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Yuri
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舜太は最近、完全に調子がおかしかった。
原因はもちろん勇斗。
あれだけ「無理」と拒否したのに、勇斗は距離を置きながらも変わらず優しかった。
無理に触れてこない。
二人きりになろうとしない。
でも困ってたらすぐ助けてくれる。
その“いつも通り”が逆に苦しい。
(なんなんほんまに……)
嫌いになれたら楽なのに。
収録の休憩中。
舜太は自販機の前でジュースを選んでいた。
すると後ろから聞き慣れた声がする。
「またそれ飲むの?」
「っ!?」
振り返ると勇斗がいた。
反射的に逃げようとして、一歩下がる。
でもその瞬間、後ろが壁だった。
「あ…」
逃げ場がない。
勇斗は舜太の目の前まで来ると、壁に手をついた。
ドン、という小さな音。
完全に囲まれる。
「っ……!」
壁ドンだと理解した瞬間、舜太の顔が一気に熱くなる。
「は、はやちゃん!!」
「逃げるじゃん」
低い声。
近い。
「に、逃げるやろ普通!」
「なんで」
「なんでって…」
勇斗の顔がこんな近くにあるだけで心臓がおかしくなる。
目逸らしたいのに逸らせない。
勇斗はじっと舜太を見つめた。
「俺、そんな怖い?」
「怖いとかちゃうし……」
「じゃあなんでそんな拒否すんの」
その言葉に舜太は詰まる。
勇斗は苦しそうに笑った。
「俺、結構傷ついてる」
「……っ」
そんな顔されたら困る。
舜太は視線を泳がせた。
「……だって、急やったもん」
「うん」
「おれ全然そういうつもりちゃうかったし……」
「うん」
「今も、まだ分からへんし……」
勇斗は黙って聞いていた。
その距離の近さに、舜太の鼓動はどんどん速くなる。
「でも」
勇斗がぽつりと呟く。
「少しは俺のこと考えてるでしょ」
「っ……!」
図星だった。
最近ずっと勇斗のことばかり考えてしまう。
目で追ってしまうし、他のメンバーと話してるだけで変に気になる。
それが何なのかはまだ分からない。
でも前みたいに“ただのメンバー”ではいられなくなっていた。
勇斗は舜太の反応を見て、小さく笑う。
「顔に出やすい」
「うるさい……」
「かわいい」
「やめてって、」
舜太は勇斗を軽く押した。
でもびくともしない。
それどころか勇斗は少しだけ顔を近づけてくる。
「っ……!」
「ねぇ、しゅんた」
耳元に落ちる低い声。
ぞわっと背筋が震える。
「俺のこと、少しでも意識してる?」
「してない…」
「してる顔」
「してないって……」
必死に否定するのに勇斗は嬉しそうに笑う。
その顔を見て、舜太の胸が変に苦しくなった。
こんな顔させたの、自分なんだ。
そう思った瞬間。
「……はやちゃん」
「ん?」
「近い」
「わざと」
「最悪……」
勇斗はふっと笑った。
でも次の瞬間、急に真面目な顔になる。
「しゅんた」
「……なに」
「俺、待つって言ったけど」
「うん」
「期待するのは止められない」
真っ直ぐな目。
逃げたくなるくらい熱い視線。
でも今回は、前みたいにすぐ目を逸らせなかった。
勇斗はそんな舜太を見て、少しだけ目を細める。
「前より逃げなくなった」
「……っ」
舜太は悔しそうにした。
「……慣れてきただけやし」
「ふーん?」
「ほんまやって」
「じゃあ心臓なんでそんなうるさいの」
「…え」
勇斗がくすっと笑う。
「聞こえる」
「うわぁぁぁっ!」
舜太は真っ赤になって顔を覆った。
そんな姿がかわいすぎて、勇斗は思わず笑ってしまう。
——やばい。
どんどん好きになる。
拒否されても、困らせても。
少しずつ、自分を意識してくれてるのが分かるから。
すると舜太が小さく呟いた。
「……はやちゃんのせいやから」
「ん?」
「こんなんなるん、はやちゃんのせいやし……」
その言葉に、勇斗の目が優しく揺れる。
そしてそっと、舜太の頭を撫でた。
今度は、舜太はその手を振り払わなかった。
コメント
1件
うわ、3話でこの距離感…! 壁ドンからの「心臓の音聞こえる」、最高に心臓に悪いシーンでした。特に「期待するのは止められない」って台詞、真っ直ぐすぎてやばいっす。舜太くんが「慣れてきただけ」って言いながら全然慣れてないのも愛おしい。最後、頭撫でられて振り払わなかったのが、無意識の変化って感じでグッときました。2人の空気感、丁寧に描かれてますね。続きすごく気になる!