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「俺…思ったんですよ」
時刻はあと少しで20時になる頃。やっと口を開いたかと思えば、くだらない自語りか。
「…人って…簡単に殺せるんだって…」
「は?」
ーーーーー
『人を殺した。』そんな通報が入ったのは18時丁度。人を殺した犯人がパニックになって逃げるのが大半だが、極稀に事の重大さを理解し、冷静に自首するヤツもいるのでそこまで驚くことはなかった。
現場に着くと気に食わないコンビが先に事件の経緯を調べていた。
ムカつくからここは一つ、丁寧に“挨拶”をしとくとする。
「飲酒運転でここまで来たのか?いいねえ。この後の予定はカーチェイスってところか?」
「ハンクはここ最近アルコールは───!」
「ふざけたことを言ってないでください」
「あ?」
意外にも間に入ってきたのは900の方だった。
「コナー、情報の共有を」
「あ、あぁもちろん」
舌打ちをしその場を離れる。
すると今一番関わりたくないジジイが話しかけてきた。
「900にもあまり迷惑かけてやるなよ いつか痛い目見る前にな」
「ハッ安心しろよ あんたとは違って汚ぇ使い方してないから で?夜の面倒見させる気分は?」
「言ってろ言ってろ、お前みたいなのはやっぱり一度は死にかけないとわかんねぇみたいだからな」
「くだらねえ」
中指を立てながらポンコツプラスチックの元へ戻っていくジジイにこちらも中指を立て返す。
そこに情報の共有を終えた900が近寄ってくる。
「リード刑事でも分かるように簡単にまとめますと加害者は被害者に強い恨みを持っていたそうです。そこから揉め合いへと発展し殺害。冷静に戻った犯人が警察に通報」
「てんめえ一言余計なんだよクソが」
「難しいと思いまして」
「生意気言いやがって それにしても通報できるほどまともなヤツが殺すとはねえ 世の中頭のおかしいのしかいないってわけか」
被害者の男は無惨なほどにズタズタにされている。何箇所も刺されていてその多くが腹や胸辺り、そして喉に向けられている。
「パッと見、どのくらい刺されてそうだ」
「およそ100カ所ですよ、ギャビン・リード刑事」
その声は900ではなく、コナーのものだ。後ろからゆっくりと近づいてきてにこりと笑って答えた。その様子に眉間にしわを寄せているとこめかみのLEDを黄色に点滅させる。
「勘違いしないでください。あなたに用があって来たわけじゃありませんから。」
900に目線を向け、手で合図を出す。900もその意図を汲み取り、コナーから新たな情報を受け取る。
「まあにしても加害者は相当恨んでたんですね。僕の想像をはるかに超えるほど。じゃ、僕はこれで。あなたといるとストレス値が異常になるんです」
またにこっと笑い、背を向け去る。
ムカつく野郎だ。くそ。
にしても、100カ所も刺すって恨んでたどころじゃないだろ。
「喉だけでも14カ所は刺されています。見てください、ここ。」
「肩…」
「ええ。きっと肩を刺して抵抗できないようにしたんでしょう」
抵抗できないようにし、息の根を止めてなおその後数分間は身体に穴を開け続けられたというわけか。いくら恨まれるような人物でもこれは同情する。
「とりあえず加害者の話を聞かなきゃどうにもできない。あいつ、もう署にいるんだっけ?」
「先ほど到着したそうですよ」
ーーーーー
マジックミラーと、机だけがある殺風景な部屋。真っ白な電気がその場にいる人間を照らす。
「なんで殺した?なんでわざわざ自分から通報したんだ?」
かれこれ二十分ほど質問を繰り返しているが、まったくと言っていいほど返答をする気配などない。
「なあ、自分から通報したくせにいざ尋問となったら答える気なしかよ。もう一回聞く。なん───」
「俺…思ったんですよ」
時刻はあと少しで20時になる頃。やっと口を開いたかと思えば、くだらない自語りか。
「…人って…簡単に殺せるんだって…」
「は?」
「…人は誰しも、一度や二度、誰かを殺したいって思うでしょう。普通ならそこで理性が働いて、思うだけで行動には移しません…」
「なにが言いたい」
威嚇で睨むが、反応をするでもなくこちらを真っ直ぐと見て話し続ける。
「だからこそなんです。人って、殺そうと思えば…理性の制御が効かなくなれば…簡単に殺すことができるんだって。むしろそれは気分のいいものに変わる。」
先ほどまでの沈黙は何だったのか、人が変わったかのように、ペラペラと話す姿に段々と苛立ちを覚える。
「あいつは俺のすべてを否定した。だから、だからイライラして、殺そうと思ったんだ。二人きりのタイミングを狙って…。一回刺した時は変な感覚だった、けど二回目を刺し込んだ時にはその感覚が面白くなって…四回目にはもう息をしてなかった…」
「…100カ所だ。お前が殺した男の身体には約100カ所もの刺し傷があった。死んでたならそんなにやる必要なかっただろうが」
ゆっくりゆっくりとマジックミラーの方に顔を向けると落ち着いた声色で答えた。
「へえー…俺、そんなに刺してたんですね。気が付かなかった。だって…途中で楽しくなってて、正気戻った時には…は、はは…ハハハ、穴だらけだったよ。見て笑った無様に死んでたから」
こちらを向き直り楽しそうに笑いながら共感を求めるような話し方をする目の前の男に、こちらも殺意が湧いた。
「いい加減にしろ」
「刑事さんもやってみればわかるよ。人を刺すのは悪い気はしないよ。すごく気持ちがいい…」
「いい加減にしろっつってんだろ!」
男の胸ぐらを掴み、顔面を躊躇いなく何発も殴る。
するとマジックミラーの外で見ていた900が自分たちのいる部屋のドアを勢いよく開けて入ってくる。
「リード刑事!!!リード刑事やめてください!落ち着くんだ!」
床に押さえつけられてから、いつ入ってきたかわからないがいつの間にか入ってきていたハンクとコナーに気付いた。
「深呼吸…深呼吸ですよ。」
今だ床にすごい力で押さえつけられている状況に冷静を取り戻す。
その間に男はふたりに支えられながら立ち上がり、再度椅子に座らせられている。
「今は落ち着け」とハンクに言われ、尋問を交代する。
去り際に男の顔を見ると口の端から血が滲み、鼻血も出ていた。
ざまあみろ。
「あそこまで取り乱すとは。らしくないですよ」
「うるせ、あいつの態度がムカついたんだよ」
目の前で繰り広げられる再開された尋問を見ながら舌打ちをする。
「なにがやってみろだ。やれるもんなら今ここで殺してやったっての」
あーあ、めんどくさい書類増えちまったな。でも、殴って後悔はない。
コメント
4件
これがデトロイトですよね? 本当に素晴らしい👏 あの尋問の表現…加害者の心情…もう言葉にできないくらい素晴らしい!!! 素敵な小説の供給あざす!
いつもいいねしてもらってるから、返しに来たわよ♡♡♡