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面会室で私(田村)が待っていた時、医師が入ってきた。
「先生、妻は大丈夫でしょうか?」と私が医師に尋ねると、
「奥様は大丈夫です。ただ、お腹の赤ちゃんは、残念ながら…」と医師は言葉を詰まらせた。
「冗談はよしてください」
「正直に申し上げます。残念ですが奥様は流産されました」と医師は伝えた。
悔し涙しか出なかった。
私は妻の病室へ戻った。
紀子が30分後に目を覚ました。
「紀子、大丈夫?」と私が聞くと、
「ええ、私は大丈夫。私のことよりお腹の赤ちゃんは?」と紀子は不安げに言った。
私が言葉に詰まると、
「赤ちゃんは、元気だよね?」
「紀子、許してくれ・・・俺が旅行へ行こうと言ったばかりに」
「嘘、嘘に決まっている。私の赤ちゃんを返して!」と紀子は泣き叫んだ。
一ヶ月後に紀子は退院をしたが、以前のような彼女の明るさに戻るのに、長い年月が必要であった。