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設定は前回同様。日本視点
二人で茶でも飲んでゆっくり話そう。
実を言うと私は彼と話してみたかったのだ。文化的にも栄えていて国力も私よりもある、そして何より人柄が良い。彼からお誘いが来たのは数日前のことで、私は喜んでその誘いを承諾した。
正直なところ、彼のところ(大陸)の茶は苦い。最近飲料として飲まれるようになったらしいが、私のところでは薬としか認識していなかった。初めて飲んだ時は驚いたが、何度かこうして会って色々しているうちに慣れてきた。きっと国内に流れるのも時間の問題だろうと思う。今日の菓子は私が持ち寄ったものだ。口に合うように市で探し回ったのだが…。
天気もよく、少し暑いかと思ったが涼しげな風が時折吹くので息苦しくもなく過ごしやすい。彼は私の話に耳を傾けながら和かな表情を浮かべている。
買ってきた菓子もどうやら口に合ったらしい。大成功である。最近の情勢や流行りもの、近況など話題は尽きなかった。しかし、時間というのは早いもので、そろそろお開きと言ったとこだ。最後に、と思って私は口を開いた。
「そういえば…」
不思議そうな顔。整った顔だなあと見蕩れそうになったが、そうなると話を忘れてしまうため彼には申し訳ないが少し目線をずらした。
「貴方って意外と私の事好きじゃないですか?」
一瞬目を見開いたかと思ったら彼は噎せてしまった。突拍子もないことを言ってしまうのは昔からの悪い癖である。
「な、なぜそう考えたんだ。」
「いや…。違かったら申し訳ないのですが、貴方が私のことを褒めてくださった時にそう思っただけです。表情?と言いますか、なんというか。」
彼は少しだけ赤面しながら言った。
「俺は、そんなに顔に出ているのか?」
隠しているつもりなのに、と彼は付け足した。
「案外分かりやすいですよ。」
「あまり人を揶揄うな。…まあ、周りからは『お前は表情が変わらないから何考えてるか分からない』と言われたものだが… 。こうも言われると、少し恥ずかしいな」
ふふ、と笑う。「好きか?」に返答こそないが、今の言葉が「はい」と物語っている。少し不器用な方だと思う。
「そういえば、仮に好きだとして、貴方の好きはどの『好き』なんですか?」
「好きという言葉にそんなに種類があるのか?」
知らなかった。文章を読んでいると「友情」「恋愛」「慕う気持ち」など、数え切れない程の種類の好きという感情があるのだが、彼はそれを知らないのか。
昔『詩を詠むことはあっても、感情の乗せ方が下手だと言われたことがあってな。最近は唐の詩をまとめたり読んだりして色々勉強している』と言っていたな、と思い出す。
分からない、なら教えるしかない。私も、分からない事は色々教えて貰って、取り込んできたのだ。
「例えば、好きな食べ物に対する好きという感情と人に抱く好きという感情が違うのは分かりますか」
「馬鹿にしているのか」
「そんなことは無いですよ!ただ、感情の乗せ方について話していたことがあったじゃないですか。その時に、こういう違いについて考えたことがあるか気になっただけです」
「よく覚えているな…。確かに、『好』は『好』、『悲』は『悲』としか認識はしていなかったが、それが関係しているのか」
彼は話すのが好きだ。それも、議論などの会話形式のものが特にそうらしい。証拠に手が止まっている。人間熱中すると物事に集中するあまり手が止まるのは至極当然のことだ。可愛いところもあると思った。
「はい。感情について噛み砕けば表現の幅が広がるわけです。人に対して抱く『好き』の中にも色々種類があるんですよ」
「それは、何となく分かるが。それは、友としてか恋人としてかという話だったりするのか?」
流石、話の分かる方だ。ええ、と頷くと彼は少し考える様子で下を向いた。
「何かありましたか?」
「いや、俺はその境界とやらが良く分からない。国として生きていく過程でそういった感情は余計だと切り捨てたせいだからだろうか。」
「無理に分かる必要はないんじゃないですか?何事も経験、じゃないですか?私は分からなくてもとりあえず試してみるという事で文化を発展させてきた側なので。何かそれと似ている気がするんですよね。」
「…君は詳しいな」
詳しいか詳しくないかと言えば判断に困るが、少なくとも彼よりは長くこの世にいる。それに私は人間性であったり内側に焦点を当ててしまう癖がある。それが、このような性格を生み出しているのかは謎ではあるが。
「……こう長ったらしく説明したのは理由があってですね。」
「理由?」
「単純ですよ。貴方が私に抱く『好き』はどの『好き』なのか気になっただけです」
まだ君を好きだとは言ってないだろう、とムッとした顔で言うがそれこそ答えになっているのではないか?と思う。
「…それは分からない。が、今日聞いたことは興味深かった。持ち帰って考えてみようと思う。」
「ではまた今度答えを聞かせてください。あと、貴方の詠んだ詩も気になります。是非それも持ってきてくれると嬉しいです」
「あぁ。詩も…そうだな、持ってこよう。次会う時までには人に誇れるまでにしたいものだな。」
「本当ですか!楽しみがまた増えました」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
こうして茶会というよりも座談会に近いようなものが終わった。気づいたら空も良い感じに色ついている。
漢詩は最近あまり詠んでいないが、さっきの話で少し詠みたくなった。構想というのは思いつけと念じれば念じるほど思いつかない。そして何より今詠んだら熱烈な恋の詩とかになりそうで黒歴史になったら困る。それに、今緊張から抜けたからか、ひどく緩んだ顔をしているのが自分でも分かるからなるべく人に会いたくない。
「困ったな…。」
一人呟いた。
コメント
1件
もうめっちゃ良かった…!「好き」に種類があるって話、すごく深い。彼が噎せるところとか、赤くなるところとか、人間っぽくて可愛いよな〜。二人の距離感がじわじわ縮まってて、次会うときの答えが楽しみすぎる。詩も気になる!🔥