テラーノベル
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君に会いたい。
そう思ったのはこれで何度目だろう、
何度思ったって、願ったって、叶うはずもないのに、
其れでも、君に会いたい。
何度神に願ったって、仏に願ったって、
叶いやしなかったこれが、こんなところで願って叶うはずもないのに。
それでも、
其れでも願ってしまう。
最後に君と見たこの桜の樹の下で、
毎年毎年願ってしまう。
どの木よりも大きいこの木を見てしまうと
願わずにはいられないのだ。
君も、僕も、愛し合っていた、
けれども、現実は非情なもので、幸せだった僕らを引き離した。
失われてしまったものは、二度とは戻らない、そんな事はわかっているのだ、理解っているはずなのだ。
其れでもやはり願わずには居られないのだ。
これが、きっと人の運命なのだろう。
頭でわかっていても、心には叶いやしないのだ。
其れが人間という生き物なのだ。
何時だっだかなど、もう覚えてやいないが君は
「人とは矛盾して生きてゆくものなのです」
と言った。
嗚呼けれども、もう僕は、そういった時の、君の声も、顔も、覚えてやいないのだ。
ただただ、君が、君という人間が、そう言ったという事実だけ、覚えているのだ。
僕は、其れが、其の事実が、とても、悔しく、辛く、悲しい、けれど、其れでも、其れでも僕は君が言った通り、矛盾しながら、生きてゆく。
嗚呼今年も桜が散るまた来年会いに来よう。
そして、いつか恥じる必要のない姿で
直接、君に会って、伝えよう。
ずっと愛していた、と、会いたかった、と、ずっと待たせてごめん、と、これからはもうずっと一緒だよ、と。真っ直ぐに君に伝えよう。
昔気恥ずかしくて言えなかったことを、
だから、だからもう少しだけそちらで待っていてくれ。
私も愛しています。
ずっと、待っていますから。
懐かしい声が聴こえた気がした。
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