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シェルドハーフェンで殺人事件が発生した。それそのものは珍しくもないものの、内容は少々珍しいものだった。

被害者はギャング組織の構成員だが、頭部を壁に叩き付けられた痕跡が見付かっている。何より衝撃的なのは、頭部はまるで重機でも使ったかのように砕けて原型を留めておらず所持品から何とか身元を割り出せた事である。ギャング同士の抗争によるものであると思われるが詳細は不明。この事件による治安の更なる悪化が懸念される。シェルドハーフェン在住の人は巻き込まれないよう注意することを勧める。幸運を。

~帝国日報より抜粋~

カテリナです。殺人などこの街では日常茶飯事。しかし、何か気になるものがあります。頭の原型を砕くのは身元を隠すためにやる手段ではありますが、所持品から簡単にバレている。素人の仕業でしょうか。

なにより、殺られた構成員の属したギャング組織はリーダーの急死で抗争など起こせる余裕はない筈。それに組織も小さく、夜中に構成員一人を惨殺してまで奪うような価値はない。

……久しぶりに嫌な予感がしますね。うちのシャーリィに関わりがありそうで、今から胃痛が…。

手を貸すべきでしょうね。シャーリィは何かをやるつもりですし、ルミが最近遊びに来ないのも気になります。話を聞いてみるとしましょうか。

シャーリィです。ラメルさんからの情報を待つ間、私とてなにもしないわけではありません。農園従業員の中から心得があるものを選び孤児院を監視させています。準備不足ではありますが、万が一があれば直ぐに乗り込めるように。今のところ動きはないみたいですが…。気にはなりますね、どうしても。そのためか最近は中々寝付けない夜を過ごしています。

「壁にめり込んだ酔っぱらいがそのまま塗装される?シェルドハーフェンは今日も平和ですね」

シスターから頂いた新聞を読みながら私は朝の時間を過ごします。一面が無かったのは気になりますが、シスターの興味がある事が載っていたのでしょうね。私には分かりませんが。

新聞を読んでいると、大剣を磨いているベルが声をかけてきました。

「もどかしいな、直ぐに助けに乗り込みたいが。駄目なのか?お嬢」

「今は我慢の時です。情報を集めて準備しないと、失敗は許されません。戦えるのはベルだけなんです。シスターを頼っても二人だけ。相手の情報を得なければ無謀にもほどがありますし、ルミを助けるなら万全を期したい。ルミには数日だけ我慢して貰います。断腸の思いではありますが…」

「その数日が命取りにならなきゃ良いが…」

「むっ」

ベルの心配も分かりますが、焦りは禁物。私は小娘に過ぎず、戦力はベルだけ。無理をしては全てを失います。人を雇うにしても今回は信頼できる人材を頼りたいので間に合わないし心当たりもない。

ルミを助けた後は私兵集団の組織も視野に入れないと……農園を含む本格的な組織化も考えないといけませんね。知恵者、つまり助言者が欲しいところです。探してみますか。

こうして考えると、自分自身の計画性の無さに苛立ちますね。この街で生きる以上荒事は避けては通れないのに、自衛の手段すら用意していないとは。計画的に物事を進めていればこの事態にも対応できたのに、後手に回るばかり。私はまだまだ世間知らずの小娘らしい。反省点ですね。猛省しなければ。

翌日、ラメルさんが教会へ来てくれました。思ったより早かったのは幸いです。早速応接室でベルと一緒に話を聞くことにします。

「いや、本命の話はまだだがな。別の案件だ。こいつはサービスだが、ここ数日ギャングの奴が殺られてるのは知ってるか?嬢ちゃん」

「シェルドハーフェンでは別に珍しいことでも無いのでは?毎日誰か死んでいると聞きますけど」

「確かにそうだが、それなら話はしないさ。俺が気にはなったのは、犯人の目撃情報だ。犯人は女のガキ。黒髪に白いケープマントを羽織ってたって話だ。ちゃんと裏も取ってある。間違いないだろうな」

「おい、それって確かお嬢の…!」

「…えっ?」

その特徴だと…まさか、ルミ!?

予想外の情報に、私は凍り付き言い知れない不安感を覚えました。

「目撃者の話じゃ、そのガキは被害者の野郎の頭を掴んで壁に叩き付けたそうだ。頭がまるでトマトみたいに潰れるくらいにな」

「はっ!?あり得ません。仮にルミだとするなら私と同じ十二歳ですよ」

「確かに、そんなことが出来る奴なんて居るのか?ましてや子供だぞ」

「これが一人の証言なら戯言だがな、全員同じ証言を出した。直接聞いたんだ、間違いはねぇ筈さ」

「そんな馬鹿な」

大の大人を壁に叩き付けて頭部を粉砕?そんな芸当が出来る人なんてそうは居ない筈。

「もっと詳しく調べるが、先にそれだけ伝えておこうと思ってな」

「心当りがあるのか?ラメルの旦那」

「無いことはない。だがな、もし俺の勘が当たってたらかなり厄介だぞ」

「構いません、追加の報酬も出します。真実をお願いします」

「分かったよ」

そう言ってラメルさんは教会を後にしました。今の状況でルミに会えるかどうか分かりません。下手にあの孤児院の人たちを刺激して何が起きるか分からない以上、ラメルさんを頼るしかない。

当時の私は、何処までも受け身だったのです。経験不足が、あらゆる判断を鈍らせていました。今後悔しても、後の祭りなのですが。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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