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#SnowMan
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向井と合流し、三人揃ってトラムを降りる。
すると。
🩷「あれ、照たちじゃん! 偶然だなー!」
💛「お前ら、騒ぎまくってないだろうな?」
🩷「ん、んー?」
💜「あ、誤魔化してる。まあ、いいや。迷惑だけかけんなよ」
🧡「わかってるて。あれ、照兄なんそれ?」
💛「ん?」
向井の視線の先には、岩本の腰にぶら下げられている鍵。それは光を受けて時折キラリと光っている。
💛「これ、ワンダー・パビリオンってとこで作った」
🩷「え、作ったの!?」
💜「そう。なんか性格診断みたいなのやって、最後にもらえる鍵があんだけど、それを自分の好きなようにカスタマイズできんの」
🤍「カスタマイズ!? 僕やりたい!」
❤️「ワンダー・パビリオンってとこ。あっちの奥の方にあったから、行ってみたらいいよ」
🩷「サンキュー! じゃあ、行ってくる!」
💛「あっ。だから走んな……」
途中まで聞こえたけれど岩本の小言には無視を決め込み、三人はまた走り始めた。
教えてもらった方向へ進んでいくと、ほどなくして白亜の大きな建物が見えてくる。
幾重にも重なった壁は波打つような曲線を描き、所々に嵌め込まれた縦長の窓には金色の装飾が施されている。建物の正面や周囲には濃い青の旗が幾つも掲げられ、白を基調とした外観の中でよく映えていた。
🤍「あれだね、ワンダー・パビリオンって書いてある!」
🩷「でっか!」
🧡「なんかぐにゃぐにゃしてんなー!」
教えてもらった方向へ進んでいくと、ほどなくして白く大きな建物が見えてくる。
《WONDER PAVILION》と書かれているからここで間違いないだろうと、建物の中へと入って行った。
中へ入ると、外観とは打って変わって冒険者ギルドを思わせる空間が広がっていた。石造りの壁には大きな地図や依頼書らしき紙が貼られ、武器や盾、冒険道具を模した装飾があちこちに飾られている。
🩷「うわ、ギルドじゃん!」
🧡「ほんまにゲームの世界みたいやな」
🤍「受付あそこじゃない? 行こ!」
ラウールが指さした先には、大きな木製のカウンター。その向こうには、ギルドの職員を思わせる衣装を身につけた女性キャストが立っていた。
「いらっしゃいませ。あなたの選択で未来が変わる、ワンダー・パビリオンへようこそ。冒険者登録をお望みですか?」
🤍「冒険者、登録?」
「こちらでは、簡単な質問にお答えいただくことで皆様の冒険者としての適性を診断いたします。診断が終わりましたら、結果を記した冒険者証をお渡しいたしますので、そちらを持って奥の工房へお進みください」
🤍「それで鍵作れるの?」
「はい。工房では、診断結果をもとに皆様だけの鍵をお作りいただけます」
🤍「いいね! ワクワクしてきた!」
説明を聞き終えるより早いくらいの勢いで三人がわいわいと盛り上がり始めると、女性キャストは微笑みながら受付を進めていった。
「それでは、受付横の扉からお進みください。良き冒険を」
示された木製の扉を潜り抜けると、洞窟の中に入る。洞窟には松明が揺らめき、一本の道を歩いて行く。少しすると道が5つに分かれており、分かれ道の手前に木製の看板が立てられている。
🤍「この先は己の感覚を信じ、一人ずつ進め。辿り着いた先で冒険者としての証が手に入る。だって」
🧡「一人ずつなんやな」
🩷「じゃあ、また後でなー!」
🧡「さっくん、ゴールで待っとってよ!」
🩷「おう! んじゃ俺、ここ!」
迷う素振りもなく、佐久間は目の前にあった道へ飛び込んでいく。
🧡「はやっ! 全っ然、考えへんやん!」
🤍「己の感覚を信じろって書いてあったからね」
🧡「せやね」
🤍「じゃあ僕は……こっちにしよ」
🧡「ほな、俺はこっち! ラウ、またな」
それぞれ違う道を選び、三人は一旦そこで別れることになった。
ラウールが選んだ道は、人ひとりが余裕を持って歩ける程度の細い洞窟だった。壁に取り付けられた松明の炎を頼りに進んでいくと、ほどなくして行き止まりに辿り着く。
そこにあったのは、古びた木製の扉。
🤍「ここに入るのかな?」
取っ手に手をかけて扉を開く。
扉を開けて中へ入ると、そこは森の中になっていた。中央奥に置かれているのは、腰ほどの高さの石造りの台座。それ以外には何もない。
🤍「……これだけ?」
ラウールが不思議そうに辺りを見回した、その時だった。
ふわり、と頭上に淡い光が灯った。
🤍「わっ」
オーブのような光の球が一つ、どこからともなく現れる。ゆっくりと宙を漂いながらラウールの周囲を回った光は、そのまま中央の台座へと近づいていった。
そして、吸い込まれるようにその中へ消える。
途端に台座に刻まれていた紋様が淡く輝き、ラウールの目の前に光の文字が浮かび上がった。
《第一の選択》
長い旅の途中、あなたは深い森で道に迷った。
日が暮れるまで、もう時間がない。あなたならどうする?
1 来た道を引き返す
2 高い場所へ登り、周囲を確かめる
3 自分の感覚を信じて先へ進む
4 安全な場所を探し、朝を待つ
5 仲間と相談して進む道を決める
🤍「へぇー。こういう感じなんだ」
台座にも同じ五つの選択肢が浮かび上がっている。
🤍「僕だったら……これかな」
一つを選んで触れると、その文字が淡く光った。すると、ラウールの右側の景色に入って来た時と同じような扉が出現して開き、台座から出てきた光がふわーっと扉に消えていったのでそちらに足を運ぶ。
中に入ると、今度は遺跡の中に変わる。
🤍「おお、冒険してる感じある」
するとまたオーブの光が現われてふわーっと部屋の中を一周すると、中央の台座に入っていった。
🤍「はいはいはいはい。もう分かったよ。これで答えていけばいいんだね」
《第二の選択》
冒険の果て、あなたは古い宝箱を見つけた。
しかし、鍵は壊れ、どうしても開かない。あなたならどうする?
1 力ずくで開ける
2 周囲を探して別の鍵を見つける
3 壊れた鍵を修理する
4 自分で新しい鍵を作る
5 今は諦め、宝箱を持ち帰る
🤍「なるほどね。1番は岩本くんっぽいな。いや、舘さんも意外と力づくで開けそう。2番はふっかさん。3番はー、阿部ちゃんかな。ちゃんとその鍵を使いそうだもんね。僕は4番だな。すぐ作っちゃう。5番はしょっぴー。というか、しょっぴーは開かないならいらねって言いそう」
そんなことを思って笑いながら、選んだ4番に触れるとまた文字が淡く光った。オーブの光がラウールの後方の扉に向かい、そちらに入っていく。 その後も、湖の畔、火山口、賑わう街の中、海上を進む船の上、広大な砂漠、そして霊峰を思わせる岩肌の山へと、扉を潜るたびに景色を変えながら進んでいく。
霊峰での設問に答え、右側に現れた扉を開く。
その先へ一歩足を踏み出した瞬間、ラウールは思わず立ち止まった。
🤍「……うわぁ」
そこに広がっていたのは、雲の上だった。
今までの部屋とは比べものにならないほど広い。頭上には天井らしいものがなく、どこまでも澄み渡る青空が広がっている。真っ白な雲が遥か眼下まで埋め尽くし、その中から幾つもの山々が島のように顔を覗かせていた。遠くには、雲海から聳え立つ山の頂に、白い城のような建物まで見える。
空からは柔らかな陽光が降り注ぎ、白を基調とした柱やアーチを淡く照らしている。壁らしい壁はなく、細く優美な柱が幾つも並び、その間からどこまでも続く天空を望むことができた。
足元は淡い青を帯びた透明感のある床。鏡のような表面には空と雲が映り込み、まるで本当に空の上に立っているようだった。その上を金色の細い装飾線が幾重にも走り、中央には大きな紋様を描いている。
そして広い空間には、これまで何度も見てきたものとよく似た台座が五つ。半円を描くように、それぞれ少し離れて置かれていた。
🤍「すご……最後だけめちゃくちゃ豪華じゃん」
🩷「だろー!」
🤍「うわっ!」
突然聞こえた声に肩を跳ねさせて振り向く。
少し離れた台座の傍から、佐久間がニコニコしながら手を振っていた。
🤍「ビックリしたー! もう、やめてよー」
🩷「にゃはは!」
🤍「佐久間くん、もう終わってたんだ」
🩷「直感でポンポンって答えたら着いてた」
🤍「佐久間くんらしいね」
🩷「ラウールも最後のやって来たら? あ、あそこにオーブ入ってったぞ」
🤍「あ、見てなかった。いってくるー」
佐久間が指差していたのは右から二番目で、ラウールはその台座の方に向かって行った。
台座の画面に映し出されているのは、これまでの設問とは違う。
画面には、「あなたは《錬金術師》」という文字と、いくつかの薬瓶の絵が浮かび上がっている。その絵の下には更に「知ることを形にし、新たな可能性を生み出す者」という説明文。画面に波紋が広がると、それまで映っていた文字と絵が消え、今度はワンダーカラーという文字が大きく浮かんだ。その下には宝石の名前、宝石のような石、そして文字が書かれている。
サファイア×タンザナイトと書かれた下には、青い楕円形の宝石と、青紫色に淡く煌めく菱形の宝石が並んでいる。
サファイアの下には「知恵・真理」、タンザナイトの下には「直感・神秘」。
もう一度、波紋が広がって宝石たちが消えると、また大きく文字が浮かび上がる。
これまで出てきた「錬金術師 サファイア×タンザナイト」と書かれたその下には、また説明文が浮かび上がった。
「物事を理解し分析する力と、そこから新しいものを生み出す発想力を持つ」。これがどうやら、ラウールの診断結果のようだ。
そしてオーブの光が現れると、表示されていた文字が次々とその中へ吸い込まれていく。すべてを取り込んだオーブは台座に沿うように真っすぐ降りていき、正面下部へと吸い込まれた。
直後、カチリ、と小さな音がして台座の一部が開く。
そこに収められていたのは、一本の鍵と一枚のカードだった。
手に取ってみると、長さは手のひらより少し大きい程度。使い込まれたような風合いの銀色をしており、持ち手には蔓草を思わせる繊細な装飾が円を描くように施されている。その中央には、診断結果を象徴するように深い青から青紫へと色を変える宝石がひとつ嵌め込まれていた。
鍵の先端近くには《WANDER》の文字を模したような意匠まで組み込まれている。
🤍「おお、カッコいい!」
てっきりこれが完成品なのかと思ったけれど、岩本が持っていた鍵とは少し違う。装飾もどこか物足りなく、まだ手を加える余地が残されているように見えた。
🩷「出てきたー?」
🤍「うん! これ!」
🩷「おお、いい色だな。職業は?」
🤍「僕はね、錬金術師だった。このカードがそうかな。佐久間くんは?」
🩷「俺はこれ!」
🤍「色がすでに佐久間くんだ!」
🩷「だろー! 職業はね、吟遊詩人だって」
🤍「めっちゃピッタリじゃん! すごいね、この診断」
そうして話していると、左の方の扉が開いて向井が中に入って来た。
🤍「お、康二くん来たー!」
🩷「こーじは悩んだろ」
🧡「正直、悩んだ」
🩷「やっぱりな!」
🤍「そこの台座で最終的な診断結果が出るから、してきたらいいよ」
言われるままに台座に近づき、少しすると台座から出てきた鍵とカードを受け取って来た向井と合流するとその部屋から出て行った。
天空の部屋を出て暗い通路を進んでいくと、その先に重厚な木製の扉が現れる。扉の上には《WORKSHOP》の文字と、鍵と歯車を組み合わせた紋章が掲げられていた。
佐久間が真っ先に扉を押し開ける。
途端、カン、カン、と金属を打つ音が聞こえてきた。
それまでの幻想的な景色とは一転して、高い天井からは幾重もの金属環を組み合わせた照明が下がり、その中央では青い結晶が淡く輝いている。広い室内には木製の作業台がいくつも並び、その上には工具や細かな金属部品、色とりどりの石や装飾品が所狭しと置かれていた。
そして何より目を引くのは、奥の壁一面にずらりと並んだ濃紺の旗だ。それぞれの職業名が金色の文字で記され、その下には剣や盾、杖、薬瓶といった職業を象徴する品と説明が飾られている。さらにその足元には、小さな引き出しや棚が幾段にも並び、鍵を飾るためのパーツが収められていた。
🩷「おおー、めっちゃ楽しそう!」
「お疲れ様でした。冒険の証は、無事に手に入れられましたか?」
声をかけてきたのは、工房のキャストらしい男性だった。生成りのシャツに濃いブラウンのベストを重ね、腰には革製の作業用エプロン。ベルトには小さな工具やポーチが下がっていて、受付の冒険者らしい装いとは違い、こちらは職人を思わせる格好をしている。
🤍「はい! すごいですね、めっちゃ当たってました!」
「それは良かった。こちらでは、受け取った鍵、通称《ワンダーキー》をご自身でカスタマイズすることができます。パーツはたくさん用意してますので、何をどのように配置して作っていただいても構いません。もし、自由だと難しいという場合は完成見本もいくつかご用意しておりますので、机の上のものをご覧ください」
🩷「どんだけ付けてもいいんですか?」
「はい。付け替えパーツなどもございますので、世界で一つだけの鍵になりますよ。完成しましたら、あちらで仕上げを行いますので、お持ちください」
男性キャストが手のひらで指し示したところは出口付近で、そこには魔法陣が描かれている台座が置かれていた。
「困ったことがありましたら、お気軽に声をかけてくださいね」
席に案内されるなり、すぐにパーツを見に行く。机の上には「基本パーツ」と書かれたケースと、「職業パーツ」と書かれたケースが置かれている。壁際の棚の方に行けば、「装飾パーツ」「稼働パーツ」「宝石」「ギミック」などと何百種類ものパーツが所せましと置かれている。
🩷「ヤバ。これだけあったら確かに迷うな」
🤍「テーマを決めてから作った方が良さそう。パーツ選びだけでもすっごい時間かかっちゃう」
🧡「んー、俺やったらこの辺やな!」
それぞれパーツを選び、自身の机に持って行って作業をし始めた。
ラウールが最初に選んだのは、細い金属のリングがいくつか重なったパーツだった。手に取ってみると、それぞれの輪は独立していて、指先で押せばくるりと回転する。
🤍「へぇ、廻るんだ」
試しに鍵の持ち手へ重ねてみる。中央の宝石を取り囲むように嵌め込めば、まるで小さな天球儀のようになった。
🧡「何それ、めっちゃカッコええやん」
🤍「でしょ? でもこれ、廻るだけなんだよね」
くるりと一つの輪を回してみる。
せっかくなら、全部一緒に動いた方が面白い。
そう思って今度は《稼働パーツ》のケースを覗き込み、小さな歯車をいくつか持ってくる。大きさの違うものを机の上に並べ、一つを指で回しては隣に別の歯車を噛み合わせる。
🤍「こうして……こっちが廻ったら、これも廻るね」
🧡「ラウ。何、作っとん?」
🤍「まだ分かんない。でも、全部動くようにしたい」
🩷「もう目的、変わってね?」
向かいの席から佐久間が笑う。
🤍「え、だって歯車とかあったら動かしたいでしょ」
ラウールは気にすることなく、今度はリングと歯車を繋ぐための細い軸を探し始めた。
歯車を鍵の根元に配置し、そこから小さな連動軸を伸ばしてリングへ繋げる。試しに一番外側の輪を回してみると、カチ、カチ、と小さな音を立てて歯車が回った。それにつられるように内側のリングも別々の方向へゆっくり動いていく。
🤍「おおー。動いた!」
🩷「すげえ! 何それ!」
嬉しそうに何度か回していたラウールだったが、ふと手を止めた。
🤍「んー、こう動くんだったらここに何か足したいな」
天球儀のようになった持ち手を横から眺め、首を傾げる。
そこで目に留まったのが、少し離れた《装飾パーツ》の棚に並んでいる翼だった。手に取ってみる。けれど、ラウールが思い描いているようなものではない。どうしようかと悩んだ末に、ラウールは翼を手に取って机に戻ると、じっとその翼と歯車を見比べる。
🤍「うん、いけそう」
それから向井に背を向けると手のひらに白い光が収束し、光が消えるとそこには、細長い金属の羽根を幾重にも重ねた、小さな機械仕掛けの翼が現れた。羽根の根元はそれぞれ小さな関節で繋がれており、閉じれば一枚ずつ重なるように細く折り畳まれ、広げれば鳥の翼のような形になる。
🤍「よーし、いい感じー!」
何度か開閉させて動きを確かめると、ラウールはそれを鍵の持ち手の側面へ取り付けた。
翼の付け根を、先ほど組み込んだ歯車の一つに噛み合わせる。試しに側面の歯車を回してみると、いくつもの歯車が連動して回転し、天球儀の輪がそれぞれ別方向へ動き始めた。やがて小さな金属音とともに、畳まれていた羽根が根元から順に開いていく。
🤍「うーん、いいね。これでかんっぺき」
最後の一枚が開き切れば、鍵の側面には金属の翼が綺麗に広がっていた。
🩷「お前、今、異能使ったろ」
🤍「わ、佐久間くん見てたの?」
🩷「いや、俺、正面だから見えるっつーの」
🤍「だって欲しいパーツなかったんだもーん。でも、すっごいの出来たよ。僕、仕上げしてもらってくる!」
完成した鍵を手に、ラウールは出口付近に置かれた台座の方へ向かった。
🤍「できましたー!」
「お疲れ様でした。それでは最後の仕上げをいたしますので、鍵をお預かりしますね」
🤍「はーい」
差し出した鍵を男性キャストが受け取り、魔法陣の描かれた台座の中央へ置き、台座の端に触れる。
すると魔法陣の外周に淡い光が灯り、描かれた紋様を辿るようにゆっくりと広がっていった。
やがて光は中央に置かれた鍵へと集まり、その全体を包み込む。銀色の表面を薄い光が纏い、複雑に組み合わされたリングを抜け、歯車の隙間へ入り込み、折り畳まれた機械仕掛けの翼まで余すところなく満たしていく。
光は一度、鍵全体を覆うほど強くなり―――次の瞬間、無数の細かな光の粒となって弾けた。
その一部が台座の魔法陣へ吸い込まれるように消えていき、少しすると魔法陣の光が収まった。
「お待たせしました。完成です」
手に取ってみると、さきほどとは違って微量の輝きが見て取れる。
🤍「わ、キラキラしてる」
「こちらは、工房で鍵に加工をした方のみの仕様となっております」
🤍「なるほどねー。工房に寄らなかったら、キラキラしないんだ」
光に翳しながら鍵を傾けると、その角度に合わせて細かな光がちらちらと瞬く。古びた銀色の風合いはそのままなのに、光が当たったところだけが星屑を散らしたように煌めいていた。
🤍「いいじゃん。こっちもちゃんと動くかな」
今度は側面に取り付けた歯車に指をかけ、くるりと回す。
カチ、カチ、と小気味よい音を立てて複数の歯車が連動し、中央の宝石を囲むリングがそれぞれ異なる方向へ回り始める。続いて畳まれていた金属の羽根が一枚ずつ開き、最後には片翼が大きく広がった。
🤍「うん、完璧!」
満足そうに笑っていると、後ろから佐久間が覗き込んでくる。
🩷「いいな! 俺もキラキラにしてもらお!」
🧡「俺も完成したでー!」
それぞれ鍵を手にした二人も、続けて仕上げ台へと向かっていった。
ワンダー・パビリオンでの鍵のカスタマイズが思ったよりも時間がかかってしまい、外に出た頃にはもう太陽が傾きかけていた。オレンジ色から濃紺へと切り替わる時間帯。パークの雰囲気は、昼間とは違って幻想的な雰囲気が漂っている。
それでもまだ時間はあるからどうしようかと思っていると、佐久間のスマホが着信を知らせた。
相手は、阿部。
🩷「阿部ちゃん? どした?」
💚『……佐久間たち、異能って使える?』
🩷「へ? いや、ここでは使ってないけど……あ、さっきラウールは使ってたな」
🤍「ん? なんの話?」
🩷「異能、使えるかって、阿部ちゃんが。あ、スピーカーにすんね」
耳からスマホを離してスピーカーに切り替える。
🤍「さっきは普通に使えたよ」
💚『そうか……佐久間と康二は?』
🩷「ちょっと待ってね……あれ?」
🤍「どうしたの? 佐久間くん」
🩷「いや、ちょっとそこまで粒子転移しようかと思ったんだけど、座標が認識されない」
🧡「……俺も。岩は出せる、けど、動かへん」
💚『佐久間達もか……じゃあ、偶然じゃない』
🩷「何かあったの?」
💚『俺たちの異能、弱くなってる気がするんだ』
阿部の言葉を聞きながら、ラウールは先ほど作った自分の鍵を見つめていた。
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