TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する




「……っ、どうしよう……どうしよう……っ」



 暗い室内から聞こえてきたのは、啜り泣く音と共に小さく響いた、か細く震えるAの声でした。

 いつも気丈なAがこんなにも弱っているだなんて、それだけで只事ではないことが起こっているのだと分かり、その瞬間、私の身体に緊張が走ったのは言うまでもありません。



「……ねぇ、どうしたの? 電気も点けないで。とりあえず、電気点けるよ」



 言いながらスイッチに手を触れようとした瞬間。突然立ち上がったAによって阻まれた私は、その目的を果たすことなくその手を宙に彷徨わせました。



「ダメ!!! 点けないでっ!!!」


「ちょ……っ、どうしたの?」


「お願いだから電気は点けないで!! 影が……っ、影が来ちゃうから!!!」



 あまりの迫力に気圧されつつも、私はAに言われるがままに暗い室内に腰を下ろすと、一体今Aの身に何が起きているのか、その現状を確かめるべくAから話を聞かせてもらうことにしました。


 Aが言うには、それまで外でしか見かけることのなかった“影”が、三日前についに自宅にまで現れるようになったのだそうです。そして、今までただそこに存在しているだけだった“ソレ”は、まるでAの影に触れようとしているかのように、ゆっくりと動き始めたらしいのです。

 その話に半信半疑ながらも、怯えるAを一人にしておけるわけもなく、私はその日は朝までAの傍に寄り添うことにしました。



 ──翌日。私はその“影”についての情報を調べる為に、あらゆるキーワードを用いて、ネット上で検索をかけてみることにしました。

 というのも、Aはどうやらここ三日程外出することもできずに、ただジッと光の届かない部屋に閉じこもっているだけの生活を送っているらしく、そんな異常な暮らしぶりを聞いてしまっては、このまま放置しておくわけにはいかないと思ったのです。


 けれど、そう簡単に“影”についての情報が集まるわけもなく、半ば諦めかけていたその時。偶然にも私の目に留まったのは、あるオカルト掲示板だったのです。もしかしたら、ここでなら何か“影”についての情報が得られるのでは──。

 そんな淡い期待を胸に、私はオカルト掲示板に書き込みをしてみたのです。



132 :名無し:2022/06/23(木) 20:18:47

影”に追われたことのある人はいますか?


133 :名無し:2022/06/23(木) 20:24:02

影って、何の影?


134 :俺氏:2022/06/23(木) 20:26:50

俺は毎日影に追われてる。俺とヤツは一心同体だからな


135 :名無し:2022/06/23(木) 20:27:30

影に追われるって何


136 :名無し:2022/06/23(木) 20:30:12

友達が言うには、物体のない“影”だけの存在に付き纏われているらしいんです。


137 :俺氏:2022/06/23(木) 20:32:48

気にするな。影に付き纏われてるのは俺も一緒


138 :名無し:2022/06/23(木) 20:32:50

物体がないって、そんなことあるの?


139 :名無し:2022/06/23(木) 20:35:26

物体がないならそれは影とは言わない



 どうやらまともな返事など返って来る気配もなく、次々と書き込まれてゆくコメントを眺めながらも、私は画面越しに意気消沈してしまいました。ですが、わらにもすがる思いで書き込みをしていた私は、それでも暫くそのスレッドの様子を見守ることにしたんです。

 すると、二時間程が経った頃でしょうか。既に別の話題へと話しが流れていた中、そのコメントは何の前触れもなく突然書き込まれたのです。



168 :名無し:2022/06/23(木) 22:08:32

>>136

それ、多分お御影様だと思う


169 :名無し:2022/06/23(木) 22:09:50

>>168

それって何なんでしょうか?



 私は急いでそのコメントに返信を書き込むと、再びそのスレッドは“影”の話題へと戻ったのです。




この作品はいかがでしたか?

46

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚