「はぁ………」
私・琴野真央(21)は気弱な性格だ。学生時代は1軍女子におどおどし続け
て、社会人になって就職してからも上司の機嫌を伺ってばっかり。自分の事
だから直せよって話なんだけど、どうしても直せない。
会社からの帰り道、駅のホーム。都会は自殺防止のために壁?が付いてるみ
たいだけど、ここは田舎だからそんなものはない。
………落ちようと思えば、落ちることができる。
「…死んじゃおうかな」
そう、呟いたときだった。
『いらっしゃい』
声とともに、私の前に現れたのは……。
「…ここ、どこよ?」
すっとんきょうな声が出た。森の中…?目の前には白い壁のきれいな建物が
ある。なにこれ……。
『逝きかた相談所』
そこには、そんな立て札があった。
「逝きかたって……それってつまり、死にかたってこと?」
今は帰るしかないんだし、ちょっと寄り道してもいいかも。
そんな軽い気持ちで、相談所の扉を開けた。
♢♢♢
「琴野真央様。当相談所にお越しいただき、誠にありがとうございます」
「…え?」
そこには、ニコニコと愛想のいい数人の大人たちがいた。いや、私も大人
なんだけど、この人たちには、私にはない……なんというか、笑顔の威圧感
があった。
「では、貴方様のご相談は私が」
進み出たのは、怖いくらい笑顔の男性。三十代半ばかな…と、呑気なことを
考えていた。
あれよあれよと男性と向かい合わせのテーブルに座らされ、何かが始まる。
「死にたいと思っていますね」
「……っ!」
息を呑む。なんでそのことを…いや、それよりさっき、私の名前言って……。
頭の中がはてなマークで埋め尽くされる。その時、男性が2枚の紙を差し
出した。
「当館のプランは主に2つ。まずこちら、『らくらく事故死コース』、そして
こちらの『確実自殺コース』。我々は貴方様の要望に応え、最も素晴
らしい逝きかたをセッティングします」
「そんなのって……」
そんなのあるわけない。そんなこと勧める相談所があるわけない…そう思い
つつも、真央の心は紙の中に引き込まれていった。
「……私、『らくらく事故死コース』がいいです」
「左様ですか。でしたら、いくつかあります。事故死コースは意図せぬ瞬間
に事故を起こし、2日以内に楽に死ねます。交通事故、殺人事件、転落事故
…どれが良いですか?」
「…交通事故で」
気付けば、スルスルと決まっていく私の死にかた。でも、怖くはなかった。
むしろ…。
「では、『らくらく事故死コース』の『交通事故プラン』ですね。心得まし
た。では2日以内に貴方様はあちら側へ逝けるので、お楽しみに」
すべてのセッティングが終わったあと、満足したくらいだった。
♢♢♢
そして、これは2日後のニュースである。
『続いて交通事故です。今日午後1時ごろ、信号無視の車に市内に住む女性・
琴野真央さん(21)が撥ねられ、死亡するという事故が起こりました。
歩行者のみなさんも十分に注意し、ドライバーのみなさんは安全運転
を心がけるようにしてください。以上、交通事故でした 』
逝きかた相談所。
それは、貴方様の死にかたをセッティングする相談所である。
コメント
2件
やっぱり書き方上手いて……スゲ………(しょうもないのしか書いてない人←)
すご...続きめっちゃ気になりすぎて寝れん(?)