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「では、パンは私が焼こうか」
熱したフライパンにバターを溶かし、卵液がひたひたにしみ込んだ厚切りのパンを、彼が焼き始める。
甘く香ばしい匂いがキッチンに漂ってくると、すかさず彼がフライ返しでトーストをひっくり返した。
「いい匂い……」鼻の奥が甘い匂いに満たされて、お腹がまたくぅーと小さく鳴る。
「お待たせ。もう出来上がりだよ」
と、彼が私の頭を撫でると、焼き上がって焦げ目が程よく付いたフレンチトーストをお皿に盛り付けて、メープルシロップを上からとろりとかけた。
「わぁー、本当に美味しくできましたね」
マッシュポテトをスプーンですくい、お皿の横に添えると、華さんに教えられた所作を踏まえて丁寧に淹れたお茶を、テーブルに着いた彼に差し出した。
「君の淹れてくれたお茶も、とても美味いよ」
お茶を一口飲んだ彼が笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。甘いおやつにも合うよう、少し濃い目にしてみました」
「そんな風に旨みの加減もできるようになったのか、すごいな」
「いえ、お茶の旨みだなんて、華さんに比べたら、私はまだまだですから」
と、手を振って恐縮する。
「華さんももちろんだが、君のお茶にも、君にしか出せない味わいがあって、とても美味しいよ」
彼の言葉の温かみが、胸にじわりと沁みて広がっていく。
「嬉しい……。さっきのお砂糖のお話じゃないですが、このフレンチトーストも、大好きなあなたみたいに、とろけそうに甘いです……」
はにかみながら口にすると、
「……お礼に、甘いキスを」
唇でチュッと軽く触れられて、フレンチトーストの甘みがふわりと薫った……。