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〇恵子と玄帥の暮らす家
幸せな新婚生活。
しかし、恵子は時折、不安そうな表情を浮かべる。
N「結婚後、恵子の提案でしばらく子どものことは保留にした。
玄帥もその提案を快く受け入れた。まずは5年。
5年暮らして玄帥に女の影が見えなければ、そのときに子どものことを考えるつもりだった」
恵子(付き合ってたときだって、一度も浮気なんてしなかったもの。きっと大丈夫……)
N「しかし、結婚してわずか1年。恵子は玄帥の不倫を知った」
〇回想シーン
仕事帰りの恵子がホテルから出てくる玄帥と京子の姿を見てしまう。
恵子(……嘘……今日は仕事だって言ってたのに……)
立ち尽くして、2人の後ろ姿を見ていることしかできない恵子。
〇恵子と玄帥の暮らす家
帰宅後、恵子は自室で横になっていた。
恵子(あーあ……でも、いざこうなってみると「やっぱり」って思っちゃうのよねぇ……)
N「やるせない思いがある一方で、どこか諦めのようなものもあった。
しかし、心のどこかに『どうにかなる』『どうにかしてみせる』という自信のようなものもあった。
もうここまで来てしまったのだから、あと少しぐらい騒がず動じず自分は生きていける
……そう思いながら恵子は玄帥との暮らしを続けた」
表面上は変わらずに結婚生活を続ける恵子。
家では一緒に食事もするし、休日には夫婦でデートをすることだってある。
N「周りの目には理想的な夫婦に見えていたことだろう。
実際に、玄帥は恵子との時間もしっかりと作っていたし、記念日には必ず
プレゼントを忘れずに用意していた。恵子にはそれが滑稽だった」
玄帥からプレゼントを受け取り、形だけ笑顔を浮かべる恵子。
玄帥「恵子、いつもありがとう。愛してるよ」
恵子「こちらこそ、ありがとう」
恵子(……不倫してるくせに)
N「結局、玄帥は8年もの間、不倫を続けた」
ひとり風呂に入りながら、恵子はこれからのことを考えていた。
恵子(まさか8年も続くとはねぇ……。あーあ、私ももう38かぁ~……。
あの人、きっと私のことを何も知らない能天気な馬鹿女くらいに思ってるんでしょうねぇ……。
まぁでも、そうやって相手が油断してるときに動いたほうが有利か)
風呂から上がると恵子はすぐにスマホで浮気・不倫調査に強い興信所を探し始めた。
翌日には正式に依頼し、そこから2週間ほどで結果が出た。
〇興信所
恵子が興信所の調査員とテーブルを挟んで向かい合っている。
調査員「……この通り、証拠のほうはばっちりです」
恵子「ありがとうございます」
調査員「ただですね……少し想定外のこともありまして」
恵子「想定外? 何ですか?」
調査員「……大変申し上げにくいのですが、旦那様にはもうひとりお相手がいるようでして」
恵子「はい?」
調査員「もちろん、こちらの女性についてもお調べしました」
調査員が資料を広げ、恵子に説明を始める。
それを聞いているうちに恵子はおかしくなってきて、とうとう笑いを堪えきれなくなってしまった。
調査員「あの……奥様、大丈夫ですか? 少し休憩を挟みましょうか」
恵子「ふふふ、ごめんなさいね。大丈夫です。ここまでくると何だか面白くなってきちゃって」
恵子(もう絶対に別れるって決めてたけど、ここまでくるとほんっと清々しいわね)
N「8年も続いている夫の不倫相手はキャバクラで働く女。
その証拠固めをしていたら、思わぬところでまた別の女が釣れてしまった。
その女というのが夫の異動先の部下。
しかも、婚約中で結婚を控えているというではないか」
恵子(婚約中でもうすぐ結婚とか、今がまさに幸せの絶頂じゃない。
そんなときに浮気? 不倫? それとも本気なのかしら……)
〇恵子と玄帥の暮らす家
恵子は自室で、興信所から受け取った資料を見直していた。
恵子(……最初はキャバクラ女の実家にでも乗り込んでやろうかと思ってたけど、予定変更ね。
ここまできたらとことん混ぜっ返してやるんだから。そう……これはイベント。
私たちの夫婦関係を思いっきりぶち壊す盛大なイベントなの。楽しまなくっちゃ)
恵子は楽しげに資料の中にあった証拠写真に写っている玄帥、京子、唯を順番に指さしていく。
恵子(……それにしてもこの3人、これからどうなっちゃうのかしらねぇ。
まぁ、こっちの女の婚約者には申し訳ない気もするけど、こんな女だって
結婚前にわかったんだから万々歳よ。
さぁて、まずはあの人の会社に乗り込んでいって、慰謝料も請求して……
ふふふっ、ほんとに楽しくなってきちゃった。
あの人、結局、誰を取るのかしらね)
N「……当事者になどなってやるものか。恵子は『部外者』として高みの見物を決め込んでいた。
恵子が当事者になるとしたら、それは玄帥に引導を渡すその一瞬だけだ。
しかし、恵子はその一瞬さえ弁護士に任せようかとも考えていたのだった」
恵子(3人とも、首を洗って待ってなさい)
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