テラーノベル
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……いい、かな。
会っても大丈夫かな、
のろのろとペンを持ち上げた。
うん。会ってみたい。
どこ集合にしようか。
ていうか、お互いがどこに住んでるかも知らないね。
ラナンディア国とキャペカジア国の間にある噴水のところとかどうかな?
ラナンディア国は自分の国。キャペカジア国は対立している国だ。国境にひとつ、大きな噴水がある。
相手がどこに住んでいるのかも分からないから、とりあえず絶対に分かるであろう場所を選択した。
使用人に手渡した翌日、思いのほか早く返事が届いた。
封を開けると、見慣れた柔らかい文字が並んでいたが、どこか少し急いで書いたような、筆圧の揺れがあった。
よかった。嬉しいな。
噴水のところで大丈夫だよ。
来週の水曜日のお昼はどうかな?
楽しみにしてるね。
その一行のあとに、少し間を空けてから書き足したような一文が続いていた。
あと、ひとつだけ。
どんな見た目でも、驚かないでくれると助かる。
眉がわずかに動いた。「見た目」という言い回しが引っかかる。まるで、自分の外見に何か特別なことがあるかのような書き方だった。
けれど深く考える前に、指折り数えてみれば、水曜まであと五日しかなかった。
五日というのは、支度をするには短く、覚悟を決めるには長すぎる時間だった。
当日の朝、珍しくクローゼットの前で立ち尽くしていた。別に何を着ていくとも決めていなかったのだが、
「相手がわざわざ会いたいと言ったのだから、それなりの格好をするべきなのでは」
という考えがふと頭をよぎった。
結局、黒のハイネックにワイドパンツ、足元はいつものブーツ。
口癖のように「まあいいか」と呟いて、髪だけは一応、いつもより少しだけ整えた。
噴水は国境のちょうど真ん中、石造りの台座から高く水が上がる古い遺構で、両国を行き来する商人や旅人が時おり足を休めている場所だった。正午を少し過ぎた頃。辿り着いたとき、そこにはまだ誰もいなかった。
噴水の飛沫が陽光にきらめいて、水音だけがやけに大きく響いている。周囲に人影はまばらで、商人の荷車が遠くに一台見えるくらいだった。
ここだけくり抜けば、平和な世界なのになぁ。
噴水の縁に腰を下ろして、ぼんやりと水面を眺めていた。約束の正午はとうに過ぎている。風が髪をふわりと攫って、遠くから馬のいななきが聞こえた。
そのとき、石畳を踏む足音が近づいてきた。軽い歩調で、けれど少し急いでいるようなリズム。音のする方へ目を向ければ、噴水の向こう側からこちらへ回り込んでくる人影がひとつ。
歩き方がどこか育ちの良さを滲ませていた。年の頃は自分と同じくらいか、少し下か。柔らかな光を含んだ瞳が自分の姿を捉えた瞬間、その足がぴたりと止まった。
息をひとつ整えてから、小さめの声で。
「……手紙の人?」
噴き上がる水越しに見るその顔は、文面から想像していたよりもずっと端正で、そしてその表情にはどこか緊張の色が浮かんでいた。
「うん、そう。 3ヶ月くらいやりとりしてる……合ってる?」
のりもちさん
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コメント
1件
**寺島あおいです🤍** いよいよ会う日が来ましたね…! 手紙のやり取りから約束を交わして、「見た目に驚かないでほしい」という一文がすごく気になります。五日間という「準備には短く、覚悟には長すぎる」時間の感覚、すごく分かります。そして噴水で待つ緊張の中、あの柔らかな瞳の相手が現れて…。お互いの歩き方や声のトーンで緊張が伝わってくる描写、とても好きです。続きが気になります!