「師匠!」
「やっほ。元気だね」
2日後、予定通りの時間にやってきたが既に千冬はおり武道を待っていた。前にあった時と一緒で顔や手に絆創膏が沢山付いていた
「…何時も怪我してる。大丈夫?」
「大丈夫ッス!怪我には慣れてるんで」
慣れてはいけないだろと言い頭を小突いた
「いてっ」
「コレで痛いって…まぁ早くしようか。でもどこでする?公園?」
「公園はちびっ子の迷惑になるんで…あっちょうどいいところ有りますよ」
「ホント?案内してくれる?」
「良いっすよ!こっちです」
千冬が指を指した所は小さな路地だった
「着いてきてください」
小さい路地の割には先が長く、まるで裏山に登っているようだった。そう考えていたら開けた場所に着いた
「ココっす!」
其処は建物と建物の間の空間で学校の教室と同じ位の広さだった。殺風景ながらも綺麗な場所であり、何故か懐かしさを感じた
「……よく見つけたね」
「前喧嘩売られて逃げてた時に見つけたんすよ。居心地が良くて気に入ってる場所ッス」
「そうなんだ」
「では、師匠。俺を強くして下さい!」
「うん、分かった。一回タイマンしようか」
「えぇ!何で!?」
「君の何処が駄目なのかを確認しないと」
少しとどまった千冬だがこれも修行の為と言い武道の前で構えた
「…………」
どちらも動かない静寂な時間が流れる
「………っ!?」
静寂を破ったのは武道だ。千冬との距離を一瞬で詰め勢いのまま拳を突き出すが間一髪避けられてしまった
「あっぶね〜…!」
「油断大敵だよ」
直ぐにもう片方の拳を突き出し当たった千冬は悶絶した
「いぃった!!うぅ…」
「一発KO?ほら、来て?」
「っ!うぉお!」
師匠に煽られた事で立ち上がり攻撃を仕掛けたが簡単に避けられまた一発食らってしまった
「くっ………」
「うん。ここまでにしようか」
「い…痛過ぎるゥ〜!!マジ痛すぎて熱い!」
これでも手加減はしたのだが…と武道は思いつつ弟子の課題について考える
「………そうだね、避け方は良いとしよう。最初よく避けきれたね」
「!ホントっすか!?」
「でも殴り方だよ。あれじゃあ避けられるよ」
「えぇ?じゃあどうやったら良いんすか?」
「まず、自分の殴り方を分析してみたら?俺的には遅い割に力も弱そうだよ」
「うっうぅ…」
「殴るのが遅いと避けられるからまずははやくしてみようか」
千冬から少し距離を離し、向き合う
「今から俺がどっちか片方手を出したら直ぐに殴ってね」
「え?痛くないんすか?」
「遅かったら避けるから安心して」
「えぇっ?受けて下さいよ」
「だったら速く殴ってよ」
そう言い武道は右手を挙げた。千冬は反応が遅れ拳をだしても避けられてしまった
これがずっと続き一回も当てられずじまいであり、千冬はどんどん焦っていく
「っ!(ダメだ…当たらない!)」
「焦っちゃダメだよ。ほら、冷静に考えて」
「(…そうだ、師匠の言う通りだ。落ち着け、手を見ろ…動いた瞬間俺もだすんだ)…!」
バチン!と清々しい快音が響いた
「!!やった…ってあぁ」
嬉しさの余韻もつかの間、どんどんと手を挙げていく
「喜ぶ暇はないよ、どんどん当てないと」
どうやら師匠は厳しいようだ
「ふぅ…ふぅ……」
「お疲れ様、1番最初のタイマンよりはちょっと良かったよ」
「なら良かったッス…… 」
「ちゃんと敵の動きを見て攻撃をするんだよ」
「ハイっす」
「他にも筋トレとかしたら良いかも…後、場馴れとして喧嘩ふっかけたりしたらいいよ」
「ふむふむ、分かりました」
なんというか師匠よりも母な感じがする…と、口からでかけたが怒られそうなので堪えた
「でも何でもかんでも突っ込まない方がいいからね。もうこんな時間…じゃあ次は……」
「明後日とかはどうすか?と言うか俺ら連絡先追加してないっすよね。とります?」
「うん」
ガラケーを立ち上げる最中、師匠の通話履歴を見てしまった。履歴みられるのは恥ずかしいよなと考え口に出さないようにするが特定の人にしか連絡していないことに気付いてしまい更に気まずくなってくる
「…ん、出来たよ……いや、何俯いてるの?」
「なんでもないっすよ…ハイ。俺も定期的に連絡します………」
「どう言う意味で言っている?」
可哀想に…師匠…ボッチなんだなぁ
ミーンミンミンミーン
「暑………」
「なんかもう溶けそう…」
「大丈夫?」
「武道はなんで暑く」
梅雨明けの6月下旬。今年は思ったよりも早く明けており8月かと思う程夏日が続いている。武道も暑いと思っているがこれより暑い未来を知っているので他の人より苦にはならない
「どっか涼しい所入ろぜ」
「ファミマとかにする?腹空いてるし」
「そうするか」
少し前、タクヤの紹介で3人と仲良くなった。しかし、武道が覚えて無いだけであって前々から仲は良かったらしく話すタイミングが今まで無かった。今は3人とタクヤを入れて遊びに行っている
「そう言えば…武道知ってる?」
「何を?」
「喧嘩賭博の後清正の入ってるとこの総長来てたんだって」
「エッ…そうなの…!?」
「うん、それに副総長も。もしあのまま居続けてたらやばかったかもね」
「やっぱり武道がやったんだな。噂めっちゃされてたぞ」
3人の1人、千堂敦ことあっくんが言う
「ずっと彼処仕切ってた奴だもんな〜武道のお陰で大分過ごしやすくなったよ」
少し大きめなメガネをかける山岸が元気よく伝える
「ま、もうその話はいいんじゃね?聞かされまくって耳にタコだぜ」
「それ言葉言いたくて言ったでしょ」
思春期男子の例、マコトが言ってみたい言葉と一緒に言ったがタクヤにバレていた
「武道も、あんま突っかからない方が良いよ。心配になるし」
タクヤが注意する様に言ったが武道は応答しなかった。それもそのはず、自分の未来を変える為だからだ。監禁され、欲を吐かせられ、手を上げられ…もううんざりしているのだ
「ほら、雑談はお店行ってからにしような」
過去に戻ったからには変えなければいけない。未来で、太陽の下に立つために
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