💚「では、寮で一通り挨拶は済ませたと思うけど、渡辺翔子さんと宮舘涼太くんです、これからよろしくお願いします」
阿部先生の紹介で、名前が書かれた黒板の前で俺たちは頭を下げる。
ぱらぱらと昨日のメンバーから拍手が上がった。
先生が言ったことは本当で、全校生徒は俺たちを入れて7人。
そんなことが許されるのかと思ったら、ここは特殊な高校だからそれが罷り通るとのこと。
おそらく佐久間グループの力で法律とか色々曲げてやってるんだろう、知らんけど。
生徒数が圧倒的に少ないので、授業は全教科全学年合同だ。習熟度も違うため、ほとんど阿部先生の家庭教師状態だった。
学科に関しては、各自与えられた参考書をそれぞれがほぼ自習のような形で勉強していく。
そして体育や美術などは同じ課題をみんなでこなすといったスタイルのようだ。
だからみんな異様に打ち解けて仲が良かったのか。
しかし、距離が近いということはそれだけバレる確率も上がるということだ。
俺は気を引き締めて授業に臨んだ。
❤️side
💙「ぐう……」
翔太があっという間に寝ている。
もともと勉強が苦手な俺たちだ。授業はさっぱりわからない。配られた難しめの参考書には何が書いてあるのかほとんどわからなかった。
これでは眠くなるのも当然だ。
あまりに無防備な寝顔をこちらに向けている翔太の唇の色が、いつもと違ってうっすらピンク色なのは付けているリップのせいかな…。
翔太はもともと綺麗な顔立ちだとは思っていたけど、女装させてみたら、あら不思議、そこらの女子高生の中に入れても引けを取らないほど可愛かった。いや、そこらの女子高生の中に混じっても抜群に可愛いかもしれない。
ななめ前の席の深澤とかいうチャラ男が、ぽーっと翔太を見つめている。
深澤は昨日からやたら翔太に話しかけていた。翔太のいうように、一番気をつけるべきはあいつかもしれない。口も軽そうだし、もし翔太が男だってバレたら騒ぎ出しそうだ。
…それにしても変な学校だな。
編入してくる前に調べてみたが、ネット上にこの学校の記事は一切ヒットしなかった。 名門私立だと伝え聞いていたのに、この現代においても徹底した情報管理がなされているらしい。
なんだかすごく不気味だ。
生徒は7人しかいないし、教師も阿部先生以外見かけない。他には事務員さんと寮母さんが一人ずついるだけだ。
カリキュラムはそこまで普通の学校と変わらないようだけれど、ここは一体何のための学校なんだろう。
🩷「おい、涼太」
後ろの席の佐久間が声を掛けてきた。
❤️「なんだ。いきなり名前を呼び捨てか」
🩷「お前、渡辺と仲がいいのか」
❤️「いいよ。幼なじみだし、付き合いが古いしね」
🩷「ふーん。いいな、そんな友達がいて」
佐久間がほんの少し悲しそうな顔をした。しかしすぐに切り替えて意地悪く言った。
🩷「せいぜい二人仲良く卒業できるといいな」
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