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あずさ
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午後九時。
仕事終わりの街は、まだ人通りが多かった。
照は約束より三十分も早く公園へ来ていた。
ベンチへ腰を下ろし、何度も時間を確認する。
あと二十五分。
あと二十分。
こんなに落ち着かないのはいつぶりだろう。
「……帰りたい」
本音が漏れる。
帰ってしまえば、この関係は壊れない。
でも。
それじゃ何も変わらない。
ポケットの中で拳を強く握った。
────────
💛side
告白なんてしたことがない。
まして相手は、十年以上一緒にいる深澤。
断られたら。
気まずくなる。
今までみたいに笑えなくなる。
メンバーにも迷惑をかける。
分かってる。
全部分かってる。
それでも。
(もう隠せない)
“好き”
その一言が重すぎる。
毎日隣にいるから。
毎日笑うから。
毎日好きになるから。
これ以上抱えていたら、自分がおかしくなりそうだった。
「……照?」
聞き慣れた声。
顔を上げる。
少し走ってきたのか、肩で息をしている深澤が立っていた。
💜「ごめん、待った?」
💛「いや」
本当は三十分待っていた。
でも、そんなことは言わない。
💜「寒くない?」
💛「平気」
💜「そっか」
少しだけ沈黙が流れる。
昔なら。
こんな沈黙なんて気にならなかった。
なのに今日は違う。
何を話せばいいのか分からない。
────────
💜side
照の様子がおかしい。
連絡をくれたのは照なのに。
どこか緊張している。
視線もなかなか合わない。
「……どうした?」
聞いてみる。
照は少し笑った。
💛「いや」
💛「話したいことがあって」
その一言だけで、胸がざわつく。
(やっぱり)
好きな人の話。
きっとそうだ。
相談でもするのかな。
応援しなきゃ。
親友なんだから。
そう思うのに。
胸の奥では全然違う声が聞こえる。
(聞きたくない)
そんなこと思う自分に驚いた。
────────
二人は昔よく座っていたベンチへ腰を下ろす。
ブランコが風で小さく揺れる。
照明に照らされた夜の公園は、静かだった。
💜「懐かしいね」
💛「うん」
💜「ジュニアの頃さ」
💜「ここでよくアイス食べたじゃん」
💛「コンビニ寄ってな」
💜「照が毎回チョコで」
💛「お前がバニラ」
💜「覚えてるんだ」
💛「忘れるか」
ふっと笑い合う。
その笑顔を見た瞬間。
照は胸が締め付けられた。
(この笑顔を失うかもしれない)
そう思うだけで怖かった。
────────
💛side
「深澤」
名前を呼ぶ。
ふっかが振り向く。
その横顔が好きだった。
何年見ても飽きないくらい。
💛「……俺さ」
声が震える。
情けない。
筋トレしても。
ライブで何万人の前に立っても。
深澤一人に気持ちを伝える方が、何倍も怖い。
💜「うん」
優しい声。
待ってくれている。
逃げるな。
そう自分へ言い聞かせる。
💛「俺」
💛「好きな奴いる」
その言葉に。
ふっかは一瞬だけ笑顔を止めた。
でもすぐ笑ってみせる。
💜「……そっか」
💜「やっぱり」
胸が苦しい。
笑わなきゃ。
応援しなきゃ。
なのに。
💜「その人」
💜「羨ましいな」
照はゆっくり顔を上げた。
💛「え?」
💜「照ってさ」
💜「すごく優しいじゃん」
💜「ちゃんと相手のこと見てるし」
💜「だから」
💜「そんな人に好きになってもらえるなんて羨ましい」
その言葉が、照の最後の勇気を押した。
もう引き返せない。
💛「……その人は」
一度息を吸う。
震える声を必死に抑えながら。
照はまっすぐ深澤を見つめた。
💛「お前だよ」
その瞬間。
夜の公園から、すべての音が消えたような気がした。
ふっかの瞳がゆっくり大きく開いていく。
驚きと。
信じられないという表情。
照はもう目を逸らさなかった。
十年以上隠してきた想いが。
ようやく、深澤辰哉へ届いた瞬間だった。
コメント
2件
ふおおおおおおお! いったぁぁぁぁ!
ふたりとも、ずっと相手を想い合ってたんだなって思いました。照くんの「帰りたい」って漏らすところ、めちゃくちゃ胸が痛かったです…伝えたら終わってしまう関係が怖くて、でももう隠せなくて。ふっかさんの「羨ましいな」も切なすぎました。そんな優しい言葉が、照くんの背中を押したんだなって。公園の静けさに、告白の一言だけが響くラスト、すごく好きです。