❤️俺はAランチにしようかなー、阿部はどうする?
メニューを見ながら、宮舘が聞いてくる。
ラジオ局の近くのイタリアンレストラン。
二人は正午を大分過ぎた時間に、向かい合わせで座っている。
阿部の喉はカラカラで、さっきから愛想笑いをするだけで精一杯だ。
そうとは知らない宮舘は、メニューを隅々まで楽しそうに読んでいる。
💚涼太、なんだか嬉しそう
❤️ああ、うん。初めて来る店のメニュー読むの好きなんだよね
💚そうなの?
そんなものかなと阿部が聞き流していると、
❤️翔太が喜びそうなメニューがないか、つい、気になっちゃうんだよね
と言った。
頭をがん、と殴られたような衝撃が走る。
わかっているはずなのに、てらいのない宮舘のまっすぐな言葉は容赦なく阿部を傷つけた。
💚はは。翔太は幸せ者だね
思わず声が上ずるが、宮舘には幸いにも気づかれなかったようだ。
宮舘の惚気は止まらない。
❤️そうだといいんだけど。翔太、好き嫌い多いから
💚……
嬉しそうに話す宮舘を見て、阿部の胸はちくちくと痛んだ。
頃合いを見て、店員が注文を取りに来た。
阿部も適当に注文を済ませる。
下調べせずに入ったこの店の料理は期待以上に素晴らしく、宮舘は一品一品作り方を想像しながら食べている。一方の阿部は食が進まず、ほとんど味がわからないまま食べていた。
❤️阿部、もし残すんだったら俺食べてもいい?
💚い、いいよ
子供みたいだが、間接キスになるかと思うとどきっとして思わずどもってしまった。
宮舘は特に気にせず、阿部の残した皿を受け取った。
❤️うん、こっちも美味しい
💚そう。よかった
食後のコーヒーの段になって、阿部は口火を切った。
💚涼太に聞いてほしい話があるんだけど
❤️なに?
💚涼太の心の中に…その、他の選択肢ってないのかな
❤️ん?
💚翔太と本当にずっと一緒にいられるのかな…って
❤️……あ?
💚ちがう、悪い意味じゃなくて…
まずい。
誤解させた?
阿部が気づいた時にはもう手遅れで、宮舘はすっかり不機嫌になってしまった。
❤️なら、どういう意味?
💚ごめん、本当にそういう意味じゃないんだ
❤️阿部は応援してくれてると思ってたよ。それは俺の勝手な勘違いだったんだな
💚ちが……っ
❤️泣くな。泣いたからって言わなかったことにはならないよ
そう言われても、阿部は自分でも涙を堪えることができない。
掛け違えたボタンがあっという間にどんどんずれていく。
頭に血が上ってしまった宮舘には、もう何を言ったらいいのかわからない。
阿部はただ泣くだけだった。
やがて二人は喧嘩別れのようになり、阿部の告白は散々な結果に終わってしまった。
夜になり、阿部は近所の公園に岩本を呼び出した。
昼間のことを涙ながらに伝える。
岩本は黙って、肩を貸した。
💚もうやだ。自分がいやだ
💛いいよ、いくらでも聞いてやるから
泣きじゃくる阿部を支えながら、岩本は胸に何とも言えないもやもやを抱えていた。
そして、この泣いている友人のために何かできることはないかと頭を巡らせ始めた。
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はわわわわわ…(?)