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逝きかた相談所

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逝きかた相談所

2 - 第2話 琴野真央(21)

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2025年02月16日

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「はぁ………」

 私・琴野真央(21)は気弱な性格だ。学生時代は1軍女子におどおどし続け

 て、社会人になって就職してからも上司の機嫌を伺ってばっかり。自分の事

 だから直せよって話なんだけど、どうしても直せない。

 会社からの帰り道、駅のホーム。都会は自殺防止のために壁?が付いてるみ

 たいだけど、ここは田舎だからそんなものはない。

 ………落ちようと思えば、落ちることができる。


「…死んじゃおうかな」


 そう、呟いたときだった。


『いらっしゃい』


 声とともに、私の前に現れたのは……。


「…ここ、どこよ?」

 すっとんきょうな声が出た。森の中…?目の前には白い壁のきれいな建物が

 ある。なにこれ……。


『逝きかた相談所』


 そこには、そんな立て札があった。

「逝きかたって……それってつまり、死にかたってこと?」

 今は帰るしかないんだし、ちょっと寄り道してもいいかも。

 そんな軽い気持ちで、相談所の扉を開けた。


♢♢♢


「琴野真央様。当相談所にお越しいただき、誠にありがとうございます」

「…え?」

 そこには、ニコニコと愛想のいい数人の大人たちがいた。いや、私も大人

 なんだけど、この人たちには、私にはない……なんというか、笑顔の威圧感

 があった。

「では、貴方様のご相談は私が」

 進み出たのは、怖いくらい笑顔の男性。三十代半ばかな…と、呑気なことを

 考えていた。

 あれよあれよと男性と向かい合わせのテーブルに座らされ、何かが始まる。


「死にたいと思っていますね」

「……っ!」


 息を呑む。なんでそのことを…いや、それよりさっき、私の名前言って……。

 頭の中がはてなマークで埋め尽くされる。その時、男性が2枚の紙を差し

 出した。

「当館のプランは主に2つ。まずこちら、『らくらく事故死コース』、そして

 こちらの『確実自殺コース』。我々は貴方様の要望に応え、最も素晴

 らしい逝きかたをセッティングします」

「そんなのって……」

 そんなのあるわけない。そんなこと勧める相談所があるわけない…そう思い

 つつも、真央の心は紙の中に引き込まれていった。

「……私、『らくらく事故死コース』がいいです」

「左様ですか。でしたら、いくつかあります。事故死コースは意図せぬ瞬間

 に事故を起こし、2日以内に楽に死ねます。交通事故、殺人事件、転落事故

 …どれが良いですか?」

「…交通事故で」

 気付けば、スルスルと決まっていく私の死にかた。でも、怖くはなかった。

 むしろ…。

「では、『らくらく事故死コース』の『交通事故プラン』ですね。心得まし

 た。では2日以内に貴方様はあちら側へ逝けるので、お楽しみに」

 すべてのセッティングが終わったあと、満足したくらいだった。


♢♢♢

 そして、これは2日後のニュースである。

『続いて交通事故です。今日午後1時ごろ、信号無視の車に市内に住む女性・

 琴野真央さん(21)が撥ねられ、死亡するという事故が起こりました。

 歩行者のみなさんも十分に注意し、ドライバーのみなさんは安全運転

 を心がけるようにしてください。以上、交通事故でした 』


 逝きかた相談所。

 それは、貴方様の死にかたをセッティングする相談所である。

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