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――俺は自由だ!



“フリージングアメージング即ち解放――解放解放解放かいかいかいかいかいほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほホォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォウ!!”




“ムテキ!”



“サイキョウ!”



“エタニティ!”



“ギャハハハハハハ!!”















「いい加減にしなさい!」



乾いた音と衝撃によって、突如引き戻される。打たれたのだ頬を。



俺のキリストの頬を、一度ならず二度迄も――



“パァ-ン”



「目を覚ましなさいジョン!」



「ぶぷっ……」



返す刀で再平手だ。



思わぬ反撃に少しばかり戸惑ってしまったが、慌てる事はない。



既に戒めは解かれたのだ。どうにでもなる――



「あっ……あれ?」



しかしおかしい。自由に動く筈の手足が、思うように動かせない。



そうか、そうだったのか。何日も固定された状態だったので、筋肉が収縮してしまったのか。



長々正座すると、足が痺れてしまったあれと同じだ。



「フハハハハハ!」



なら心配は無い。時期に元に戻る。



勝利の笑みは止まらない――



「ヒヒヒヒヒ――っぶ!?」



鈍い音と共に顔面を圧迫。また殴りやがった。しかし慌てず騒がず、王者の風格と余裕を――



「ククッ……殴りたくば殴るがよい。だが俺はっ――ぉぶぶぷっ!」



再び殴られる。おかしい……かなり痛いし重い。奴にこれ程の力は無かった筈だが?



よく見ると女は素手ではなかった。あれは――



「全く……こんなモノ使いたくなかったけれど、仕方無いわね」



女が手にしている物――と言うより、何時の間にそんな“物”を!?



それは通称“ブラックジャック”なる、砂が敷き詰められた黒い特殊警棒。



威力はそのままに、打痕を表面に残さぬ凶悪な武具を、奴は片手でしなるように、もう片手を叩きながら呟いていた。



「これもジョンの為、私の為幸せの為――」



明らかに“自分だけ”の為に。



「苦しいかもしれないけど……我慢してね?」



おい何をする? 笑いながら手にしている“ソレ”で、何をするつもりだ?



女の意味深な囁きに、俺の嫌な予感は既に無い。これは単なる余裕の疑問。



ブラックジャックの用度は、暴徒鎮圧や自白用である。軽量、破壊力、リーズナブルと三点セットなので、非力な女でも使い易く、正に奴程度にはうってつけの武器と云えよう。



しかし俺には通用しない。



何故か?



それは俺自身の耐久性が、ブラックジャックのそれを上回っているからだ。



「無駄な事だ。俺を倒したいのなら……“テラトンハンマー”でも持ってこんかい!」



“テラトンハンマー”



メガトンハンマーや、ギガトンハンマーをも上回る、ハンマー系最強の武器。



そう、神に対抗するなら、それに近い伝説の武具が必要なのは、どのロールプレイングでも一緒だ。これはクソゲーだがな。



ブラックジャック等と、序盤の“こん棒”クラスの武器で神に挑むのはナンセンス。只の自殺行為。



これでお分かり頂けただろう。いくら俺以外が全て馬鹿でも。



神はーー俺は“絶対”だという事に。



「アァーッハハハハハハ!」



勝利を確信した笑いは、また格別というもの。



俺のナチュラルな自然体と、それでいて重厚な威圧感に、女も戸惑い立ち竦むしかない。



それも当然。打つ手無しなのだ。



「ウィヒヒヒヒ――っひぶ!?」



しかし突然だった。俺の勝利の余韻が遮断されたのは――



「ぶぶぼぉっ……」



息が出来ない。鼻が熱い。



滴り落ちるこれはーー血だ。



俺の高貴なる血が、何故か流出していたのだ鼻孔から。



――息が詰まる! 折れてる、完璧に……俺の芸術の鼻が!



「ぐぶぅぅ……お、おのれぇ!」



これは許される事ではない。俺は奴をきつく睨む。



見ると奴はブラックジャックを振り抜いた後。最初っから俺の鼻を潰すつもりで、狙って打ったのだ。



沸き上がる殺意。最早止められない。



“殺す――”



「殺してやる殺してやる殺してやるぅぁぁ!!」



それは造作もない事だ。筋肉の痺れさえ取れさえすれば。



「……この口が悪いのね?」



「――あがぁ!?」



叫び続ける俺の声が、不意に塞がれた。



女は俺の口に手を伸ばし、その咥内の舌を掴んでいたのだ。



唾液が漏れる。



「悪いお口は塞がなきゃ……」



ぶつぶつと焦点の合っていない瞳で、何かを呟きながら、片手のホッチキスを舌に挟んできた。



まさか!? と思う間も無く、舌全体に圧迫が伝わる。



「あがががががぁっ!!」



無理矢理閉じようとしているのだ。



「あら? 中々硬くて……閉じないわね!」



圧迫と共に針が舌を突き破ろうとするが、この堆積と要領で閉じきる筈がない。



そんな馬鹿でも分かる原理を、無理矢理こいつは力で実行しようとしていた。



我慢の限界を超えた俺に、ある妙案が生まれる。



「――ぃつ!」



女は不意に咥内から手を退く。



そう、俺は力の限り口を閉じたのだ。



奴の指を噛み落とす迄には到らなかったが、確かに俺の鋼鉄をも噛み切る歯は、その指に傷痕を刻む事に成功し、この馬鹿げた行為を終わらせる事が出来たのた。



遂に奴に一矢報いる事が出来た。



必死に己の指を口に含む奴の姿を見て、溜飲も下がっていく。



俺は勝利の余韻に酔った。



“ゲームクリア! ボーナスステージ開始”

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