テラーノベル
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私の気持ち……。私……私は……。
「私……アイさんと働きたいです……でも、私にできるか……。」
アイさんは嬉しそうに声を上げ、後ろから思いっきり私に抱きつく。湯舟のお湯が波を立てて揺れた。
「それは、結衣ちゃん次第だけれど……でも、こんなに可愛いんだからできるわよ。じゃあ明日、準備をしてから早速お店に向かいましょ。」
「あ……明日ですか?」
「早い方が良いでしょ?」
私としては嬉しいのだが、お店の都合とかはないのだろうか……? 私はアイさんに手を引かれて湯舟から上がる。そして浴室を出て、アイさんにバスタオルで身体を拭いてもらった。髪の先まで水滴を取ってもらった後、バスローブに袖を通した。
下着を付けずに服を上から羽織るのは少し違和感があるが、質感がバスタオルとほぼ同じであるため肌心地が良い。その後、アイさんにヘアドライヤーで髪を乾かしてもらう。
「結衣ちゃんの髪、とっても良い香り――同じシャンプーを使っているのに、どうしてこんなに良い香りがするのかしら?」
アイさんは乾かし終わった私の髪の毛に頭をうずめて”すんすん”と香りを嗅ぐ。少し恥ずかしいので、急いでアイさんからヘアドライヤーを奪った。
「今度は私がアイさんの髪を乾かす番です。」
「じゃあ、お願いしようかしら。」
アイさんの髪に風を当てると、シャンプーの爽やかな香りの中に、ほんのりとミルクのような優しい香りが広がった。確かにアイさんの言う通り、私とアイさんは同じシャンプーを使用したはずなのに、少し違う香りがする。しかし、アイさんの香りはどこか安心するような――癖になるような香りだった。
アイさんの髪の毛をとかし終わるとアイさんにベッドへと押し倒される。そしてアイさんに抱きつかれたまま横向きになった。私の頭は丁度、バスローブを羽織ったアイさんの胸の谷間に収まるような形で――息苦しさと気持ち良さが合わさり変な気分だ。
私は頭を動かして呼吸ができるように上を向くと、アイさんは私の後頭部を押さえ、バスローブの隙間から伸びたスベスベの生足を私の足にからめながら囁いた。
「今日は結衣ちゃんの事を買わせてもらったんだから、抱き枕にさせてもらっちゃおうかな。」
私は、アイさんに抱きつく力を強める。
「私だって、アイさんの事を抱き枕にしちゃいますから。」
こうしてアイさんの安心するような――優しいミルクのような香りとおっぱいの柔らかな感触に包まれて目を閉じた。
不思議な事にアイさんは今日会ったばかりなのに安心ができる……。朝起きたらアイさんの言っていたことが全て嘘で、私の荷物が全て奪われている……なんてことがあってもおかしくは無いが、そんな事は微塵も感じさせない安心感がそこにあった。
そういえばいつからだろう……こんなに安心して眠るのは……。最近は男に抱かれた後、シャワーで身体を洗いそのままグッタリとして眠りにつくか、もしくは、ネットカフェのリクライニングチェアーの上で窮屈な体制で寝てばかりだった。いずれにしても心を休めて眠ることはできなかった。
トクントクンとアイさんの心音が規則正しく聞こえる。そんなアイさんの温もりを感じながら、私は久しぶりの深い眠りについた。
◆◆◆◆
朝、洗顔やメイクなどの身支度をしていると、アイさんが私の髪の毛をとかしてくれた。私は黒髪のロングヘアーでありボリュームがある癖毛――後ろ髪がウェーブ状に外に広がっている。
アイさんは私の髪の毛をサイドで二つに結んだ。いわゆるツインテールだ。鏡に映る私は今までの私じゃないような――汚れ切った私とは思えない無垢さがそこにあった。
アイさんがニコニコと笑う。
「結衣ちゃん、一目見た時からツインテールが似合うと思っていたの。でも、想像よりもずっと良いわね。もしよければ、今日一日この髪型で過ごさない?」
物凄くボリューミーでウェーブのかかったツインテール――私とは思えない私……。恥ずかしくなりツインテールを掴み口元へと持って行く。
「何だか、少し……は……恥ずかしい。おかしくない……ですよね……。」
鏡の中の私の顔がみるみる赤くなる。アイさんは困ったような表情を浮かべた。
「おかしくなんて無いわ。とっても似合っている。でも、もとに戻した方が良いかしら?」
私は首を振る。
「このまま……このままが良いです……。」
その後、私とアイさんは区役所通り沿いにある雑居ビルへと向かった。場所は3階――「もしかしたら騙されているのかもしれない」とすら思えるような、殺風景なフロアの扉に「Melty Love」と記載されたファンシーなプレートが掛けられている。
扉を開けると昼間だというのに室内は薄暗く、間接照明の明かりだけが輝いていた。どことなく怪しげな雰囲気だ。目の前には銀色のカウンターが広がり、その奥からホワイトシルバーで艶々としたロングヘアーの女性が現れた。
身長はアイさんと同じくらいだ。彼女は腰を曲げてカウンターに肘をついた。顔立ちもアイさんにも負けないくらいの美人だが、アイさんよりも大人の女性といった感じで……そして何より……私は彼女の事を見たことがあった。確かSNSで美容系の発信を行っている話題のインフルエンサーだ。
ただ、SNSで見かける彼女よりもはるかに目つきが鋭い。何というか、ヤンキーがガンを飛ばすような目線で私たちの事を見ている。そんな彼女がアイさんに話しかける。
「お前が紹介したいって連絡してきたガキはそいつか?」
「はい。」
アイさんは彼女の目線なんて気にしないようにニコニコとした表情で返事をする。
「アイ、ろくでもない奴は採用しねぇって分かって連れて来たんだろうな。しかも、こんな朝っぱらに……。」
朝っぱらと言っても……もう12:00過ぎだ……。
コメント
1件
第39話読了!ミィと結衣の距離がどんどん縮まってて、もう心がほっこりしたわ。お風呂上がりの髪を乾かし合うシーンとか、アイさんの胸に抱かれて眠る安心感とか、優しさがじんわり染みる展開だったね。最後に登場したインフルエンサーの女性の雰囲気がガラッと変わって、次の展開が気になるー!結衣がこれからどうなるんだろう。
#地雷系
金欠チャン
690
ゆずき
398
モノクロナツキ
1,508