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25 ◇離婚届
私の言葉に❔マークを飛ばす彼。
分かんなくていいって。
「とっても有益なヒントをサンキュー」
「はぁ、そりゃどうも」
何のことか分からない彼は『どうも』を連発するばかり。
「とにかく、美味しいコーヒーいただきましょっ。
あっ、そうだ。立候補ありがと」
そう言うと私の反応に新堂さんは気を良くしたみたいだった。
あ~あ、若い子でも入社してきた日には
私のこと恨みたくなるわよ、新堂さん。
まっ、いっか。
恋人候補なんて、そうそうできるものじゃないし、しかも
本人自ら申し出てくれるなんて、何て酔狂なお方ぁ~。
***********
この頃になると私は夫から休日のドライブなどに誘われても
疲れを理由に付いて行くことはなかった。
情に流されてはいけないと思ったからだ。
そして何度か断ったあとで食事ぐらいはと誘われて
会った。
食事の終わりに私は意を決して彼に告げた。
「いつもご馳走してくれてありがとう」
「いいんだ、俺がひまりと一緒に食事したいだけなんだから」
「それで……」と言いかけたところで夫から手を握られ
「そろそろ、家に帰ることを考えてくれないだろうか。
あぁ、仕事のことがあるよね。君と俺の職場の中間地点で住む家を探してさ」
「滉星くん、そのことだけど、これ……」
私は離婚届の用紙を彼に差し出し言った。