テラーノベル
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2日後――
甲板で干物みたいになっている俺に、ヨハンナが声をかける。
「王子、お前なんかちょっと痩せてないか?」
「連日フリーデにいじめられている。勉強いっぱいさせられた後だと、大して腹減ってないから飯も食えない」
「勉強ダイエットか……」
「ストレスダイエットとも言うかもしれん」
そんなことを話していると、恐怖の声が響く。
「王子~お勉強の時間ですよ~」
「まずい、逃げよう」
慌てて逃げ出すも、所詮は狭い船の中。あっさりと見つかり今日も勉強部屋へと監禁される。
俺はデスクの上に広げられた問題を前に、脳みそが全く動いていなかった。
こういう知力ステータス上げは、SDアニメーションで成功か失敗か出るだけでいいだろう。
俺は隣に座るフリーデをチラリと見やる。凛々しい金髪騎士は俺の勉強と並行して、問題の作成を行っている。俺の為というのはわかるが、もう少しゆっくりしていただきたい。
その視線に気づいて、彼女はこちらを見返す。
「いかがなさいましたか?」
「……フリーデってイケメンだよね」
言われ慣れているのか、彼女はクスリと笑みを浮かべる。
「実は女性騎士から、何度も告白を受けているんですよ」
「羨ましい」
「そうですか?」
「身長高いし、鎧着てると胸もよくわかんなくなるもんね」
「もうモテて嬉しいという歳でもありませんよ。それに、変なのを引き寄せることもありますし……」
あ、ちょっと地雷踏んだっぽいな。
しかし、魔族と戦っている時の勇ましさは凄かった。まるで勇者みたいに剣を振るってたし。
ゲームのパッケージに、俺と彼女が写っていたら100人中100人が彼女を主人公だと思うだろう。
俺はフリーデの黒の騎士服を見やる。黒のネクタイに漆黒のトレンチコートみたいなジャケット。一応下はスカードだが、ジャケットが長丈なので、ほとんど見えない。こんなの男装とかわらんだろ。
「王子、お勉強の方は進んでいますか?」
「あっうん……」
「今日はリガルド帝国の法律関係を中心にご説明します」
うわ、死ぬほどおもんなさそう。
それから3時間後――
フリーデが、ハイライトの消えた目をしている俺を心配する。
「王子大丈夫ですか? 目が虚ろになっていますよ……。あとこの3時間で、明らかに痩せているのですが……」
「いっぱい知識が入ってきて、カロリーが押し出されてる」
「あなたのカロリーは、一体どういう概念なんですか?」
「勉強キライ、つまんない」
「そうおっしゃらず。勉学はいずれ身を助けます」
「いずれじゃなくて、今助けてほしい」
しおしおになっていく俺を見て、フリーデは困りましたね……と考えた後、ピンと閃く。
「少々お待ち下さい」
彼女は部屋を出ていき、手にあるものを持って戻ってきた。
「王子。とても甘いものを持ってまいりました。勉強が終われば、こちらをお召し上がりください」
100
144
1,679
宮毘羅
20
差し出されたのは、ひんやりとしたバニラアイス。
どうやらアメとムチ作戦を思いついたらしい。
「……フリーデ、そなたは余を幼児と勘違いしておらぬか? 釣り針にしても、もう少し面白い餌にしてもらわぬと」
「も、申し訳ございません。私はユーモアのようなセンスを全く持ち合わせておらず……糖分くらいしかご用意できませんでした」
そりゃ真面目な騎士家系のエリートだからな。しかもバルト将軍みたいな超怖そうなのが父親だし。そんな家系で、いきなりボケろと言われても無理があるだろう。
その時、ポトンと音を立てて、アイスが彼女の胸元に滑り落ちた。
「あ、しまった」
彼女は慌てて騎士服のジャケットを脱ぐ。そこで露わになった双丘に思わず声が漏れる。
「でっか!」
黒のブラウスを突き上げる胸。それが彼女の凛々しい顔とアンバランスで、思わずガン見してしまう。
騎士としての鍛え抜かれたしなやかな肉体。だが、想像していたよりもずっと女らしく、豊かな肉感をしていた。
「………フリーデ。今すぐ水着に着替えてたもれ。そうしたらやる気が出る気がする」
「ほ、本当ですか?」
「うむ。すぐに頼む」
数分後、アイスクリームをしゃくしゃく食べながら待っていると、フリーデが戻ってきた。
騎士服を脱ぎ、今は大きめのタオルで全身をぐるぐる巻きにしている。
「風呂上がりか?」
「は、恥ずかしいのです」
彼女はゆっくりと、まるで重い鎧を外すようにタオルを開いていく。
帝国の将軍として勇ましく戦うその姿から、しばしば「もしかして男なのでは?」とまで噂されていたフリーデ。
だが、実際には「脱いだら凄い」としか言いようのない女性だった。
青のビキニに包まれた身体は、想像以上に女性らしく、柔らかく丸みを帯びたラインを描いている。
程よく鍛えられた体に、しなやかな曲線。特に胸元は水着の布地を限界まで押し上げるほどの豊かさを持ち、Y字の谷間が出来ている。
そして何より、スラリと伸びた脚が印象的だ。俺の脚の長さの1.5倍はあろうかという長さで、普段の鎧姿では決して見えない女性としての魅力が存分に溢れていた。
「あ、あの……屋内で水着というのは、やはり気恥ずかしいもので……」
「そう? 船の中なんて、実質水の中みたいなもんでしょ」
「そ、そうでしょうか……?」
フリーデはそわそわしながら、俺の隣の椅子に腰を下ろす。
目線の高さがちょうど彼女の胸元と合ってしまい、思わず視線が吸い寄せられる。
「あ、あまりジロジロ見られますと……」
「ダメ?」
「いえ、ダメというわけでは……ないのですが、その……傷も多い体ですので」
そう言われて改めて彼女の体を見ても、大きな傷痕は見当たらない。
「綺麗な体だね」
「…………あ、あまり歳上をからかわないで下さい」
フリーデは目を伏せ、赤くなった頬に続き、耳の先まで真っ赤になっていく。
カッコいい女性が照れる姿というのは可愛らしい。
「フリーデは……あの件があるから、ちょっとエッチなことは嫌かなって思ったんだけど」
「い、いえ……! あれは……あの悪魔のような男だったから嫌だっただけで……。王子にしていただけるのなら、むしろ……光栄です」
声が細くなっていく。だけど、言葉の中にはしっかりとした意志があった。
「フリーデ、俺はじゃれ合う時に無茶を言うこともある。でも嫌なときはちゃんと嫌って言っていいから」
「……ヨハンナ船長と、そういうスキンシップをしているところは見ました」
「うん。あいつは嫌なときは嫌って言うし、俺のことデブとか豚とか言う。でも、そこが気に入ってるんだ。俺の言いなりなんかになってほしくない。俺の側にいる人は、気軽に俺に痩せろって言えるくらいの人がいいんだ」
「…………わ、わかります。距離感の問題ですよね。気軽に話あえるような」
「そうそう。俺が、ぐへへ、余は王子だ抱かせろって強引に迫ったら、それこそドリコと同じになっちゃう」
「……もちろんです。その……私にも遠慮なく要望を言ってもらいたいです。王子の要望でしたら、なんでも聞いていきたいです。決して権力を恐れているわけではなく、あなたに公私ともに……仕えたいと思っています」
尻すぼみになって、消え入りそうな声。
落ち着きなく、ひっきりなしに自身の胸元と髪を気にしている。
帝国軍の「鋼鉄の将軍」として知られる彼女が、今はあまりにも可愛い生き物に見えた。
フリーデはそっと椅子を寄せてきて、肩と肩をくっつける。
吐息がかかるほど近い。とてもじゃないが勉強をする距離感じゃない。
「……お勉強、いたしましょうか。王子が正解できたら、アイスを食べましょう」
「アイス、こぼすかも」
「た、食べ方は……自由ですので。べ、別に……何に塗っても構いませんし……」
「おっぱいに?」
「ちょっ、直接的すぎます……っ!」
「ダメ?」
「……す、好きにして下さい」
お許しも出たし、よーし、全問正解目指して頑張るか。
その後、フリーデの絶妙というか、ほぼ答えみたいなヒントもあって、なんとか全問正解に成功。
そして、彼女は頬を真っ赤に染めながら、自ら胸元にアイスを塗った。
「ど、どうぞ……ご賞味ください。王子……」
「これは良いアメ」
二人で甘くて冷たいアイスを分け合い、自然と肩の力も抜けていった。
それ以降、俺たちの勉強時間には「甘いご褒美」が欠かせないルールになったのだった。
コメント
1件
あああもう!!フリーデのギャップ萌えがやばすぎる!!😭💕 普段は凛々しい騎士様なのに水着姿で照れてるとことか、アイス塗っちゃうとことか、王子への想いが溢れててもうキュンが止まらない!!「胸元にアイスを塗る」ってまさかそんなご褒美があるとは思わなくて鼻血出そうになったわ!!ふたりの距離が縮まった勉強ルール、この先もずっと続いてほしい…推せる…!🌟✨