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翌日──。

憂鬱な気持ちのまま出社した。


仕事中は有紗と話す必要はないからと思っていたけれど、同じフロアで働いているので関わりはたくさんある。


私から関わらなくっても、有紗の方が話しかけてくれば、それは始まってしまう。


「こちらマフィンの差し入れなので食べてください」


他の社員が旅行に行った差し入れが会社で配られた時。



「あ、安藤さんはダイエット中なので私がもらっておきまぁ~す」


有紗は大きな声でそう言った。


「えっ、なんで勝手に……」


「だって~有紗はこんな甘いもの食べたらすぐ太っちゃうでしょ?ああ、でも関取になれるように頑張ってるっていうんなら、これあげるけど?」



ニヤニヤしながら私を見つめる。


周りの人もお土産が配られたことで、少し休憩モードになり有紗の会話に参加する。


私の一番されたくない関取イジり……。


すると。


「岡本クンやめなさい」


青野部長が入ってきてそう言った。


部長……。

私をかばってくれたんだ。



有紗はこの会社に入ってきたばかり。


前の私はこんなイジられ方していないし、それに一般的に見たらこのイジリは笑えるものではないだろう。


部長がビシっと言ってくれるのかもしれない。

そんな淡い期待を寄せていた時。


「安藤クンは関取を目指してるんだから、お菓子を取り上げるなんてしたらかわいそうだろう」


私は部長の言葉に凍り付いた。

しかし、周りの社員は部長の言葉にドっと笑う。


普段はあまりこういう会話に入ってこない部長が入ってきたことでみなの空気が柔らかくなった。



「キャハハハッ、部長いいノリしてますねぇ」


「部長、最高っす」


みな口々にそう言って部長を盛り上げる。


部長も褒められて気をよくしたのか、嬉しそうに笑っていた。


私の気持ちはまるで無視をして、置いて行かれたようにポツリと立ち尽くす。


「部長は有紗のイジり方が分かってますね~」


さらに有紗に言われて嬉しそうであった。


「そうかね」


「今みたいにイジってあげてくださいね!彼女喜びますから」



そして私の方を向き直ると、取り上げたお菓子を私のところへ戻した。


「とっちゃってごめんね?たくさん食べなね~関取目指して♡」


そう言って去っていく有紗。


私は恥ずかしさと、それからみじめさとで涙が出そうになった。


周りは楽しそうに笑っている。

雰囲気も和んだのかもしれない。


でも……。

このイジり何が楽しいの?


私は全然楽しくない。


それはイジられた側だから?

周りの空気が和むなら我慢しなきゃいけないの?


社内にいるのが嫌になり、いつもはお昼を買って社内で食べていたけれど、今日は外の飲食スペースで一人食べることにした。


食べてるところ見られるだけで何か言われそうで怖い。


今まで居心地の悪さを感じたことは一度も無かったのに、有紗が来てから会社のオフィスは出来るだけいたくない場所になってしまった。



有紗との偶然の再会。


嫌な思い出が蘇ったけれど、もう子どもじゃないから、そんなイジりをいつまでもしてくるとは限らないって期待してた。


けど、有紗は何も変わってない。



あの時からずっと、私のことをオモチャにして遊んでいるんだ──。



高校生の頃――。



当時有紗と仲良くなったのは席が近く、趣味が合ったからだった。


『え、この雑誌毎月買ってるの?私もだよ』


『うそ!?コアな雑誌だから好きな人なかなかいなくて』


『そうそう、分かる』


仲良くなったばかりの頃は、なかなかいない同じ趣味の人を見つけて盛り上がった。


有紗は当時からとても話しやすく明るい子で、内気で友達ができにくい私とは違って誰とでも仲良くなることが出来た。


『ねぇねぇ、里子ちゃんも私たちと一緒に遊ぼうよ』


『いいの?』


『もちろんだよ!』



有紗が中学の頃から仲の良かった亜美と加奈子の2人を紹介してもらって、そのまま仲良くなり、私と有紗はよく4人グループで行動していた。


中学時代からあまり目立つことが好きじゃなかった私は。


『マスカラ切れた〜!授業抜けて買い行く?』


『いいね、里子も行こう』


『えっ!』



いわゆる派手なグループに属している有紗たちとは時々合わないと感じることもありながらも、一緒に過ごしている時間はとても楽しかった。


『里子、雑誌の付録のキーホルダーちゃんと付けてきた?』


『もちろんだよ』


『じゃあこれでプリ撮ろうね!』


『うん!』



最初はお互いに心を許せる対等な関係だった。


しかし、一緒にいるのが長くなるようになってから、私の鈍くささもあってか、だんだんと有紗は私のことをイジってくるようになった。


『きゃ……っ!』


外を歩いていた時、何かにつまずいて転んでしまった私。


顔からいってしまい軽く地面に頭をぶつけた。


『痛た……』

『ちょっ、普通何もないところで転ける?里子ってちょっと鈍くさいところあるよね』


そして顔をあげると有紗は大爆笑。


『きゃはっははっ、何その顔。鼻に泥ついてて熊みたい』


有紗があまりにも面白そうに笑うから、私のその話に乗って言ったんだ。


『ガオー!!』



クマのマネをして声をあげる。


そうするとさらに笑ってくれた。


クマみたいと言われるのはちょっとだけ嫌だったけど、これもなんでも言い合えるようになった証拠なんだって思っていた。


でも、そうじゃなかった。


なんでも言い合えるのではなくて、好き勝手なんでも言われてしまうの間違いだと後から知った。


『キャハハハ、また里子転んだ〜』


最初は鈍くさいことをからかうように。


『里子を落とし穴に落とせた方が勝ちね』



それから、からかいはイジリに代わって、だんだんとエスカレートしていった。



『ふふっ』


『ちょっと笑っちゃダメだって』



そして、ある帰り道。


『どうしたの?』


仲のいいグループで歩いていると後ろからくすくすと笑い声が聞こえる。


どうしたんだろう?


『なんでもないよ』


みんな笑うのを我慢しながら私より少し後ろを歩いている。


それを不自然に思った時。


『きゃはははっ!もう無理、我慢できない』


有紗たちは吹き出すように笑った。


『えっ、どうしたの?』


『本当に気づかないの?』


気づかない?


『これよこれ』


そう言って有紗が指をさしたのは私の背負っていたリュックだった。



『えっ』


顔だけ後ろを振り返ってみると、リュックの取っ手の部分に友達3人分の傘がビッシリとかけられている。



『わっ、なにこれ!』


『もう、全員の傘かけても気づかないんだもん~本当鈍くさすぎっ!』



みんなはお腹を抱えるほど笑っている。



『き、気づかなかった……!もう~やめてよ』


『ごめんって』


みんなのバカにしたような笑いに少し引っ掛かりながらも、私は、その時みんなが笑っているならそれでいいかと思ってしまった。


この時にしっかり自分の気持ちを伝えられる関係でいたら何か変わったのかな?


ヒートアップせずに終わっていたのかな?


ある日、HRが終わりみんなで一緒に帰ろうと下駄箱に向かっていた時。


下駄箱で靴を取ろうとすると、みんながニヤリと笑っている。


なんだろう?



『どうしたの?』


『ふふ、なんでもなぁ~い』



最近多い、なんでもないという言葉。


私にだけ隠されているみたいで嫌な気持ちになる。


そして靴を取り出した時ーー。



『……っ!』



私の靴にはたくさんの画鋲が刺さっていた。


『えっ』


私の反応を見て大笑いするみんな。


『何、これ……』


すると有紗は言った。


『チャチャチャ―ン、どっきり大成功~』


ドッキリ……?


『みんな里子がどんな顔するか見たくて、楽しみにしてたの』


『あの驚いたリアクション良かったな~』


友達が口々にそう言って、ゲラゲラ笑っている。


『これ、お気に入りの靴……』


『みんなで気づかれないように、里子の靴に画鋲刺していくゲームしてたんだぁ』


私が今持っている靴はおばあちゃんが買ってくれた大事な靴だった。


急いで靴から画びょうを外す。


『全然気づかないんだもん、笑っちゃうよね』


『ヒドイよこんなこと……』



どうしてこんなことが普通に出来るの?


私は泣きそうになるのを必死で我慢した。


『ヒドイ?冗談でやっただけじゃん、そんな本気にしないでよ』


『そうだよ、そんな顔されると思わなかったよね〜?』


有紗がみんなに同調を求める。


『冗談ってやっていいことと悪いことが……』


『みんな里子の反応が見たくてやったんだよ。里子がかわいいからみんなイジリたくなっちゃうんだって、愛されてる証拠じゃん!』


ポンっと有紗から肩を叩かれる。


そして加奈子ちゃんまで言う。



『そうだよ~そんな嫌なことされたみたいな顔しないでよ』


なに、それ。私が悪いの?


『今日はみんなで寄り道して帰ろう、ね?』


『うん……』


私はそれ以上何も言うことが出来なくて、その日は泣くのを我慢しながら帰宅した。


小さな穴の開いてしまった靴を撫でながらされたことを思い返す。


ああいうのって、イジリって言うのかな。

愛されてるっていうのかな?


私はすごい嫌な思いをしているのに……

でもみんなはとても楽しそうに笑っている。



いじめなんじゃないか、そう心をよぎるけれど、無視されているわけじゃないし、仲間外れにされているわけじゃない。



みんなで一緒に遊びにも行くし、教室の移動だって必ず呼んでくれる。


私をからかって面白がってるのは、愛されている証拠?


あれくらいなら、我慢すべきなんだろうか。



『……っ』


どうしていいか、分からない。


イジりに対して怒る方が間違ってるの?

私もこの靴も傷ついた。


それなのに、ただのイジりなんだからって我慢させられないといけないの?


それからを有紗たちの“イジり”は当然止むことはなく、ヒートアップしていくばかりだった。



『変顔しようね!』と言われて、変な顔をしたらみんなは決め顔で写っていたり。


その写真を黒板に張られたり、SNSに彼氏募集中と書かれたり……。



小さいことから、大きなことまで。


周りがくすくす笑っていると、何か仕込まれているのかもしれない。


私のことを見て笑っているのかもしれない。


そんな風に過敏に思ってしまうようになった。


『あはははは』



嫌だ、今度は何をされるの?


面白くないのに、みんなが笑うから合わせて笑ったり、ふざけて見たり。


嫌なことを我慢して、何が起きるのか神経を尖らせて一緒にいないといけないなんてもうこりごりだよ……。



『関取~里子~はっきょい~のこった』


『キャハハハっ、もう無理お腹痛すぎ~』



みんなが私をバカにする声をただ聞いている。


私が嫌だって思っていること、何も伝わっていないんだな。


『ほら、里子ものこったってやってよ』


でもそれは……。


『の、……のこった、のこった!』



私がいつまでも彼女たちにノッてしまっているのも原因かもしれない。


嫌なことを嫌だって、伝えていなかったから分からなかったのかもしれない。


このままじゃダメだ。

しっかりと伝えれば、分かってくれるはず。


私はそう思って、はっきり言ってみることにした。


『見てこれ里子半目なんだけど、みんなにも見てもらおっと』


『や、やめて……』


『クラス全員に公開しちゃいま~す』


スマホを回して、クラスの男子にも広まるように見せていく。


『やめてってば』


今日はふざけないで本気で伝えた。


しかし、私が慌てているのを見て、みんなはさらにからかうようにスマホを私の届かないところへ遠ざけた。


『お願い、返して!』



『まぁまぁ見せてあげなって、里子の好きな芹沢くんだってさ、この写真見たら面白い子なんだって思って里子のこと好きになるかも』


『そんな顔見られたくない!』


『とかいいつつ~~?白目で一発芸お願いしてもいいですか~』


『一発芸、一髪芸』


有紗がそんなコールをはじめると、男子も合わせるように「一発芸、一発芸」と言ってくる。


みんな私がいじられているのを見て、イジってもいい人なんだって思ってる。


嫌だ。

私だって普通の扱いをしてほしい。


「や、やめてってば……!」


私が強く心の叫びを伝えた瞬間、クラスは静まりかえった。


正直怖かった。

でも言わなくちゃ。私は嫌なんだって。


みんなに知ってもらわなくちゃ。

そう思って必死に伝える。


「あのね、嫌なことをしてくるのはイジってるの度を超えちゃうと思うの」


私が勇気を持って伝えた瞬間、有紗が黙ってこっちを見つめた。


伝わったかな、分かってくれたかな。

大丈夫だよね、だって友達だから。


そう思って顔をあげると彼女は、ぽつりと言った。


『えっ、ノリ悪……っ』


えっ。


有紗の言葉を皮切りに仲良くしていた女の子たちも合わせて言う。



『本気にしすぎだって、怖いよ里子ちゃん』


『なんかつまない』


口々にそう伝えると、「じゃあもういいや」と言って私の元を去っていった。


そ、そんな……。


一発芸コールは止んだものの、みんなしらっとした顔をして私から目を反らす。


『有紗、ちょっと待って』


『こっち来ないで』


『ねぇ有紗』


『せっかくみんな盛り上がってたのに、雰囲気壊すとか最低』


『本当しらけるよね』


けっきょくその日は誰も私と口を聞いてくれなかった。


私が悪いの?


みんなのノリに必ず合わせないといけないの?


ノリをふられたら絶対にのってみんなを楽しませないといけないの?


どうして……どうして私ばっかりこんな役割をしないといけないんだろう。



ノリが悪かったことで、有紗たちは私を徹底的に無視した。


イジリって、ここまでされるのもなの……?


私の気持ちはボロボロのまま、翌日を迎えた。


『あの、有紗……』


ぽつりと教室で一人でいることに耐えられなくなった私は思い切って有紗に話しかけることにした。


『昨日はごめんね』



分かってほしいという気持ちもあったけど、場の雰囲気を凍り付かせてしまった私も悪かったかも。


ボロボロだった私はそんな風に思うようになった。


彼女に伝えると、有紗はつまんなそうに言った。



『里子がノリ悪いことするから、みんな一緒にいたくないって』


『でも……』


『せっかくみんなが盛り上げてくれたわけじゃん?それなのに、あんなこと急に言ってきたら感じ悪いよ』


『ご、ごめん』


さも私が悪いかのように言う有紗に思わず謝ってしまった。


『でも、反省してるなら許してあげる』


そしてコロッと表情を変えると笑顔で言った。


『いつもの里子らしくみんなに謝りにいこう』


強引に手を引き、みんなの元に連れていく有紗。


『里子が謝りたいんだって。お詫びに腹踊りしてみんなを笑わせてくれるってさ』


『えっ』


『出来るよね?』


有紗の低い声が響く。


もしここでも拒否したら、私は今度こそ本当にひとりぼっちになる。


でも、みんないるこの教室でやるのは……。


「やれないの?」


ドクン。

怖い。


有紗のその言葉とみんなの視線が怖い。


でもやれなかったら、私は友達が居なくなってしまう。


私は息をのむ。


そして、覚悟を決め服をめくり腹踊りをした。


「きゃはははははっ」


「あ~~やっぱ里子最高」


恥ずかしさと、自分の心を必死で殺して、笑顔を作る。


そうすることしか、私はこの場所で生きていけなかった。



こうして私は有紗が求める人間像になることを心掛けた。


フられたらそれに答えて、のって、みんなが私を見て笑えば私も合わせて笑う。



そんな我慢の高校生活を過ごし続け、私の心は少しずつ壊れていった。



それから、高校を卒業して有紗たちと違う進路になり連絡を取る機会は徐々に減っていった。


無理に遊びにいかなくてもよくなり、大学で出来た友達は私のことをイジったりせず尊重してくれる。


自分らしく目立たずに平和に生きていくことで、私は本来の自分を取り戻した。

高校時代のことは昔の思い出に出来る。


そう思っていたのに……また彼女と再会してしまうなんて。



「はぁ……」


なんだか昔の話を思い出していたら疲れてしまった。


仕事中も何か言ってこないか、周りでくすくす笑っていないか、そんなことばかりに意識が向かってしまってまともに仕事が出来なかった。


こんなんじゃダメなのに……。

有紗が来てからどうも上手くいかない。



今日はもう帰ろう。


明日からきちんと切り替えなくちゃ。


「お疲れ様です」


仕事を切りのいいところで切り上げて退社し、オフィスを出て駅までの道のりを歩いていると……。


「安藤さん」


後ろから、誰かに声をかけられた。



「あ、竹内さん。お疲れ様です」


「お疲れ様です」


さわやかな笑顔を向けてくれる竹内悟さんは私よりも2つ上の男性で、うちの会社のマーケティング部に所属している。


しゅっと鼻筋通った顔にキリっとした目元にとても優しくて、紳士的で仕事も出来る人だ。


「一緒に駅まで向かいませんか?」


「あ、はい……ぜひ」


やった。


竹内さんとはこの間、同じプロジェクトを任されることになってから、接点が増え話すようになった。


とはいえ、部署が違うのであんまり話すことは出来ないんだけど、帰り道にばったりあったのはラッキーかも、って思ったり。


「先日デザインしていただいた、商品おかげ様で売り上げ好調ですよ」


「良かったです。ターゲット層を思い切って変更したのが効いたかもしれないですね」


「あれは大きな賭けでしたね。ひとまず安心しました。ありがとうございます」


深々とおじぎをしてくれる竹内さん。


「いえ、私はそんな……」



お礼言われちゃった……。


少し恥ずかしくなりうつむきがちで話していると、竹内さんは私の顔を見るなり深刻な顔をした。


「あ、あのどうし……」


「お元気ですか?」


「えっ」


「ああ、いや。少し元気が無さそうに見えたので……」


照れくさそうに眼を反らす竹内さんにドキンと心臓が音を立てる。


誰も気づかなかったのに。

竹内さんは気づいてくれた。


「ちょっと環境が変わったので……」


優しいな。


「あまり無理はしないでくださいね。僕でよければいつでも話聞きますから]



竹内さんの笑った顔を見ると、すごく安心する。


きっと彼のような人が同じ部署にいてくれたら、頑張れるんだろうな。


「ありがとうございます」


気づけばもう駅前まで着いてしまった。


竹内さんとは逆方向なので、ここでお別れだ。


あっという間だったな……。


「ではまた」


改札を通り、別のホームに向かう竹内さんの後ろ姿を見つめる。


誰にでも優しくて、とても素敵な人。


そんなことを思いぼーっとしていると……。


「へぇ~あの竹内さんっていう人といい感じなんだ」


後ろから低い声で私に伝えてくる有紗の姿が。


「きゃあ!」

「見ちゃった」


──ドクン。


見られた。


嫌だ。

有紗にはなんとなく知られてはいけないような気がした。


「竹内さんって社内でもかなりモテるらしいね!女性社員が仕事も出来るし、ルックスもいい~って、キャーキャー言ってたよ」


「そ、そう」


「でも……里子には無理だよ」


「私は別にそんなつもりは……」


「里子はそういうんじゃないんだからさぁ~、ああいうイケメン狙うのはダメでしょ」



ダメって何?


有紗の言葉にカチンと来て聞き返す。


「そういうんじゃないって、どういうこと……?」


「いい感じの人が出来るキャラじゃないってこと。みんなを笑わせて、イジられてこそ里子でしょ?いつまでも取り繕ってないでさ、会社でも素見せた方がいいよ?」


私は有紗の言葉にかっと怒りがこみあげてきた。


キャラじゃないって何?

変なキャラを作り出したのは有紗じゃない。


私はイジられたいなんて思っていないし、会社でも素を出しているつもりだ。


むしろ今の方が私には苦しい。



「あのね、有紗。それやめてほし……」


「でも竹内さんってほ~んとカッコいい♡ビジュアルだったら私と釣り合うよね~あたし、狙っちゃおうかなぁ」


「えっ」


ドクン。

心臓が嫌な音を立てる。


「ねぇ、里子はお似合いだと思う?私と竹内さん」


「そ、そんなの……」


声が震える。


有紗が竹内さんを……。


すると。


「なぁ~んてね?うそに決まってんじゃん~!」


有紗はくすくすと笑った。


「えっ」


「だって里子がいいって思ってるんでしょ?そしたら協力するに決まってるじゃん!」


「いいって思ってるわけでは……」


「心配しないで、私と里子の仲なんだから。私に任せといて」


有紗は楽しそうに笑いながら、私の元を去っていった。


なんだったの?


竹内さんのことをいいって言ったり、協力するって言ったり。


有紗が何を考えているか分からないよ……。


有紗に竹内さんといる事を見られたのが嫌なことに繋がらなきゃいいな。


そう心で思うほど、苦しい方に向かってしまうことを


私はまだ知らなかった──。


ただイジってるだけだよね?

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