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照が本社へ異動して、一週間。
支社では「照がいない日常」が少しずつ当たり前になり始めていた。
でも。
辰哉にとっては、まだ慣れない。
────────
朝。
スマホの通知で目が覚める。
6:32
💛「おはよう。今日は早い会議だから先に行ってくる」
辰哉は寝ぼけながら笑う。
💜「おはよ。朝ご飯食べてね」
数秒後。
💛「もう食べた」
💜「早っ」
そんなやり取りをしてから一日が始まる。
離れていても。
毎朝の「おはよう」は欠かさなかった。
────────
昼休み。
🧡「深澤さん」
康二が向かいへ座る。
🧡「照にぃ元気?」
💜「元気そう」
🧡「毎日連絡しとる?」
辰哉は少しだけ笑う。
💜「……まあ」
🧡「その顔やと毎日やな」
💜「バレる?」
🧡「分かりやすすぎる」
辰哉は苦笑した。
隠しているつもりなのに、康二には全部見抜かれてしまう。
────────
その頃、本社。
照は会議室を出るなり、大きく息を吐いた。
「岩本さん」
後輩社員が近付いてくる。
「このあと打ち合わせもう一本お願いします」
💛「分かった」
本社は支社より忙しい。
気付けば時計は夜八時を回っていた。
照はデスクへ戻ると、真っ先にスマホを開く。
💜「今日もお疲れさま」
一時間前に届いていたメッセージ。
照の表情が自然と柔らかくなる。
💛「今終わった」
💛「辰哉は?」
すぐに既読が付く。
💜「もう家」
💜「今日も遅かったね」
💛「ごめん」
💜「謝らなくていい」
💜「ちゃんと帰ってきてくれればそれでいい」
その一文を読んで、照は静かに目を閉じた。
“帰ってきてくれれば”
その言葉が嬉しかった。
────────
金曜日の夜。
一週間ぶりのビデオ通話。
画面に辰哉が映る。
💜「疲れてる顔してる」
💛「ばれた?」
💜「ばれる」
💛「辰哉は?」
💜「元気」
そう言うものの、照には少しだけ無理をしているように見えた。
💛「ちゃんと寝てる?」
💜「寝てるよ」
💛「嘘」
💜「なんで分かるの」
💛「目の下」
辰哉は慌てて画面から少し離れる。
💜「見ないで」
💛「見える」
二人で笑う。
笑い声が重なるだけで、距離なんて感じなかった。
────────
通話も終わりに近付いた頃。
💛「来週」
💜「うん?」
💛「土曜日だけ休み取れそう」
辰哉の表情がぱっと明るくなる。
💜「ほんと?」
💛「帰れる」
💜「じゃあ駅まで迎え行く」
💛「ありがとう」
久しぶりに直接会える。
たったそれだけで、一週間の疲れが全部吹き飛ぶ気がした。
画面越しに笑い合う二人。
その約束だけを楽しみに、それぞれの一週間を頑張ろうと思えた。
そしてその頃。
本社では一人の社員が照へ声を掛けていた。
「岩本さん」
「来週の土曜日なんですが、急な案件が入るかもしれません」
照の笑顔が、一瞬だけ止まる。
コメント
1件
うわあ、この終わり方……「来週の土曜日」のところで心臓が止まるかと思ったよ。辰哉くんの「駅まで迎え行く」ってあの弾んだ感じがすごく愛おしくて、それだけにラストの急案件が胸に刺さる。離れても毎朝の「おはよう」を欠かさない二人のリズムとか、康二くんに全部見抜かれちゃう辰哉くんの滑稽さとか、日常の描写が丁寧だからこそ、あの一瞬の笑顔の停止が重く効いてくる。次が気になる……!