リタ・スクラインという名の公爵令嬢のことは、いつかの夜会で姿を見かけたときから印象に残っていた。
自分の、保科裕人の記憶の中で強く残っている『矢野奏衣』の姿にそっくりだったからだ。
そして、先王の後を継いで王になり、どうしても結婚から逃れられないと悟ったとき、彼女の名前を出したのは紛れもなく俺のほう。
感情抜きの形ばかりの結婚なら、矢野さんに似ている相手がいいと思ってしまって。
……それが。
（まさか……この世界で、本物の矢野さんと再会することになるとは思わなかった）
謁見の間でのリタ嬢との対面は控えていた文官や衛兵の手前、手短に済ませてしまったから、どうしても再度顔を確認したくなって部屋を訪れたのだが……
そこで知った事実。
こんなことが起こる可能性を1ミリも考えていなかったから、衝撃と沸き起こる複雑な感情が混ざり合って、廊下を歩く足も速くなる。
リタ嬢の部屋＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
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