コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「今日も酒がうまいぜっ!!」
俺は今日も酔っ払うまで酒を飲む所存である!
「大体この山は何なんだよ!!なんで俺の貴重な時間を使ってまでこんな所を登らにゃならんのだ!」
登れど登れど終わりの見えない山に、俺のフラストレーションは爆発寸前だった。
だから毎日崖登りの後は酔い潰れるまで酒を飲んでいた。
「もう二週間は経つぞ!!そろそろ宇宙に着いちまうぞ!?」
あれ?宇宙ってどこからだっけ?高度100キロだっけ?
確か誰かがそう決めていた記憶が朧げながらもあるな。
「あれ?100キロだととっくに過ぎてないか?……俺の登る速度は普通の人の駆け足ぐらいはあるぞ?
歩く速度が時速4キロくらいだとしても、俺の登る速度は時速で8キロくらいか。
一日に少なくとも8時間は登り続けているはずだから、今は……」
!!!
「約900キロじゃねーかよ!!完全に宇宙やないかいっ!!」
馬鹿な…俺は遂に宇宙人へと進化したのか…?
「普通に呼吸も出来るし何か変なんだよな。もしかして、ただ登るだけだと辿り着けない?」
もしかしたら山頂には普通の方法では辿り着けないのかもしれないことに、今更ながら気付いた。
「くそっ!!あの変な声に騙された!!
何が登ってこいだよ!!登らせる気が無かったくせに!!」
こうなったら目にもの見せてくれる!!
俺は翌朝にすることを決め、早めに休んだ。
「よし!腹拵えも終わったし、盛大に吹き飛ばしてやるぜ!」
翌朝、久しぶりに二日酔いもなくスッキリ目覚めた俺は、準備を終えて恨みを晴らすべく行動を開始した。
「まずはこの辺かな?」
カンカンッ
「よし。こんなもんだろう」
ゴソゴソ
岩壁にピッケルを使い30センチ程の深さの穴を開けると、そこに魔法の鞄から取り出したある物を詰め込んだ。
「よし。残りは三つだから後三か所だな」
その後、岩壁をぐるりと一周して大体のサイズを把握したので、残りの三か所の場所を決めて同様の作業を行った。
山の周囲は一周で凡そ1キロちょっとあった。
下からはシャーペンの芯くらいに見えたが、さすがにそんなことはなかったようだ。
「よし。テントも装備ももう要らないからこのままでいいや」
準備を終えた俺は、最後通牒を伝える。
「見ているかっ!!お前が嘘をつくから俺は無駄に二週間もこんなところで過ごしたんだ!!
報いは受けてもらう!」
背中にリュックのようなものを背負った俺は、堂々と謎の声に向かって話し掛けた。
『朝からうるさいのぅ…なんじゃ?お主、へんなモノを山に取り付けておるな』
「これか?これは俺の寝床だ。それよりもやっと返事したな!だが、もう遅い!
お前のせいで俺の貴重な時間が無駄になったんだ!その分の責任はお前の住処に取ってもらうことに決めた!」
『何を言うておるのじゃ?…お主、何をする気じゃ?』
この世界の住人ではわからんだろうな。
「この山を爆発させる」
『は?その様なことが出来るわけなかろう。ここではロクな魔法が使えないのじゃぞ?』
「魔法なんていらないさ。兵器だからな」
俺はニヤリと笑い余裕をかましてやった。
どこにいるか見えんけど。
『…出来るとは思えんが、その様なことをすれば、お主は死んでしまうぞ?』
「何で死ななきゃいけないんだよ。俺は飛び降りてさよならだ」
『確かにここはお主が昨夜呟いていたように、通常の次元とは違う場所じゃ。しかし、それでもかなりの高さ。人の身で助かるはずはないのぅ』
俺もそう思う。
でも地球グッズにはそれを可能にしてくれる便利なモノがあるんだよなぁ……
「くだらん問答をするのは終わりだ。やっぱりお前は俺のことを覗き見していやがった。
おしまいだ」
俺はパラシュートを背負い、起爆スイッチを持って飛び降りようと身構えた。
『ま、待て!わかった!わかったのじゃ!信じる!信じるからやめてくれぇ!』
謎の声がそう叫ぶと、辺りの景色に変化があった。
「ん?あれは…頂上か?」
不思議に思い上を見上げると、これまで延々と伸びる山に見えていたソレが、少し先で山が途切れて見えた。
『そ、そうじゃ!そこで待っておる』
「随分と偉そうだな?この山をここで爆破してもいいんだぞ?」
『お、お待ちしています…』
ちっ。腹たったから爆発させようと思ったが……
ここまで来て頂上を見ないのもアレだしな。
「お茶淹れて待ってろ。あと、こっちはいつでも山を爆発させられるからな!」
それから声は聞こえなかった。
「よっと」
俺は遂に頂上へと手を掛けた。
「凄え……なんもねぇ…」
登った先は、特に変わった物は無く、普通の高台のように見える。
しかし・・・
この不思議な山に不思議な力を持った奴。
期待しないわけがなかった。
「完璧に裏切られた形だが…お前が声の主か?」
『そ、そうじゃ。妾がこの神域を守るモノじゃ』
神域ねぇ……
俺の目の前には、白い体毛に尾が三つある…狐(?)がいた。
「白い狐は高く売れるのかな?」
『ひぃっ!?何を考えておるのじゃ!?そして妾は狐などではない!!』
違うのか……
『妾は獣神の使い、神獣フェンリルであるぞ!』
「獣神……それはわかったが、お前はフェンリルちゃうやろ!フェンリルは巨大な狼って相場が決まってんだよ!!」
翻訳さんのせいかな?
『妾は狼じゃ!身体は大きくすることも出来るが…ここから落ちたらどうするんじゃ!?』
「ふーん。高所恐怖症の奴がなんでここにいるのかは置いといて、獣神の使いって言ったな?」
『こ、怖くなどないわっ!そ、そうじゃ!跪いてもいいのじゃぞ?』
「誰がビビリの狐に跪くんだよ。獣神には会ったことあるのか?どこにいる?」
神に会う方法がわかれば、月の神様に会えるかもしれない。
『ない…』
「何だって?聞こえねーよ」
『ないというたんじゃ!』
「じゃあ何で自分が神の使いだなんて……あぁ。ごめん。誰にでもそういう時期はあるよ。
元気出せ?」
厨二病患者だったか……
『言うておる意味はわからぬが、馬鹿にしておるな?』
「仕方ないだろ?いきなり神の使いだとか痛いことを言っちゃう奴に会えば」
『これでもか?』
白狐がそう告げると……
「ここは…まさかダンジョンか?」
神殿が、突如として現れた。
この見た目には見覚えがあった。ダンジョンの20階層だ。
『ほう?他の神域にも行っておったのか』
「神域?ダンジョンは神域なのか?」
まぁあそこまで世の理からかけ離れた空間なら納得出来るな。
「ここが神域なのはわかったが、お前の正体はわからん。神にあったこともないのに、なぜ自分のことを使いだなんて思ったんだ?」
『声が聞こえたのじゃ。妾は気付いたらここにおった……』
白狐がなんかペチャクチャ饒舌に話し始めた話を纏めると・・・
生まれ落ちたのがここ。気付いたらここに居たともいう。
言葉は理解できて念話も出来る。でも自分ではなぜ出来るのかはわからん。
そして念話で獣神を名乗る奴から話があったそうだ。
念話や言葉のことは俺も理解できる。
翻訳の能力が俺にとってはそうだ。
なぜ出来るのか、どうやって使っているのか説明出来ないからな。
『獣神は妾が神獣フェンリルであると言っておった。そしてここを護るモノだとも。
まぁ未だにここへ来たの者はお主だけじゃがな?』
そりゃ、普通はこんな所を登ろうとはしないだろうし、そもそもお前に辿り着かせる気がなければ辿り着けねーじゃねーかよ!
だがビビリの気持ちはよーーーくわかる。
俺もビビりだからな。
あれ?神の使徒で、特殊能力も授かって、尚且つぼっち……
丸っ切り俺じゃねーかよ。
ここに居たのか、心の友は……
なんだか意趣返しも報復も、する気が起きなくなったぞ……
「お前飯は?食うか?酒もあるぞ?」
「ワンワンッ!」
いや、念話使えよ……
俺は白狐の餌付けに成功した。