「ナリア・アトワール・ハリクス公爵令嬢、今日をもって、貴様との婚約を破棄する!」
「…はい?」
私はナリア・アトワール・ハリクス。王国三大貴族であるアトワール家の一人娘だ。
そして、目の前にいるこの馬鹿は、このハリクス王国王太子、アロン・ラハル・ハリクス殿下。私の婚約者だ─
さっきまでは。
そう、私は公衆の面前である夜会で 婚約破棄されたのだ。すでに周りはざわざわとしている。
(どうしてだろうか)
自分で言うのもなんだが、容姿は悪くないはずだ。
そんな私の今の姿は、純白の髪を、ハーフアップにし、翡翠でできた鳥の髪飾りをして、唇に少し紅をさし、自分の瞳と同じ瑠璃色のドレスを纏って、耳と首にダイアモンドのアクセサリーをつけていた。
私が、なぜ婚約破棄を言い渡されたのかをもんもんと考えていると、目の前から声が聞こえた。
「なぜ、婚約破棄されるのかわからないという顔をしているな?」
「はい。まったくわかりません。」
そう言い返すと、殿下はふんっと鼻で笑うと、
「とぼけるつもりか?」
と、言ってきた。私が、
「とぼけるもなにも、見に覚えがございません。」
と返すと、
「俺 は知っている。貴様、俺と親しいラナに嫉妬して、ラナを虐めただろう。」
「…は?」
まったく見に覚えがない。
殿下の言うラナとは、金色の髪と桃色の瞳をした、私たちが学ぶ王都第一学園に転校してきた平民の少女だった。
すると、殿下の後ろからラナが出てきた。
愛嬌のある可愛い少女だ。だが、平民出身であるためか、常に距離が近く、馴れ馴れしい。今も、殿下の腕を抱き締め、瞳を潤ませながら、
「はいぃ。ナリア様に物を隠されたり、転ばされたり、いろいろな酷いことされましたぁ。」
という、まっかな嘘を語った。
「私は、ラナさんの物を隠したりなんてしてません。それに、転ばされたと言いますけれど、あなたが勝手に転んだんじゃありませんか。」
「ふぇぇ。正直に謝って下さいぃ。謝って下さったら、許してあげますから。」
本当にイラつく。
怒りを抑えていると、
「おい、ナリア、ラナに謝れ。そして、ラナには様をつけろ。」
「はい?」
殿下は、私を嘲るように笑うと、
「今日から、ラナと俺は、婚約するんだ!」
意味がわからない。平民と婚約?それも、婚約者に冤罪をきせて婚約破棄?馬鹿にも程がある。
(婚約破棄して正解だったかも)
そう思いながら、
「はぁ、わかりました、婚約破棄を受け入れましょう。 」
と言い、去ろうとしたそのとき、
「おい!待て!」
と、後ろから殿下の声が聞こえた。
「なんでしょうか」
と振り向くと、
「貴様は、未来の王妃を虐めた。よって、貴様を娼館送りとする!」
周りが一気にざわっとする。
「死刑にしなかっただけありがたいと思え」
「アロン様優しい~素敵ですぅ」
ざわざわとした夜会で一人、私は絶望していた。
コメント
1件
初投稿です。これからよろしくお願いいたします。応援してくだされば幸いです。