。
「…。」
私は今、どうなっているのでしょうか。
周りは夏と思えないほど寒く、なんなら周りには雪がしんしんと降り積もっている。
私は、さっきまで自室に籠もっていたはず。なんなら、大阪さんも私の心中を察してくれていたのに扉を開けるだなんて考えられない。しかも外へ放り投げられるときたものだ。
意味も分からず立ち尽くしていると、後ろから自分の名前を呼ばれた。
「あー!やっと見つけたあるよ日本!連絡しても返信こねぇから心配したある。」
「…ぇ……あ…ちゅう、ごくさ、」
「ほら!早くしねぇとアヘンの会議に間に合わなくなるあるよ!早く乗るよろし。」
どうして、ここにいるはずのない中国さんが今、私の名前を呼んで、私の手を引いて、私の心配をしてくれているのか、ずっと分からないことばかりで頭がパンクしそうだった。さっきあんなことがあったばかりなのに、頭が追いつけるわけがない。
彼に無理矢理手を引かれ、なにやら早い乗り物に乗せられた。前には知らない人が丸い輪っかを持っている。
「こ、これは何ですか…?」
「阿?これって、普通にタクシーあるけど……まだ寝ぼけてるあるか?」
中国さんと目が合った。それから逃げるように窓へと視線を移す。見えた外の光景は、私が知らない町で、私達が乗っているであろう乗り物が周りにも走っていた。町も人もカラフルで四角い建物が空までそびえ立っていて、今にも首がつりそうになる。
「どうしたあるか、おめぇ、今日なんか変あるよ。」
眉が八の字のままの私に、彼は優しく頭を撫でた。
「……変なのは、中国さんです、」
それしか言えなかった。だって、中国さんは私の顔だなんて見たくないはず。会いたくないはずなのに。
見たこともない建造物やありもしない貴方の姿に、一瞬だけ幻覚だと思ったが幻覚にしてはリアルすぎる。頬を抓っても目の前にある現状は変わらない。
「中国さん…あの、」
「?」
「…今、何年ですか…?」
「何年って、2025年ある。」
「…。」
どうやら私は、時間を超えて未来に来てしまったらしい。
にわかに信じ難いが、外の風景と現状を見たらそうとしか辻褄が合わない。額の汗が気持ち悪い。まだ怯えている私を気遣って、彼は取り出したハンカチで私の汗を拭うと額に手を添えた。
「熱は…ないあるね。会議には出れそうあるか?」
あぁ、やっぱりこの人は変わらない。いつまで経っても世話好きな人。
「中国さん、私…!」
「……」
そこで口を継ぐんだ。これは今の私がすることじゃないから。目の前にいる中国さんは未来の中国さんで、私が謝るべき中国さんじゃない。きっと謝っても、その謝罪にはなんの意味もないだろう。
「…餃子が、食べたいです。」
「ふ、ふは、!まったく、何言い出すかと思ったあるよ。しょうがねぇから昼飯は一緒に食べてやるよろし。」
彼はくしゃりと犬を撫でるように私の頭も同じように撫でる。
(未来の私……どうやったらこんなにも仲が戻るんですか、 )
彼の笑い声が車内に響く。許されたなんて思ってはいけない。分かっているけれど、今この瞬間だけはこうしていたい。
体が揺られるまま、私達は空港へと向った。
あれから空港につくと、いろいろ中国さんに助けてもらいながら機体に乗った。道を歩く度、迷いに迷いまくり、揚げ句の果てには迷子にならないようにと手を繋いでここまで来た。この前まで引きこもっていた身には過酷すぎる。イギリスさんのことだけで精神が不安定だったのに、急に早足で振り回されるなんて…。
「会場は…ロンドンあるね。しばらくはこの状態だからゆっくり休むがよろし。」
「えぇ、そうさせていただきます…。」
飛行機という乗り物は空を飛ぶものらしいが、浮遊感があまり感じられない。これが未来の技術なのかと感心しながら窓の外を覗いた。
(…こんな便利なものがあったら、すぐにイギリスさん家へ行けるのに。)
枝分かれしたように、自分の脳裏には目覚める前に書いていたイギリス宛のメッセージカードが浮かんだ。届ける気も無いくせに書いた自己満のカード。持っていたはずなのに、それも未来へ来たと同時に何処かへ行ってしまった。過去に戻れるかも分からない。作り笑いもいつまで保つか分からない。きっと、イギリスさんを目の前にしたら泣いてしまうかもしれない。
「……中国さん、仲直りってどうすればいいんですかね。」
「? なんあるか急に。そんなん思ってることを相手にちゃんと伝えればいいある。案外、相手も同じこと思ってるもんあるからな。」
「もう経験済みじゃねぇあるか。」
「そう、でしたね。」
中国さんは分かってない。
きっと未来の私と仲直りできたのは中国さんが優しかったからだと思う。
ではもし、相手は自分と同じ気持ちではなかったら、その時は?
諦めるしかないのだろうか。
これから何百年と
何千年と
何万年と
ずっと。
ずっと見ていた。
ずっと憧れていた。
ずっと、貴方の言う相棒という肩書きに相応しい国になれるようにと努めてきた。
なのに、貴方が怒る理由が分からなかった。
この時代には、不謹慎なこともサラリと言えてしまうような、随分と平和な時代になったらしい。今の私は、貴方と肩を並べられるような国になれたのでしょうか。
それとも、
7月17日
「日本、着いたぞ。」
船内から外の様子を見に行ったイギリスさんは、戻ってくるなり私にそう言った。彼に手を引かれるまま甲板に出ると、懐かしい光景が広がっていた。
「思っていたより短い船旅でしたね。」
「あぁ。お前と居たからかもな。」
「…また御冗談を。」
彼は紳士に私へと手を差し伸べる。それに応えて船から降りると、遠くからアメリカさんが手を振ってこちらに駆け寄ってきた。
「Hey!待ってたよ2人共!」
「お久しぶりです。アメリカさん。」
「久方ぶりだな。またお前横にデカくなったんじゃないか?」
「また君はそれかい?冗談は眉毛だけにしてくれよ。」
昔と同じ会話。それはいい意味でもあったし、悪い意味でもある。このまま事が進めば、日英同盟は破棄され四カ国条約が結ばれる。未来は変えてはいけない。私の身勝手な行動1つで未来に支障をきたしては駄目だから。
あれからいろいろあったけれど、結果的には貴方とまた仲良くなれている。今の私には未来が分かる。昔みたいに泣きべそをかいたりなどはしない。きっと、大丈夫。
「日本、昔これ好きだったろ?」
きっと、
「日本のそういうとこ昔っから全然変わんねぇよな。」
きっと…
「昔教えてくれただろ?ちゃんと覚えてっから。」
きっと……
仲良く、なれているのでしょうか。
今思えば、未来の私達より同盟当時の方が貴方はよく笑ってくれました。それが、答えだったのかもしれません。私は、今も昔も貴方と同等なんかじゃない。
そんなに、昔の私が恋しいですか、
「……イギリスさん。」
「? 何か言ったか?日本。」
「…いえ、なんでもありません。」
もし今日、無理矢理にでも貴方との同盟を未来まで継続できたなら。
今の私も見てくれますか。
「さ!早速だけど、日本とイギリスには日英同盟を破棄してほしいんだ。」
唐突に始まった世界会議で、アメリカは顔色1つも変えず淡々と話を進める。フランスは冷や汗を垂らしながらも何も言わない。目を丸くし、驚いているのはイギリスだけだった。
「……おい。そんなん聞いてねぇぞ。いくらなんでも急すぎる。」
「急でなにが悪いんだい?無駄な建前を長々と話すのは君も嫌いだろう?」
「…日英同盟は破棄しねぇ。話が飛躍しすぎだ。ちゃんと理由も話してもらわねぇと納得いかねぇ。」
「君ばっかり話すぎなんだぞ、日本の意見も聞こうじゃないか!」
たった1言言うだけ。いつも言ってる1言。震える手足は100年前と変わらない。だけど、未来を変えてはいけない以前に私達は国だ。政治的な話に私情を挟んではいけない。取捨選択は仕方ないことなんだって。
「…私は、アメリカさんの意見に賛成です…。」
嬉しいのに、切なくて泣きたい気持ちだった。 泣きたい気持ちを抑え込んで唇を噛み締めた。 未来を変えてはいけないだなんて言って言い聞かせて、結局私は未来に逃げているだけ。
「…な、日本もそう言ってるんだし、なにも日本との関係が無くなる訳じゃない。四カ国条約って形で継続するんだし。」
「あれ?そうだったっけ?」
「お前はいっつも大事なこと忘れるよね、」
イギリスは日本と目を合わせた。瞳に漂う哀情は失せることなく、泣き虫は今も変わってない。
反射的にそっぽを向いてしまった。
「…日本がいいならいい。」
あ、
「そうかい?じゃあ決まりだね!」
「…。」
その後の事は、昔と同じであまり記憶には残らなかった。1回目の頃よりかはマシ…だと思う。
これで、良かったんだ。
「…イギリスさん。」
ワシントン会議後、フランスとアメリカは会議室を退出し、私と彼だけが残った。口を開かない彼の席と相対になるように座ると、彼は一瞬こちらを見たが、また目線を下に戻した。
「廃止になったことは残念でしたが、貴方との関係が無くなるわけではありません。強国のお二方と同盟が結べて私の地位も安定しますし、これからもよろしくお願いしますね。」
そう彼に言ってみたが返事を返してはくれなかった。まるで深い竪穴に小石を投げ込んだみたいだった。空気は重くなる一方で、一方的に話しかけても駄目だと口を閉じたまま窓の外を見た。もうすっかり辺りは暗くなって、月が薄っすらと透明なカーテンから被さっている。
数分後、眠気を感じていると彼が口を開き、その声で目が覚めた。
「……言ったじゃねぇかよ、俺と同盟組んで嬉しかったって…。どうせお前も俺を踏み台にするんだ…強固と繋ぎができりゃ誰でも良かったんだろ……。」
彼の声は微かに震えていて喉が狭まっているような、そんな声だった。腕で隠れているため顔は見れないが、泣いているというのはすぐに分かった。
そういえば昔にも、こんな事があった気がする。今よりも怒鳴って、私も感情的になって、四カ国条約を結んだ後も話すことなんてなくて。
貴方はそんな事を勘違いしているんだなと、初めて知った。今さら気づくなんて虫が良すぎるなんて言われるかもしれないけど、それなら貴方が昔の私しか見ないのも無理はない。
「…えぇ、たしかに。そうかもしれません。」
そう日本が言うと、イギリスは勢いよく顔を上げ感情の向くままに日本の胸ぐらを掴んだ。
「俺はっ、!お前のこと、ちゃんとっ、」
沈黙の中、イギリスの涙が机にポタポタと落ち、胸ぐらを掴んだ手も緩くなっており、顔も声も覇気がなくなっていた。何も言えないままの彼の手を両手で優しく包み、自分の首から机へと置いた。
「きっと私はこれから、貴方と違う道を歩むこのになるでしょう。」
「そしたら、100年後、迎えに来てくださいね。私のこと。 何もかもはじめからだなんて言いません。私はずっと、待っていますから。」
私は静かに微笑みながら言うと、彼を置いて会議室から出た。後ろから私を引き止めようとする彼の声が聞こえたが、足を止めることはない。
追いかけられなくて良かった。
そんな安心とは裏腹に目尻が熱くなって、鼻の奥がつんと沁みて、無駄に早足になって、夜空を見た。
夏の最後に見たのは、あの日と変わらない水に溺れた星空だった。
私の2回目の夏は、白い光によって静かに幕を閉じた。
前略。イギリスさんへ
その後、生活にお変わりはありませんか。 この前は失礼な態度を取ってしまいすいませんでした。感情的になってしまったを許してください。 急遽の事、心中お察し頂けると幸いです。
今年の冬は、このご時世で伺いもならず、春に差し掛かりそうです。ですが、また貴方とご一緒に園庭で紅茶を飲む時が来るのを心待ちにしております。貴方が淹れてくださる紅茶が1番美味しいですから。
まだまだ寒い毎日です。くれぐれもご自愛くださいませ。
八月十九日 日本
万年筆を握った手は力が入らず、目から零れ落ちる涙はカードにシミを作った。
(届ける気も無いくせに…、)
そう思っていても手が止まることはなかった。
「日本、日本。」
「……はぃ、」
「着いたあるよ。それにしてもよく寝てたあるな。」
「え、あぁ…そうですね、」
まだ夢かもというオチに希望を抱いていたが、そんな小さな希望は儚く散った。外はもう夕暮れ時で空がオレンジ色に染まっている。
機内に放送が流れ、日本は中国と飛行機を出た。
何日か振りのイギリス。
正直、こんな早くここに戻って来るだなんて思いもしていなかった。慣れた足取りでスタスタと何処かへ向かっていく中国の後に着いていき、建造物をチラホラと見渡す。
「時差とか大丈夫あるか?」
「あ、えぇ。随分寝ましたし。」
「ていうか、英國には手土産持ってるのに我には無いんあるか?」
「…すいません。」
「そんな辛気臭い顔すんなある。冗談あるよ。」
ここではもう何百年前のこと。だけど私には時代の流れに追いつけるはずもなく、中国さんとあんなことがあってからか、受け答えが昔のようにできない。喉にずっと堅物が詰まっているような、口内が渇いていて上手く喋れなかった。
日本の顔色が悪いことに気がついた中国は会議場へ向く足を止めた。落ち着きがない日本を気遣うように眉を細め、顔を合わす。
「…どうしたあるか?昨日といい、おめぇちょっとおかしいかあるよ。やっぱり、熱とかあるんじゃ、」
中国がそう言いかけた時、その言葉はあの人の声によって塞がれた。
「よ。長旅ご苦労だったな。」
心臓の鼓動が耳に入ってくる。呼吸が荒くなった。恐る恐ると後ろを振り返ると、案の定、イギリスが2人の後ろから手をふってこちらに寄って来ていた。
「まったくあへん。お前の家遠すぎあへん。もっと近くで開催するよろし。」
「無茶言うなよ、」
2人が何かを話しているが、私にその声は聞こえてこなかった。まるで居場所がないみたいに、自分と2人の間に渓谷があるみたいに壁を感じる。私は俯いたまま会話が終わるのを待った。
「…中国。他の奴らに会議は遅れるって伝えといてくれ。」
「…いいあるけど、もう夜なんだから早く帰ってくるあるよ。」
「当たり前だ。」
珍しく、中国はイギリスの頼みを素直に聞き会場へ向った。こちらが心配なのかチラホラとこちらを振り向いている。心配するな、早く行けという意味でイギリスは顎を会場の方向へと動かすと中国が拳を出そうとしたのは気の所為だろう。
「なぁ、日本。」
中国の後を追おうとする日本を引き止めるかのように声をかけた。
「星を見に行かないか。」
その提案に日本は戸惑いながらもコクリと頷いてくれた。
イギリスさんの突発的な提案を拒否できるわけもなく、手を引かれるまま彼の後をついて行った。進むにつれ建造物が少なくなり、緑が多い土地にまで来た。
何処に連れていくつもりなのか。彼は口を開くこともなく、森の奥へと進んで行く。
未来だからといって仲直りしているのが当たり前ではない。元同盟国とは言え、もともとは強国のイギリスと極東にある小さな島国だ。対等になれるなんて思ったことは1ミリもない。
だから彼の意図が分からず、私は連られるがまま森へと進んで行く。
数分後、月光だこうか。木と木の間から漏れた光が私達の1部を照らす。その間からやっと森を抜けると、私は目を輝かせた。
「覚えてるか?この場所」
「…えぇ、もちろんです。」
森を抜けた先はいつかの丘だった。私達を覆う夜空はあの日に負けないぐらい満面な星空が広がっている。無数のきらめく光が、それはまるで夢の景色のように、ただひたすらに美しい眺めだった。私の目は星空で埋め尽くされる。見惚れている自分を見た時、彼はふはっと笑みを零した。
「喜んでもらって良かった。お前最近元気なかったろ?」
「…はい。」
自分じゃない。頭では分かっているのに、反射的に応えてしまった。きっと未来の私に言ったであろうに。 自分に嫉妬しているようじゃ、私ももう歳だなと眉をひそめた。
夜風が気持ちいい。真冬で心身は冷えるはずなのに胸の底は温かかった。きっと、こんな経験はしばらくなかったからだろう。
どういう原理なのかは分からないけれど、私は今未来にいる。身近で血が流れることもなく、身内と裏切り合い、殺伐とした関係を続ける必要もない。なにより貴方と笑い合うことができている。私が望んでいた世界そのもの。
(ずっと…このままでいいのに。)
_____ポロッ。
夜空を眺めながらそんな事を考えている時、微かな音と共に自分の指先に違和感を感じた。ふと目を向けると、自分の先が白い灰になって崩れていた。
タイミングと相まってか、神様が逃げるなと言っているような気がした。
(…分かってますよ。私がいるべき場所は、ここじゃないことぐらい。)
彼に悟られないよう、月明かりに照らされた彼と目を合わす。まるでどうした?と言っているように、彼は少しだけ顔を傾けた。ブロンド色の髪をなびかせている彼の姿はまるで絵画のようだった。
「最後に、聞いていいですか。ずっと気掛かりだったこと。」
私の言葉になんの疑問も持たず、「あぁ。」と返事する彼に日本は儚い笑みを口元に浮かべ、問いた。
「イギリスさんは私との手紙のやり取り、嫌でしたか?」
「…。」
静寂な夜は2人を包んだ。少し驚いたように上げた彼の眉はすぐに八の字に変わり、温かい笑顔を私に向けた。
「…知ってるか。俺があんなに手紙出したの、お前ぐらいだったんだぞ。」
はにかみながら笑う彼に目を白黒させた。なんで?という思考が顔に出ていたのか、先ほどよりも笑みを深くした彼は、昔話をするみたく、照れくさそうに話し始めた。
「最初は返信なんかいらなかったんだ。心の保険みたいな関係が続くのもいやだったし。でも、お前から返信がきた時、どうしようもなく嬉しかったんだよ。」
「毎回、お前宛に書くのが楽しかった…。」
耳や頬、うなじを赤く染める彼が愛おしかった。顔を反らして隠しているつもりなのだろうけどバレバレなところもすべて。
露骨だけれど本音を言うことが稀な彼がそう言ってくれたことが、 自然に笑みがこぼれるほど嬉しかった。
「私もです。」
もしあのカードがあの時、貴方に届いていたら私達の運命は何か違っていたのだろうか。
そう思ってももう遅いのは分かっている。私はもうすぐ貴方とは逆の道へと進んで行く。欧米へ、敵国へカードを送るなんて頼みは到底了承されないだろう。
それで良かった。
こんな私でもやっと諦めがつく。
そう思っていたのに、自分の涙腺は緩くなって仕方なかった。
意識が遠くなるのを感じる。右目の視界には白い光しか映らなくなった。もうすぐ私は戻るのだと、花弁が舞うように散っていく体を見て察した。そんな私を丸くした目で見ながら立ち尽くす彼に笑顔を向けた。きっと、ちゃんと笑えてる。もうここに心残りなんて無いから。
もしもう一度、私の世界で貴方と会える日が訪れたのなら、その時は、
「私も、貴方宛に書く時が1番好きでした。」
また貴方と星降る丘で笑いたい。
2人の間に白い光が生まれた。
私はもう一度、あの冬を経験した。
白い光が眩しくて、顔全体を腕で覆いながら目をつぶっていた。 ふとした瞬間に、足元が急に冷たくなったのを感じた。 反射的に目を開けると、私は砂浜に寝転んでいた。
(……なにがなんやら…、)
園庭の次は砂浜か、と意味がわからない現状に呆れながら、目を閉じながら寝転んだ。 足元を冷たくした正体が打ち寄せる海水だと分かっても、立ち上がる気力は起きなかった。 手の平を空に向け額に置き、目を開けたらいっぱいに映る夜空の星がうっとうしかった。会議のことなんて頭には無く、情けない気持ちと劣等感に苛まれながら、私は夜空を眺めるだけ。
静かな浜辺にいるおかげで、街の方から聞こえてくる音や声が自然と入ってくる。音の大きさからして、やっと現代に戻ってこれたのだと胸を撫で下ろした。
(神様は何がしたかったんですかねぇ、)
そんな事をツラツラと考えていると、近くで自分を呼ぶ声が聞こえた。
「に、日本…。」
寝転がったまま声が聞こえてきた方向を見てみると、イギリスさんが白い息を吐きながらこちらを見ていた。
「お前、大丈夫なのか?突然消えたと思ったら、んな遠くに…。」
息切れしているせいで声が紡ぎ紡ぎになっていた。そんな疲れるまで私を探してくれていたのかと思うと、あんなことがあったというのに嬉しくて仕方なかった。上半身をゆっくりお越し、顔だけを彼に向けた。
「大丈夫ですよ。考え事をしてただけです。」
「…心臓に悪い事すんなよな、消えたかと思ったんぞ。」
「ふふ、私は消えたりなんかしませんよ。」
彼は溜息をつきながら私の隣に腰を下ろした。波の音が心地よく、瞼が重くなる。安心したからなのか、自分の頭がクリアになり会議の事を思い出した。
「というか、会議は良いんですか?私ならまだしも、イギリスさんはホスト国でしょう?」
私の言葉で思い出したのか、彼は「あー…。」と空をに視線を上げた。
「なんかどうでも良くなった。遅刻することは中国に言ってるんだし、なんとかなるだろ。」
彼は腕を空へ上げて体を伸ばしながら言った。「悪ガキさんですね。」なんて笑いながら言えば、「お前もな。」と彼は煽り顔で無邪気に笑ってくれる。こんな他愛もない会話をするのは何年振りだろう。彼の笑顔を見たのも懐かしい気がする。
「どうせならどっか行くか?久しぶりの俺ん家なんだから、化身直々に案内してやるぞ。」 「ふふ、贅沢な提案ですね。では……」
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また貴方とご一緒に園庭で紅茶を飲む時が来るのを心待ちにしております。貴方が淹れてくださる紅茶が1番美味しいですから。
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「…紅茶が飲みたいです。」
私の1言が予想外だったのか、彼は私を覗くように首を傾げた。
「そんなんでいいのか?お前そんな紅茶好きじゃないだろ?」
「イギリスさんが淹れてくださった紅茶が好きなんです。察してください。」
そう言い聞かせるように言えば、彼は「ま、まぁ、俺の紅茶は別格だからな!」と満更でもなさそうに頬を赤らめた。そういえば、タイムスリップ先でも似たような台詞を言っていた気がする。やっぱり、彼は昔と変わらない。
貴方があの日、私に薔薇の花束をくれた時と、今の私は、きっと何か変わってしまったんでしょうね。
「今の私は、お嫌いですか…、」
気がついた時には口からポツリと呟いていた。 私はほんの少し微笑んだ。そしてその3分の一センチほどの儚い微笑みは涙が出ないようにするためという理由でしばらくのあいだ口もとに留めた。 彼の顔を見れば、こわばった顔が空間に凍りついたように私を見ていた。国と国の面倒事は政治事にも繋がってしまう。これ以上めんどくさいことにならないようにと、何事も無かったように立ち上がった。
「さて、そろそろ行きますか。これ以上はドイツさんに怒られてしま」「日本。」
あからさま過ぎたのがいけなかったのか、逃げようと話題を逸らす私の言葉を彼は遮った。イギリスさんも立ち上がったのを見て、どうしたものかと、とりあえず時間を確認するため腕時計がしてある腕を上げようとした。だがその手は、時間を確認する前に彼に掴まれた。
「お前が知ってる通り、俺は人より何倍も不器用だ。」
彼は喋りながら海の方へと私を連れていく。 「い、イギリスさん、?」と声をかけても彼の足は止まらず、結局黙って海の方へ連れられながら話を聞くことになった。
「本音で話すことなんか稀だし、いつも思ってることと真逆なことが口に出るのが普通なんだ。めんどくさい奴だの、生きづらい性格だなんて言われることもあるよ。そんなこと言われても否定なんかしないし、自分の性格が好きって言ったら嘘になる。」
「なぁ日本。俺は駄目な奴なんだ。だからお前が何思ってんのかも分かんねぇし、何が不満なのかも分かんねぇ。自己中だって思われんのは嫌だけど、このままお前に誤解されてる方がよっぽど嫌だ。」
「無理にとは言わねぇ。だけどお前が良いなら、思ってること全部話してくれ。」
彼が足を止めて私の方を向いた時には、目尻に涙が溜まっていた。流れないように眉間にシワを寄せているけど意味を成していなかった。
あぁ、本当にずるい人。
あの時涙を流した彼に何も言えなかったように、今も私の声から出るのはそれに応える言葉だけ。
私は今も彼の泣き顔に弱い。
「…ずっと、貴方の背中を見てきました。ずっと、貴方の言う相棒という肩書きに相応しい国になれるようにと努めてきました。」
「でも、貴方と肩を並べれるようになったと思う夜は一度もなかった。」
「それでも良かったんです。私にとってイギリスさんと笑い合える日々が幸せだったんですから」
「同盟が無くなってしまった時は確かに悲しかったです。でも、これで貴方と肩を並べられるんだって思ったら、嬉しくて。」
「だから、貴方が怒る理由が分からなかった。貴方が、昔の私に固執する理由が分からなかった、きっと今の自分は眼中にも無いんだって、考えたら、胸が、痛くて、………駄目ですね…言いたいことが上手く出てきません…。」
いつの間にか私の目からは涙がポロポロと溢れていた。言葉も上手く繋げられなくて、零れ落ちた涙は打ち寄せた波に攫われた。彼の顔を見ることもできないまま、私は涙を袖で拭った。
「なぁ、日本。俺は、どっから間違えてたんだろうな。」
「間違えていたのは私の方です。本音も言えず、ずっと貴方に無理をさせてきました。」
波の音が一層大きくなったように感じた。これから会議に行くかもしれないというのに、海に浸かった靴になんて意識がいかなかった。私達は手を繋いだまま、砂浜を歩いていく。
「ほら、次はイギリスさんが全部話す番ですよ。打っても構いませんから。」
泣いている私ばかり気遣われるのが嫌だったから彼に話題を振った。
「打つなんてしねぇよ。髭じゃあるまいし…でも、そうだな、愚痴ぐらいは吐かせてくれ。」
彼は一息だけつくと、薄く笑いながら話してくれた。
「…ずっと1人でいるもんだと思ってた。誰かが俺を求めてくれるだなんて思いもしなかったんだ。だからあの日、お前が俺を選んでくれたことが何よりも嬉しかった。」
「でもあん時に、お前と一緒にいるのは俺じゃなくてもいいって言われた気がして、俺にはお前しかいないのに。俺だけ浮かれてたみたいで。……悔しかったんだ。お前が他の奴らにばっかり目を向けてることが。 こんな感情を知るぐらいなら昔のままで良かっただなんて思っちまったんだよ。」
「でも、それが嫉妬だって気付いたのは破棄した後だったんだ。皮肉な話だよな。」
自分の方を振り向き、おかしそうに笑う彼を私は丸くした目で捕らえた。まさか自分が思っていたことが的中するとは思っていなかったし、ましてやそれが嫉妬だったなんて、驚くなと言われる方が無理だ。
振り返った彼は体もこちらに向けた。
「つまりだな、俺が言いたいことは、」
繋いだ彼の手が微かに強くなり、優しく両手を握られる。顔を見れば、ほんのりと甘く微笑んでいた。
「俺はお前が好きだ。」
それは、大切にしている胸の内をそっと打ち明けるかのようなだった。不意打ちの告白に体が止まった。頬が火照り胸が脈打つ。信じられなくて、嬉しくて、なんでっていう気持ちもあって、さっきまでハッキリ聞こえていた波の音なんか耳に入ってこなかった。
「…愚痴、だったんじゃないんですか、」
「途中まではな。」
「お前が言ったんだぞ?全部って。」
「…全部すぎです…。」
「バカ。まだまだ言いたりねぇよ。これから俺のこといっぱい知ってくれよ?Darling.」
「ムシがよすぎませんか、私、100年も悩んでたんですよ…?」
「俺も100年拗らせてきた。お互い様だな。」
顔を赤くしながら頬を膨らます私とは相対的に、彼の表情は前と変わることなく、頬には満足そうな笑いの皺がニンマリと刻まれている。そんな嬉しそうな顔を見ていたら、なんだかどうでも良くなってしまった。
「ごめんなさいね。せっかくの会議でしたのに。」
「いいって。どうせ顔合わせのための会議なんだ。サプライズも遅くなった訳じゃないしな。」
「ビーフシチューでしたっけ?楽しみです。」 「手土産は何持ってきたんだ?」
「ふふ、お楽しみです。」
「お前焦らすの好きだよな。告白の返事だってしてくれねぇし。」
彼は唇を尖らし、あからさまに拗ねた表情を浮かべた。あぁ、そういえば。そう気づけば、自分より高い顔の位置を近づけるために彼のネクタイを引っ張った。
瞬間、彼と唇が重なった。
「…これで、伝わりましたか、?」
ガラにもないことをしたせいで照れくさく伏し目がちになってしまった。顔中から一面に湯気が湧き出すような気がする。
「菊。」
そう自分の名前を呼ばれたことに驚き顔を上げた私に、彼はまた口づけを交わした。
入れられなかった自己満設定
まず今日本と昔日本の意識が入れ替わってしまった原因は2人の求めてたイギリスが原因。
今日本は昔ではない今生きている自分を見てほしかったから、そうであった昔イギリスを求めた。
逆に昔日本は日英同盟が破棄され、その上火に油を注ぐような発言をしてしまったことでイギリスとギスギス関係に。そのため、今この感情や現状から逃げたく、未来ではあの人と上手くやれていると現実逃避&時の流れに任せればいい。という考えで未来イギリスを求めた。
これが2人が入れ替わった原因だったらいいな。
ちなみにワシントン会議後の2人のやりとり。今日本は昔、何故かは分からないが自分の発言でイギリスを怒らせたということは分かっていたので2回目は少しオブラートに包んだ。そのおかげで2回目のイギリスは日本の胸ぐらを掴んだだけで済んだ。(?)
だけど1回目はズバッと「強国のお二人と繋がりを持ててよかったです。これで私の政治での地位も上がりますし」(これで貴方と対等な関係になれる)(←これ大事)って言っちゃったから、イギリスが誰でも良かったと思うのも無理はない。だから昔イギリスは昔日本のことビンタまでしちゃって、意地張って何も言わず自分家に帰って泣き崩れてほしい。そりゃ、(これで貴方と対等な関係になれる)とか喜んでたのに本人からビンタされたら流石の昔日本も泣くと思います。いや泣いてほしいです。すれ違い島国尊。100年も拗らせてんの尊。
コメント
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今回も最高です、、、!
ちょこましゅまろ
343
フルリール
1,956
33
じぇらーと。
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