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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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日曜日の10時過ぎ俺は電車に乗った。
いつもは平日だからがら空きだけど今日は日曜日しかもお盆まっさだなかで人が異常なほど多い。


都会に住むのは楽だけど電車が時間帯によって年中混むことは少し厄介だなと思うこの頃。


空いてる席もないのでエゴサをしながら時間を潰そうと足でバランスを取りながらスマホを開く。


「莉犬くんおはよう🐶☀️」


「今日も大好きです!」


「今日の公式放送楽しみ」


リスナーさん達のツイートを見てつい頬が緩む。


愛されてるな、おれ。


そんな気持ちでスクロールしていると目を引くツイートが流れてきた。


「○○時 赤くんを ×す」


残酷にも俺の事を好かない人間はこの世に存在する訳で俺に嫌がらせをする人も少なくは無い。


エゴサに引っかかるようにわざわざ”くん”を付けて呟く辺り人を傷付けることに慣れているのだろうか。


いつもなら迷わずスクロールするが今日は何だかおかしかった。


〈この電車に乗っていたらどうしよう〉


〈バレるかもしれない〉


〈逃げれない〉


普段は思わないような変な思考ばかり脳を巡る。


赤『はぁっ、ッ』


早く逃げなきゃ。


逃げれない。


誰か助けて。


赤『かひゅっ、はッ、はぁッ、』


あれ、息ができない。


俺殺される?。


赤『はッ、はっ、げほっ、かひゅっ、ッ』


逃げなきゃ。


体が動かない。


赤『かひゅっ、ッ、はっ、』どたばた


○『だ…じょ…で…か…!』


赤『はっ、ぃゃッ、はッ、はひゅっ、』


死んじゃう。


誰か助けて。



目が覚めると知らない天井が映っていた。


体を起こし辺りを見渡しても人気がない。


ここはどこだろうか。


赤『…』


向こうから人がくる。


○『あ、起きましたか』


○『ご気分はどうですか?』


服装的に駅員さんだろうか。


赤『ぁ、あの、、』


○『貴方、車内で倒れたんですよ』


赤『そうだったんですね、ご迷惑お掛けしました』


頭を下げながら伝えたあと時計を見ると11時半を周っていた。


今日は会議と動画撮影が立て続けにある予定。


ここに長居する訳にはいかないからすぐ支度をして後にした。


しかしあの苦しさはなんだったんだろう。


駅員さんに病院を進められた。


確かに死ぬほど怖かったし、何かの病気なことは間違いないがそこまで自分の体調に興味がわかない為病院へ行くのはいつかにしよう。


そんなことを考えながら走っていたらヒカリエへ着いてしまった。


早歩きで社員用のエレベーターに乗る。


ドアが閉まった瞬間、何だか苦しくなった。


〈逃げれない。〉


〈殺される。〉


まただ。


ぐるぐると警報のように脳内再生される言葉達


赤『はぁっ、ッ』


〈殺される。〉


〈死ぬ〉


〈死ぬ〉


赤『はッ、かひゅっ、』


ドアが開いた。


やっと逃げれる。


赤『はぁっ、はぁっ、、』


呼吸ができる。


怖かった。


やっぱり何かおかしい。


呼吸を少し整えて皆が集まっているであろう部屋のドアを開けた。


赤『すみません、遅れました。』


青『赤くん来た!』


橙『良かったわ〜』


黄『沢山連絡したんですよ、?』


そういえば車内で倒れて以来スマホを開いていなかった。


赤『ごめんね、笑』


青『僕紫ーくん呼んでくる』


別のお仕事してたのかな。


俺が遅かったからだよね。


申し訳ない。


紫『赤くん大丈夫だった〜?』


紫『心配したよ〜…』


赤『ごめんなさい、笑』


紫『遅れる時は連絡してね?心配だから!』


赤『わかりました、』


遠回しに怒られちゃったな。


あれ、別に怒られてないか。


当たり前なことを言っただけ。


今日はすこぶる調子がおかしい。



桃side


赤が珍しく大遅刻をかました。


入ってきた赤は畏まった謝罪の後いつものテンションに戻りみんなと話している。


みんなは気付いてないのだろうか、赤が異様なほど汗をかき目がずっと泳いでることに。


心配になり「大丈夫そ?」と聞くも「大丈夫」の一点張り。まあ、そこがりいぬらしいっちゃらしいか。


無理をし過ぎる前に俺が止めてやるとして今はあいつが満足するまで好きに頑張らせてやろう。


会議中も動画の撮影中も赤に目を配っていたが案外大丈夫そう。


朝の不調具合はなんだったんだ?


今日のラストの収録が終わりみんなクタクタになりながら帰る支度をし始めた頃、俺はあいつに声をかけた。


桃『りっさん』


赤『なにさっさん』


桃『俺の家で飲むべ』


赤『むり』


桃『え!!なんで!!!!!』


赤『作業いっぱい残ってるんです〜』


桃『今日ぐらいいいじゃーん🥺』


桃『おねがい〜〜🥺』


赤『はぁぁ、、』


赤『しょうがないからいいよ』


これが俗に言うツンデレっすか。


桃『よっし、酒家にあるし直行な』


赤『はーい』


こいつ俺の先をがつかつ歩いてるが家分かんのか?

コラボ配信の時に何回か俺の家来てるしまあ大丈夫なんかな。


そんなことを考えながらSuicaで改札を入った



赤side


桃くんの押しに負けて飲みを受けてしまった。


まあ、今日はなんとなく一人で居たくなかったからいいだろう。


ただ問題はこの先の電車だ。


今朝のようなことがまた起きてしまったらどうしよう。


桃くんに迷惑をかけたくはない。


そんなことをいくら考えても時は過ぎていくもので、もう後5歩ほどで車両の中に入る所だ。


足が竦む。


死にたくない。


<とんとん>


桃『大丈夫か?』


赤『ぁ、大丈夫!』


桃くんの後をついて電車に乗り込む。


走行中に出れるわけないが少しもの抵抗でドアの傍に経ってみることにした。


ふと目線を上げれば桃くんが俺の前で吊革を握りながらスマホをいじっている。満員電車まではいかないけれどそこそこ人が乗っている電車の中で人が俺にぶつからないようにさりげなくが立ってくれてる優しさを俺は知ってるよ。イケメンだよねさとちゃん。


外の景色を眺めても何だか苦しくなるだけかと思いスマホを開くがまた今朝のツイートがフラッシュバックしてしまった。


「×す」


〈殺される?〉


〈死んでしまう〉


このままでは桃くんまで死んでしまう。


〈逃げれない。〉


〈どうしよう。〉


〈死〉


〈死〉


〈死〉


息ができない。


死んでしまう。


助けて。



○ 『…ぃ…ぬ!!』



桃side


電車に乗って十数分後、突然赤の様子がおかしくなった。


いや、正確には乗車する前からだな。


少し顔が引き攣っていた。


それでも赤の大丈夫を信じて乗させてしまった。


赤『かひゅっ、ッ、ごほっ、はっ、ッ、』


苦しそうに息をする赤。


過呼吸というやつだろうか。


どうするのが正解なのか正直分からない。


よく聞く、安心させることが対処法だと願いつつ赤に声をかけるものの反応は帰ってこなかった。


桃『あか?聞こえる?』


赤『はぁッ、はっ、けほっ、はッ、』


こんな車内で大声を出したら身バレどころじゃないかもしれない。だけど今はそんなこと考える暇は無い。赤を救わなくては。


桃『○○!!』


咄嗟の判断で赤の改名後の本名を叫んだ。


車内がざわつく。


赤『はッ、はっ、ごほっ、!』


赤と焦点が合った。

俺の選択は合っていたのか。


桃『落ち着いて、俺の事わかる?』


赤『はっ、はッ、はぁッ』


まだこの質問は早かったか。


桃『大丈夫大丈夫。』


赤『げほっ、たすけッ、はっ、ッ』


爪が皮膚にくい込んで血が出てしまうのではないかと不安になるほど手に力を込めて俺に助けを求める。


その手に触れると有り得ないほど冷たかった。


桃『大丈夫だからとりあえず落ち着け。』


そう伝えながら背中を摩る。


どうしたら落ち着くのだろうか。


赤『はっッ、はっ、かひゅ、』


桃『息吸いすぎ。ゆっくり吐いて?』 


赤『すぅッ、ごほっ、はぁーッ、』


桃『そう、上手。』


なるべく優しく聞き取りやすいであろう低めの落ち着いたトーンで語りかけ続けた。


赤『はぁっ、すぅー、けほっ、』


桃『できてるできてる。』


赤『すぅ、はぁっ、はっ、』


桃『赤、俺の事わかる?』


赤『はぁっ、ひゅっ、はぁー、』こく


桃『ん、良かった。』


〈ばたっ〉


桃『!? ッと、、危な』


頷いた途端俺の方へ倒れてきた。


ちゃんと息もしてるし寝てるだけだろう。


周りから心配の声が上がったので騒ぎになる前に抜け出そうと丁度停車していた駅に赤をおぶって降りた。


そこからタクシーを適当に捕まえて家に着き、今ベットの上に寝かしている。


なにか病気を抱えているのだろうか。


本人に聞くのが一番早く確実なのは分かっているが生憎当の本人は夢の中なので仕方なくさっき赤に起きたことを頼りに検索してみる。


桃『パニック発作?』


どうやら乗り物や映画館など閉所で起こる人が多いらしい。逃げれない状況への恐怖感、か。


起きたら赤に聞いてみよう。



赤side


目が覚めると見知らぬ天井、ではなく見覚えのある天井があった。


桃くんの家だな。


重い体を持ち上げて体を起こす。


なんだかどっと疲れた。


朝からずっとこの調子だ。


桃くんと飲む約束をしてたんだった。


桃くんが居るであろうリビングへ向かう。


ソファーには桃くんがスマホとにらめっこしながら座っていた。


赤『桃くん、ごめんさっき』


桃『あ、起きたん』


桃『もう大丈夫そ?』


赤『うん、大丈夫』


桃『ごめん聞き方が悪かったな』


桃『今気分悪いとかない?あるんだったら言え』


言え。だって怖いなぁさとちゃんは。


大丈夫と聞かれたら大丈夫としか返せない俺への優しさなんだよね。


赤『ちょっと体重いぐらいだよ。』


桃『多分疲れたんやな。』


赤『そうだね、』


桃『いつから?』


電車の中で起きたことについてだろうか。


赤『今朝だよ。なんかよく分からないんだよね。』


桃『あーね。病院は?行く気あるの?』


赤『全然ない』


桃『でしょうね。』


こいつは何でも分かりきったような口調でいいやがる。


桃『俺も着いてくから一緒にいこ』


赤『でも、』


俺の体になんか興味無いけど一応休憩中に調べた。


この症状を見てもらうには精神科または心療内科に受診しなくてはならない。


抵抗がある。


お母さんに付き添った時の堅苦しい対応と10数年前の俺が受けた診察。


どちらもお母さんが関わっていたからなのかもしれないが俺の中で精神科のイメージは最悪だ。


桃『やっぱ不安?』


赤『うん、ちょっとね、』


桃『1人の方が行きやすいんだったら1人で来たらいいと思う。でも結局行かなそうなら俺が着いていく。』


桃『あんなことが頻繁に起きたら大変だろ』


桃『どうしたら良くなるのか聞きにいこ』


確かにこのまま放置してれば閉所を避けるようになりどんどん周りに迷惑がいく。


桃くんはお母さんとは違う。

桃くんが後ろに居ても言ってはいけないようなことは1つもない。


大丈夫かも、。


赤『ももくんと、いきたい、』


桃『ん、わかった。』


桃『決断できて偉いじゃん。』


そう言いながら俺の頭を撫でるさとみくんはきっと過保護になりすぎてる。


まあ、正直その過保護が嬉しいって気持ちもあるんだけどね。 絶対本人には言えないけれど。


桃『じゃあ予約取っといてやるからお前はもう寝とけ』


赤『え、わるいよ』


桃『いいのー、寝ててくださーい』


赤『わかったよ、、ありがとう』


桃『うぃー』


桃くんらしいな。



後日心療内科に受診するとパニック症と診断された。毎日飲む薬を出されたらどうしようかと思ったけど処方されたのは頓服という発作が起きた時に飲む錠剤だけで一安心。俺は薬飲むの忘れちゃうからね。


お仕事では閉所を避けてもらうようになった。最上階の事務所に行くには流石にエレベーター使わないと半日ぐらいかかっちゃうから、乗るのが難しい時だけメンバーも一緒に乗ってもらって上へいく。


あの日から2ヶ月が経つ今は誰かと一緒になら電車も乗れる時が増えて、色々少し不便ではあるが前と変わらない生活を送れている。


受診する勇気をくれた桃くんにありがとうの気持ちでいっぱい。





end




昨日のコラボ動画めちゃくそ良かった。桃赤尊い。幸。


リクエスト待ってます✉️🍀

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コメント

1

ユーザー

赤くんの気持ちすんごいわかるなぁ… 逃げられないって思うともうダメ だから携帯で過集中発動させるけどそしたら乗り過ごすんだよね🥲

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