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最近、トラゾーがクロノアさんの話ばかりする。
「でさ、そん時クロノアさんが…」
親友の話をしてるだけ、当然のことなんだ。
…けど、楽しそうにクロノアさんの話をするトラゾーを見てると、少し胸がきゅっとする。
「…トラゾー、クロノアさんの話めっちゃするね」
「ああ、まぁT&Kで活動すること多いから。話すネタ多くなっちゃうのかも」
「クロノアさんのこと大好きなだけじゃなくて?」
「それもあるかもw」
自分から聞いたことなのに、何故か心がずきりと痛む。
「…ぺいんと?大丈夫か?具合悪い?」
「あ、えと、…や、大丈夫」
「ならいいけど…無理すんなよ。…そういえばクロノアさんが気分悪い時に飲むといいホットドリンクのレシピを__」
「っそんなにクロノアさんが好きならクロノアさんの家に行けば?」
「…は?」
「口を開けばクロノアさんクロノアさんクロノアさんクロノアさんって…一緒にいるのは俺だろ!俺よりもクロノアさんの方が好きなんでしょほんとは…!」
「な訳ないだろ!!というかぺいんとだってしにがみさんの話沢山するだろ!」
「俺は二人きりの時はなるべく話してない!」
「いやだいぶ話してる」
「俺がだいぶならトラゾーがめちゃめちゃだよ!」
ああ、やってしまった
止まらない口喧嘩をしながら頭の中でそう考える。
「だいたいぺいんとは…っ」
なにか言おうとしてぴたりと動きを止めるトラゾー。
気づけば俺は、ボロボロと涙を零していた。
「…もう寝る」
咄嗟に袖で涙を拭ってそう言った。
「っぺいん」「怒鳴ったりしてごめん、おやすみ」
がちゃん、とリビングのドアを閉め、部屋に入りベットに倒れ込む。
へんなことを、言ってしまった
嫌われたかな、面倒だったよな、俺
頭の中で色んなことがぐるぐるして、涙が止まらない
「っぐす、ぅあ…」
暫く呻いてから、俺は泣き疲れて寝てしまった。
「…ん、朝、?」
布団の中でもぞもぞと動きながら、目を擦ってスマホを取り出す。
いつもより早く起きたみたいだ。
この時間帯ならトラゾーはまだ起きていない。
そっと部屋のドアを開けてリビングに向かう。
リビングのドアを開くと、いつもと違う、静かな冷えた部屋。
いつもなら、朝ごはんのいい匂いと一緒に、トラゾーの「おはよう」が耳に入ってくる。
早く起きたんだ。せっかくだから朝ごはんくらい作ってあげよう。
冷蔵庫の中を確認して、作れそうなものを考える。
だいたいの献立を決めて具材を取りだし、調理を始める。
…そういえば、料理はいつもトラゾーが作ってたな。
俺はちゃんと家事をした事があっただろうか。洗濯とかはしているけど、トラゾーにとってはそんなこと大したことないのかな。
だから、飽きられてしまったのだろうか。
視界がぼやけて、料理なんてできっこない。
ごしごしと袖で涙を拭い取り、調理を再開する。
食材を炒めているくらいの時に、扉が開く音がした。
トラゾーが起きたらしい。
「…あ、おはよ」
「ん」
謝ればいいのに、変なプライドが邪魔をする。
トラゾーは何か考えてるみたいで、変な沈黙が続く。
椅子に腰かけているトラゾーの前に朝ごはんを置いて、正面に座って手を合わせ、「いただきます」と呟く。
俺の声にハッとしたトラゾーが手を合わせて同じように呟いた。
そんなに集中するなんて、どんなことを考えていたんだろう。
変な妄想ばかりしてしまう自分が嫌になる。こんな性格だから、トラゾーにも飽きられてしまうんじゃないか。
もくもくと朝食を口に運びながら、ちらりとトラゾーを見る。
やはりなにか考えているみたいで、少しぼーっとしている。
ボケっとした顔でご飯を口に入れているトラゾーを見ていると少し気持ちが和らいだ気がした。
「ご馳走様」
食器を持ってキッチンに向かう。
洗剤を付けようとスポンジに手を伸ばした時、トラゾーの声が聞こえた。
「手伝うよ」
「え、あ、ありがと」
いつの間にか食べ終わってたみたいだ。カチャカチャと音を立てて手際良く食器洗いをしているトラゾー。
横顔は綺麗でかっこよくて、俺は、やっぱり、
トラゾーが好きなんだなって、改めて思ってしまう。
「「…あのさ!」」
2人同時に声を上げた。
ちょっと固まって、じわじわと笑いが込み上げてくる。
「いや…先いいよ…w」
半笑いで俺にそう言ってくれたトラゾー。
「…それじゃ、お言葉に甘えて」
「…その、昨日は、ごめん。変な理由で怒っちゃったし、泣いたりして…面倒だったよな」
「それと、いつもありがとう。家事とか…もうちょっと手伝う」
これは、昨日と今日で改めて感じた、俺の気持ちだ。
「…俺も、ごめん」
静かに聞いてくれていたトラゾーは一言そう言った。
「2人きりの時に他の人の話ばっかりされてもあれだよな、だからその…話さないは無理かもだけど…なるべく言わないようにする。あと…ありがとうはこっちのセリフだ。俺がやりたいから家事してるんだよ。…けど、手伝ってくれるのは嬉しいかも。」
二人でちょっと笑いあって、仲直り?をした。
「ね、ぺいんと!」
「ん?」
呼びかけられて振り向けばトラゾーに思いっきりハグされた。
「昨日はあのまんま寝ちゃったからぺいんとが足りてない…あーいい匂いする」
…なんかキモいな。
「ちょ、力強い、背中痛い」
「あっごめん」
トラゾーはパッと手を離した。
それに少しだけ寂しさを覚える。
「…別に、やめろとは言ってない」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声量でぼそっと呟くとトラゾーは目を輝かせてまたハグをしてくる。
「なーーんだよそれもうかわいいなぁ!!!」
「だから痛いってば!!」