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1,910
甲斐田晴side
月曜日、仕事から帰ったら
いつもあるはずの「おかえり」の
声がなかった。
不思議に思って玄関から部屋の中へ
進んでみると
そこにアニキの姿はなかった。
でも荷物はそのままだったから
どこかへ出掛けているだけなのかもしれない。
それでもアニキが出掛けるなんて
今までなかったことだから、胸騒ぎがした。
いつも通り2人分のご飯を用意したのに、
胸騒ぎは的中したのか
その日アニキは帰って来なかった。
翌朝、ラップがかけられたままの
晩ご飯をもしかしたら今日は帰ってきて
食べるんじゃないかと思った僕は
冷蔵庫に仕舞って仕事に向かった。
職場に着いても
なかなか元気が出なかった僕を心配してか
同僚の長尾たちが話しかけてくれた。
景「はるぅ!どうした?」
藤「なんか元気ない?」
晴「大丈夫だよ。長尾たち見たら
ㅤ⠀ㅤㅤ⠀元気なってきた!」
景「えー?本当?嬉しいけど、心配だなー。」
藤「話聞いてあげるから
⠀ ⠀ お昼一緒に食べよう?」
晴「長尾たち⋯ありがとう。」
長尾たちのおかけでとりあえず
気持ちが浮上して
仕事は差し支えなくできた。
そのままお昼になって
社食でご飯を食べながら
アニキのことは友達ってことにして話た。
でも、長尾たちに説明しながら思ったけど
僕とアニキの関係って友達なんだろうか?
友達って名前知らないとかある?
長尾たち話たことで
余計に考え込む羽目になって
しまったような気がする⋯
景「晴はその友達が出て行ってしまったから
⠀ ⠀元気がなかったわけね。
⠀ ⠀でも、まだ1日なんでしょ?
⠀ ⠀今日は帰ってきてるかもよ?」
晴「そうだよね。僕の心配しすぎかな。」
藤「晴くんは寂しがり屋さんだからね。
⠀ ⠀なんか心配だよ。
⠀ ⠀僕たちが晴くんの家に
⠀ ⠀住んであげようか?」
なんて弦月はいつもみたいな
とびきりの元気をもらえる笑顔で
言ってくれたから
僕も嬉しくなって抱きついてしまった。
その時ふと見えた弦月の携帯の画面。
晴「新しいゲーム出るの?」
藤「そう!僕たちのやってるゲームを
⠀ ⠀作ってる 会社の会見で
⠀ ⠀新ゲーム発表されたんだ。」
ほらと言って弦月が見せてきた画面には
新作ゲームの会見の画面とゲームの内容の
プレゼンが映っていた。
晴「長尾たちにオススメされてやったら
⠀ ⠀面白かったからこれも面白いのかな?」
藤「面白いと思うよ!また一緒にやろうよ!」
嬉しそうに弦月が言うから
一緒にやろうと思った。
僕も詳細を調べようと思って
自分の携帯でそのゲームのことを調べてみたら
会見に映る見知った顔。
晴「ねぇ、二人とも。知ってたら
⠀ ⠀教えて欲しいんだけど
⠀ ⠀このゲーム会社の社長さんの
⠀ ⠀名前知ってる?」
藤「一代でここまで会社大きくした人だから
⠀ ⠀有名だよ!
⠀ ⠀共同経営してるみたいだから
⠀ ⠀2人いるんだけど
⠀ ⠀不破さんと三枝さんだよ。
⠀ ⠀下の名前は忘れちゃったけど。」
晴「ありがとう。弦月。」
妙に落ち着いている自分がいた。
本当はもっと動揺したり焦ったりするのが
普通なのかもしれないけど
アニキがプライベートなことは
聞かないことと言ったのはこう言うことだと
どこかで気が付いていたからかもしれない。
午後の業務も頭の中が冴えて滞りなく出来た。
ここまで冷静な自分に逆に笑ってしまう。
少しの期待を持って帰宅したが
やはりアニキの姿はなかった。
冷蔵庫のご飯もそのままで
アニキの買った荷物もそのまま。
まだアニキの匂いがするベッドで
うつ伏せになっていたら
鼻の奥がツンとなって目頭が熱くなった。
晴「この荷物どうするの⋯っ
⠀ ⠀⋯帰ってきてよ⋯アニキ⋯⋯」
多分アニキは二度とこの家には帰ってこない。
そう確言した途端に寂しくて
涙が止まらなくなった。
アニキと過ごした時間は長いわけではなかったのに
いなくなった途端ぽっかり穴が
空いたみたいな
気持ちになった。
それだけアニキがいることが
当たり前のようになっていて
朝起きたらおはよう、
行く前のいってらしゃい
帰ってきたらおかえり、
寝る前のおやすみ。
いつでもアニキからの挨拶があって、
笑顔があった。
ご飯も美味しいって食べてくれるし、
綺麗に掃除もしてくれてお皿も洗ってくれる。
だけどちょっと雑なところもあって
靴下は裏返しに脱ぐし、
食べ終わったラーメンの汁を
まだ飲むって置いて置いたり
物の位置はここじゃなきゃダメって言う
謎の拘りがあったり。
そんなところも可愛いなって思ったり。
晴「なんで行く時なんも
⠀ ⠀言ってくれなかったのかな⋯」
顔を上げて上を向いてみても
涙は止まらないままで。
アニキのお気に入りだった
ぬいぐるみを抱きしめながら
あの日、アニキを拾った日と
同じくらい泣いた。
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