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うふ
短編もとてもいいですね!面白かったです!
僕には幼なじみがいる、名前は鈴木千夏、毎日ずっと10数年年間隣にいる、僕の唯一無二の親友だ、今日は…というか今日も千夏と一緒に学校に行く予定だったんだが、どうも様子がおかしい、いつもなら僕が千夏の家に着いた瞬間、見透かしたかのように家から出てきて、まだ少し寝惚けている僕の頭を起こすように一言、「おはよう」と大きな声で呼びかけてくる
そんな人なのに、今日は珍しい事になかなか出てこない為、呼び鈴を鳴らしてみる、すると家の中から大きな声で「ごめん、今日うち休む。」と聞こえてきた、突然の事に驚きながらも返事をして、1人寂しく通学路を歩いた。
千夏と居なかった次の日、今日は行けるのかな、と期待して向かった千夏の家だが、朝から留守のようで今日もまた1人寂しく学校に向かう、何があったのかとてつもなく心配だが、悔しい事に千夏についてを知る術は僕には無い、今日も1日が長そうだ
少しの期待を抱きながら千夏の家に向かうと、いつものように千夏が出てきた、だがいつもとはどことなく、いや全然違う千夏だ、目の下に濃いクマを貼り、セットすらしなかったであろうバサバサ髪の毛で出てきたのだ。
「久しぶり、千夏、最近どうしたのか聞いても良い?」
「うん…歩きながら話そうか」
彼女からはいつもの『おはよう』も無く、千夏がいるのに元気が出ない、変な感じだ
「突然だけど私、妹が居るんだ」
え?と心の中で呟く
「知らないよね、話した事なかったよね。1つ下の妹なんだけど、その妹が突然倒れちゃってね、それで病院駆け込んだり、入院になったりで、大変だったんだ、それで今日も午前中だけ、最近はごめんね」
色々急に話された為、戸惑いを隠せず少し狼狽えてしまう。
「そういう事だったんだ、ごめん妹さんが居たなんて初めて知ったからびっくりしちゃった。妹さんは大丈夫なの?」
「わかんない、わかんないんだ…」
そっか、治るといいね。と返事をして、慣れない無言が続いたまま学校に向かった
朝学校に着いてすぐ、千夏は保健室の先生に呼ばれて教室を出ると、数分後に小走りで戻ってきて、荷物の整理を始めた、どうやら妹さんの容態が急変したらしい、僕の用意が終わった頃にはもう行ってしまっていた、もちろん妹さんも心配だが、あんなに毎日バタバタしている千夏も同じぐらい心配だ。
千夏の居ない生活が続き、精神的に少し参って来た頃、保険室の先生が教室に入ってきて、僕目掛けて話し始めた、内容は、放課後に近くの中央病院で千夏が待ってるとの事だった、僕は何があったのか心配で、その事について放課後までずっと考えていた。
僕は絶句していた。病院に着いてすぐ、僕の名前が呼ばれて案内された先は、綺麗に折りたたまれた布団と、その上に置いてある手紙だった
気になったので拾い上げてみると、千夏の字で、僕宛ての手紙だった、
「久しぶり、急いで書くから字が汚くなっちゃうと思うけどごめん。単刀直入に言うと、私は死ぬんだ、前に妹について話したでしょ?私の妹は生まれつき病気で、今まで何とか耐えてきたんだけど、この間突然悪化して、誰かと心臓を交換するしか無かったの、ほんとに、ごめん、早く言えなくて、一緒に学校に行けなくて、一緒にお昼ご飯も食べれなくて、部活の帰りも、夜の電話も、ずっと出来なくてごめん。君にこれを早く伝えてしまうとどんな手を使ってでも私を助けようとするって、自分の命を奪ってでも助けるって、分かってたんだ、だから最期にしたんだ。手術が上手く行けば、うちの妹は来年後輩として入ってくるよ、そこでお願いがある。どうか、どうかうちの妹を、幸せにしてあげて、私が、お姉ちゃんとして出来なかった分の愛情を、君が注いであげてほしい。私からの、1人のお姉ちゃんからの、1人の幼なじみからの、1つのお願い。必ず守ってね。」
その手紙を読んだ後、僕は手紙を握りしめたまま走り出した、ぐしゃぐしゃの顔で、ひとりぼっちで、ただ、思い出を巡りたいという一心で、小さい頃千夏とよく遊んだ、団地と隣接した公園、僕の傘が壊れて、一緒に相合傘して帰ったあの路地、冬の寒い日に同じココアを買ったあの自販機、そして、脳裏に焼き付いて離れなくなった千夏の家。
「おはよう!新入生の子?」
どうしたらいいか分からず戸惑っているように見えたその女の子に話しかける
「1年生の教室ならあっちにあるよ。」
「人を探してるんです。私を、幸せにしてくれる人を探してるんです。」
突然の事に驚いたが、その声は僕を待たずに話し続ける。
「私の名前は鈴木千冬、鈴木千夏の妹です!」
そう元気に話すその子は、どこか千夏に似ていて、驚いて働かなくなった僕の頭を起こすように響いたその声に僕はどこか懐かしんでいた。