テラーノベル
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嬉々として答えるルティ様の姿に、泣きそうになる。前世とは全く異なる世界、パラレルワールドならいい。でももしそうじゃなくて、ヴィクトルがルティ様だった場合。ブリジットの手紙は嬉しくなかった、好きではなかった──と言うことなのだろう。
それがとても悲しくて辛かった。
海竜魚族の伝承を聞いて、本人に届いてない場合も今なら分かる。でもそれはないのだ。だって、私は何度かヴィクトル様に直接手渡しをしたのだから。
「くうん」
「ううん。なんでもないの」
私の機微に気づいたのか、モフモフの四足獣たちは私の頬を舐めた。なかなか鋭い。そして浮かれていたルティ様も、何やら察したのか笑顔から死にそうな顔に早変わりした。
「ハッ、……もしかして、手紙関係の怖い夢を?」
勘が良い。正直、伝えるかどうか悩んだが頷くことにした。
「怖い夢で……ルティ様にそっくりな人が、手紙を受け取っていたの。でも夢だし、ルティ様じゃなかったけど、その……人は喜んでなかったから、気になったの」
危なかった。
なんとか前世のことを言わずにすんだ。
「そんな。──っ、シズク、その夢は昼間だったかい?」
「えっと、はい?」
どうして昼間限定なのだろう。
何か心当たりがあるのか、考え込むルティ様を見て複雑な気持ちになった。前世のヴィクトル様であってほしいのか、それともよく似ている世界で別人であってほしいのか。私の中で答えは出なかった。
でもルティ様は意を決して口を開いた。
「シズクは《片翼》のことを調べていましたが、私──天狐族の能力については知っていますか?」
「能力?」
ドキリとした。主に種族独自の習性ばかりで、能力については全く調べていなかったのだ。
「天狐族は天候を操る力や治癒魔法、そして変化が得意なのです」
そう言ってボフンと音を立てて、ルティ様は真っ白なモフモフの四足獣に姿を変えた。傍にいるモフモフよりも一回り大きいけれど、全くもってそっくりだった。そして何より可愛い。
「どうですか、このように見たことのある人や獣なら──」
「もふもふ!」
「!?」
素晴らしい毛並みに触れたいと思い、思わずルティ様に抱きついてしまった。しかも勢いよく飛びついたので、ちょんと頬的な所に唇が触れてしまう。ちょっと恥ずかしかったが、嫌な気分にはならなかった。その後、ルティ様が正気に戻ったのは数分後だったけれど。
(あれ、どうしてこの話になったんだっけ?)
とても大事なことだった気がしたが、図書館に着いた頃には頭の中から疑問は抜け落ちていた。
***
その日は約束通り、雑貨屋で手紙セットを三つ、ポストカードを五種類買い、図書館では世界地図や地理の本を借りようとしたが、取り扱っていないとのことだった。
「国々の地形や地理など正確な物があったら、それだけで他国を責めるのに有効な情報になるため、出回っていないのです」
「!?」
元の世界では普通に店頭に置いてあったので、衝撃だった。しかしブリジットの世界を思い返すと彼女は第三王女だったので、地図や地理などの本を王室図書館で読むことができたが、庶民では手が届くものではないのだと今更ながらに気づく。
ちなみに一番知りたかったクレパルティ大国についてだが、古物商店でたまたま国の紋章を見つけたことで話を聞くことができた。「つい百年前までは国として名前がありましたよ」と店員さんが答えてくれた。そのことに驚きながらも、自分の記憶との違いに混乱してしまう。
(じゃあ、ブリジットが見た光景は? 天竜狐族が祖国を滅ぼしてはいなかった?)
その日は色々考えてしまい、四足獣のモフモフに抱きついて眠ることにした。翌日、モフモフたちから聞いたのか「ずるい、羨ましい」と言われたのはまた別の話だ。
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