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コメント
2件
はちゃめちゃによかったです! 不憫でならない吉田さんを佐野さんが救ってくれますように🙏
仕事終わりアイツの跡をつけた
案の定アイツの隣にはこれから抱かれるであろう安定の男が色恋の目でアイツを見ていた。
この人もきっとアイツに恋人がいるの知らないんだろうなぁ
巻き込むのは可哀想だけど、アイツを奈落の底に落とすキーパーソンでもあるから
あたりは暗くなり始め、近くで身を潜め仁人が帰ってくるのを待った。
しばらくすると車から仁人が降りるのが見え、あたかも今来たかのように駆け寄る。
『仁人ー!!』
「え…?早くね?仕事は?」
『終わらせてきた!』
「おつかれ笑…あれ、家の電気付いてる。付けっぱなしで出たのかな…」
『なにしてんだよ笑』
仁人の半歩後ろを一定の歩幅で歩き、俺たちを区切るひとつの扉に近づいていく
そして扉の前に着いた時、仁人の行動が止まった。
きっと今、俺の耳に聞こえるアイツと知らない男の喘ぎ声が仁人の耳にも届いているだろう。
仁人がドアノブに掛けている手を止めようとした時、俺は悪魔のように低く冷ややかな声で囁いた。
"開けなよ"
"仁人も気づいてたんでしょ?"
"もう逃げられないよ"
その言葉と共にドアを開けた。
感情に身を任せ絶望の場へ
そしてそのまま言葉を放った
「なに,,してんの…」
「え…あ、いや,,てか、お前帰ってくんの早くね?」
「そんなこと聞いてんじゃない」
「お前、俺に嘘ついたの?」
「は…?」
コイツ正気か?
浮気がバレたのは早く帰ってきた仁人のせいだとでも言いたいのか?
はぁ…笑ほんと笑える
抱かれていた男は"最低"とだけ言い残し家を出た。
「あぁ、もうお前のせいで!くっそ…」
「なんで…」
「なんでってお前に飽きたからに決まってんだろ笑ただ家にいるだけでつまんねぇ、愛想はねぇ。俺がお前に愛があるとか思ってんの?」
「でも…この間プレゼントくれたし」
「あ〜あれ?あれは同僚から貰って気に入んなかったからお前にあげただけ。俺からのプレゼントだったらなんでも喜んで貰うだろ?笑あぁてかお前のせいで逃げちゃったじゃん」
そう言ってはだけた容姿で家を出て追いかけていった。
一人立ちすくむ仁人は膝から崩れ落ちて顔を覆うように泣いていた
正直こんなに泣くとは思っていなかった
普段滅多に泣くことの無い仁人が、あんな最低なヤツに簡単に心が揺さぶられて、嗚咽混じりで泣くその光景が、 心に穴が空いたような埋めようのない寂寥感を持たせた。
頭を撫でることも、抱き締めることもせず、ただ仁人の隣に腰を下ろして黙った。
しばらくして仁人が落ち着いてきた頃、赤く染った顔をあげ、俺と視線を交わした。
「ごめん…こんなみっともない姿みせて…もう大丈夫だから」
『ねぇ,,仁人…』
目に溜まった涙を拭ってそのまま仁人の頬に触れ
そして悪魔のような笑みを浮かべて言う
『アイツ…殺そうか?』
仁人は首を横に振った。
ほらな、やっぱお前は優しいから
きっともう許してんだろ
だけどごめんね仁人
俺は仁人が思ってる以上に最低なヤツだから
このままじゃ俺の気持ちが晴れないから
ちゃんと消しとくよ
仁人が見えない場所で
跡形もなくこの世界から。
だから____.
『とりあえずさ、俺ん家おいでよ』
仁人の手を優しく引いて、傷ついた心を癒す魅惑の場へ拐っていった。
きっともう…俺のもの。
end.