side目黒
阿部ちゃんはあんなに泣きじゃくっていたせいか、力がないらしい。
走ったはいいものの、いつもよりもずっと遅い。
今の阿部ちゃんに追いつくのは俺にとっては容易いことだった。
すぐに阿部ちゃんに追いつき、腕を掴んだ。
「阿部ちゃんッ」
「離してッ!!」
俺の手を振り払おうと腕を振るが、そんなもので俺の手はビクともしない。
「離してよ…!」
「阿部!目黒!」
そこへ、ふっかさんが来た。
どうやら、追いかけて来たらしい。
「阿部………ごめん!!」
勢いよく、頭を下げる。
「……」
阿部ちゃんは何も言わない。
「俺が悪かった。」
「ごめんで済むことじゃないってことは分かってる。」
「でも……阿部に嫌な思いさせた。」
「本当に、ごめん。」
ゆっくり、ゆっくり、自分の言葉を確かめるように言葉を紡いでいく。
「……いいよ」
「俺も、ちょっと頭に血が上っちゃった」
阿部ちゃんは微笑む。
でも、その微笑みは悲しそうに見えた。
side阿部
俺は、深澤に酷いことをしてしまった。
あんなに怒って、深澤は、凄く傷ついたような顔をしていた。
なんで、俺は人を傷つけることしか出来ないんだろう。
もう、こんな俺、この世にいない方が__
「高校生がこんな時間に何してんの〜?」
ゆったりとした声が後ろから届く。
みんなで後ろを振り向くとそこには
「そんなことしてたら先生の責任だって言われちゃうんだけど。」
「まあ、俺は養護教諭だから関係ないんだけどね笑」
「だてさん……」
保健室の主、宮舘涼太先生だった。
「ほら、早く帰らないと親とか心配するんじゃない?」
“親”という言葉に少し体が強ばる。
「特に深澤は妹さんいるでしょ?」
「いるけど……」
「早く帰ってあげなよ。」
「可愛い妹さんでしょ?」
「……分かったよ」
とは言うものの、深澤は動こうとしない。
「ほら、目黒も阿部も。」
「一人暮らしだからと言って、遅く帰っていいわけじゃないんだよ?」
「早く寝ないと、明日の学校に遅刻するよ?」
ここはどうやら、従うしか無さそうだ。
「分かりました。ほら、目黒、深澤。帰るよ」
俺が声をかける。
「うん……」
「分かった……」
2人は着いてくる。
「じゃあ、また学校でね。」
宮舘先生と別れ、3人で歩く。
その間、何も会話は無かった。
俺らの背後には、全て吸い込んでいきそうな、紺色の夜空が広がっていた。
コメント
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続き楽しみにしてます
涙が止まらない
フォロー失礼します🙇♀️🙏 お話最高です!!!!続き楽しみに待ってます♡